23灯 ブラックデート解禁
<TOKISDEO・RADIO>
「どうも、私、TSO宣伝部のゾン・クラヴィラです。
現在のキタマジの原作ストックは62灯だそうです。
それでは、前回のおさらいあらすじをしましょう。」
A1:会長、サンライト、カエデが合流。
ヤクの現在の居場所はメスカル帝国と知る。
サンライトが残した手紙を破り去ったその同時刻、メスカル帝国王宮では。
「よくぞ、連れてこれた。
ほめてつかわそうブラックよ。」
王座に座る女王にブラックは褒められるのが嬉しいのか照れた表情を浮かべてそっぽを向く。
「べっ、別に《月女帝》に褒められても嬉しくないんだからねっ!」
誰特なツンデレを返すブラック。
嗚咽感が喉の奥から湧き出るのを懸命に押さえる俺。
女帝さんは不快感MAXなブラックの反応を無視して俺へと目を向けていた。
「いやぁ~、カメラの灯素石越しに見るよりも百倍の美少女じゃな! どうじゃ? わらわの妹になってくれぬか?」
女帝さんは長くキメ細やかな美しい髪を手の甲でさっとはらい靡かせて決め顔混じりに要求する。
その瞳は何処までも澄んでおり、小鼻の筋はすっきりとしている。
言葉で例えるなら『絶世の美女』、女帝と呼ばれるのも頷ける。
こんな美人のお願いを断るなど紳士たる俺には到底無理だ。
まぁ、美少女という枠組みだったら断トツ完全勝利しているのは俺だがな。
しかし、大人の美しさというのも素晴らしい。
「貴女のような美女の妹になれること、誠に光栄で御座います。」
あ、言っちまった。
しかもなんかお辞儀までしちゃったよ。
どうしよう、もう後戻り出来ないんじゃね?
「よし、ブラック! 宴の準備をせい!」
ほら、宴の準備始めるんだって。
カエデ、会長、サンライトごめんな。
俺はお前らと、この喜びを分け会うことが出来ない。
仕方がないんだ、美しいものに目が眩むのは自然の摂理だもの。
「待って下さいーッ!」
「何だ? ブラック、宴が不満か?」
「のんのんのんっ! 寧ろ私は大歓迎さ! その前に一つ頼み事良いですか?」
「ふっ、ここまでわらわに貢献したらお主の頼みなんて断れるわけなかろう?
良いぞ、申してみよ。」
「ヤクちゃんと今日だけ1日デートさせてくんね?」
はぁ? 何だこいつ?
おっ、おっ、おおお俺とデート?
こいつ俺が元男だと分かって言って……!?
あ、こいつらこの世界、鍵界の『住民』だ。
……詰んだ。
マップウィンドウを開いて分かったことがある。
それは女帝さんはplayerではなくこの世界の住民ということだ。
ブラックがマップウィンドウの表示に映らないのが不思議でならないがこれは運営のバグだろう。
よって、ブラックもplayerではないのだろう。
早く修正して欲しいものだ。
って、そんなこと思っている場合かよ!
俺は背筋に走る悪寒に絶望してOrzのポーズで床を眺めるしかなかった。
これは決して帰宅部技の《バク宙土下座》ではない。
耳からはブラックと女帝さんが笑いながらデートの計画を話し合っていた。
あぁ、早く仲間の所に戻りたいよ




