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キタマジ!?~帰宅部LV99が異世界から帰宅するってマジ!?~  作者: たかしクランベリー/TOKISDEO公式
総集編
37/168

キタマジ外灯【一周年突破記念HALLOWEEN episode2018】


河義貝かぎかい小学校、太陽寺光転入。

続けてとある男子生徒が転校する

事になった後のお話。


蝉の叫びはいつしか消え、夏は終わりを見せる。

秋の始まりを漂わせる気温の変化が

目立つ十月下旬。


夏と秋の中間に思い馳せる美少女が一人、

夕陽に染まる街を窓から覗く。


ここは女子力特訓部秘密基地。

彼女、岸守矢夢は父のコネで手に入れた別荘で

抹茶ラテを満喫中だ。


「早く帰りたいなぁ……」


「ちょっ! 岸守部長貴女仮にも部長でしょう!?

何言いだしてんのよ!」


「だって早くやっきゅん愛でたいのよぉ。」


「はいコレ。」


部員は部長にある写真を渡す。


「ぅぅぅうぉおおおお! 私復活ぅうう!」


「たまに女子力より男子力が勝りますね部長。」


ーーピーンポーン!


「おや、こんな時間に誰でしょうか?」


「さっき帰った部員ちゃんが忘れ物取りに

きたんじゃないかな。」


「ありよりのありですね。

もしくは一日早めのトリックオアトリート

とかだったりして! では、行ってきますね。」


「待ちなさい美琴!」


「はぁ、次は何ですか部長?」


「私が行く。」


「え、部長が自らですか? 珍しいですね。」


「こらこら、私がいつも動いてないみたいな

言い方やめなさい。だから貴女は

男子に女子力が足りないって言われるのよ!」


「それとこれは別では……」


「もう行く!」


ーースタタタッ! ガチャ!


彼女は、扉を開けた。

目の前に居たのは、インターホンを鳴らしたのは

部員とは全くの無関係な人間であった。

女子小学生だ。


「……(JCが何故こんな所に?

岸守矢夢考えなさい。ここに来るという事は

それほどまでに追い詰められてるということ。

不審者のロリコンに追われてるのね!

可哀想に!)」


「……お姉ちゃん?」


矢夢は少女の双肩を優しく掴む。


「大丈夫よ、私がどうにかしてみせる。」


「本当か! 助かるぜ!」


助かるぜ? この子今確かにそう言ったわよね?


「お名前は?」


「俺の名は太陽寺光! 宜しくな!」


光ってどっち男の子、女の子!?

でもこの服装からして女の子よね!

待って、不審者に女装させられたショタって

可能性も!


仕方ない、使うしかないわね。


「あー、下に5円玉落ちてるぅわァア!」


「何処だ!」


ーースッ


太陽寺が5円玉に気をそらし捜索に専念して

生み出した隙5秒。


岸守矢夢は、気付かれない様に

スーパースローカメラでしか撮ることの出来ない

速さで触れた。


ーー確認完了。

困ったわね、美琴と同じ男気タイプ全振り女子。

育成にはかなりの期間がかかりそうね。

ううん、その方が『やり甲斐』がある!


でもまずは……


「お嬢ちゃんはどういった目的でここに

来たのかお姉ちゃんに聞かせてくれないかな。」


「ヤクに言われたんだ。皆に好かれる様な

人になりたいならここに来いって。」


「ヤクって岸守矢九くん?」


「あぁ。」


ムムム。やっきゅんの頼みとあれば尚更

コレを断る訳にはいかないわね。

寧ろ、この子をやっきゅんの理想女子に

仕上げるのも悪くないわ。


この年で、この容姿なんだから将来どう転んだと

しても超の付く美少女になるのは間違いない。


彼女の女子力を私並みに極めたら越される

可能性大な逸材よ。逃してたまるものですか!

……確かやっきゅんの理想女子は金髪碧眼で

ゆるふわ天使系女子。


目と髪色は後でどうにかなるとしても。

ーーなんてことでしょう!?

こんなの人生初最高難度の任務じゃないの!


「何を迷ってるんですか部長。

決めた事は曲げない。それがこの部の

流儀と言ってたじゃない。」


「そうね! もうやるしかないわ!

任せて光ちゃん! また明日の夕方ここに

来てね!」


「は……はぁ。」


光ちゃんは帰宅した。

私は疲れたのでリビングのソファーに

速攻で向かい腰を下ろした。


「ふぃーー」


「ふぃーじゃないですよ部長。

一件落着みたいな表情しても何一つ

解決してません。」


「辛辣だなぁ〜、ちょっとくらい

ゆっくりさせてよねー。」


「事実を述べた迄です。」


「うーん、私も任せてと言った以上

作戦を練らなくちゃいけないのは

わかるのだけどね。

いざ急にこうゆう場面にでくわすと

割と動きが鈍くなるクセがあるんよー。」


「私の時はスピーディーに対応してた

じゃあないですか。」


「『準備』があったからね。」


「成る程、つまり今の部長は『準備不足』と。」


「その通り。」


「もう夜も近いし帰りますね。」


「送ってあげるよ。」


「助かります部長。」


***


岸守家の家、矢夢の部屋。


「うーん。」


彼女は光をどう救うべきか考えていた。

頬杖をついてカレンダーを眺めても答えが

出るはずもなく。


ただ一刻一刻と時は刻まれていく。


「……もうすぐ十月も終わりね。

あ、そういやハロウィン近いじゃない!

ーーこれだ!」


矢夢は咄嗟に携帯を開き、ポチポチと素早く

電話番号を入力した。


ーーピリリリリリッ!


「もしもーし!!」


「部長何ですかこんな夜遅くに……

やたらテンション高いし。」


矢夢が電話をかけたのは美琴。

彼女は眠たそうな声色が電話越しに聞こえるが

矢夢は御構い無しであった。


「いい事思い付いちゃったの聞いて聞いて

ーーかくかくしかじか。」


***


……。


…………。


翌日の夕方。

女子力特訓部秘密基地。


ーーピーンポーン。


ーーカチャ


翌日出迎えたのは部長では無く美琴だ。


「え? 昨日の女は?」


「すいませんね今回は私で。

まぁあがってください、居ますから。」


「わかった。」


矢夢はリビング中央ソファーで王様気取りな

座りで待機していた。


「どうゆうこった。」


「美琴、去りなさい。」


「……了解。」


リビングは部長と光二人きりになる。


「さぁ、何故私が彼女をここから

退場させたか分かるかな光ちゃん。」


「邪魔だからじゃねーの。」


「なんとなく。」


「……。」


「とまぁ、冗談はさておき。

本題に入ろっかな。

ーー光ちゃん、やっきゅんの事好きでしょ?」


「バッ……そんなワケねぇだろぉ!」


あらあら〜、口元隠して頬赤らめちゃってぇ。

恋する乙女バレバレじゃないのー。


「ねぇ? 何でここに来たの。」


「それなら昨日言ったろ。」


「私はね。

『それだけ』が理由だとは思わないの。

だって好きでもない奴に命令されてここに

しょうがなく来る表情ではなかったから。」


「へ?」


「まるで『ヤクのお姉さん』だから

ヤクの好みを知っているだろう。

ヤクについて教えてくれる。

くっつけてくれるよう全力で協力してくれる。

そんな期待に満ちた顔。」


「……。」


「その期待には応えられるわ。

だけど一つ問題があるの、何だと思う?」


「知らねーよ。」


「光ちゃんが私の『指導』に耐えれるかどうか。 私の指導に耐えられず退部した訓練生女子は

山程居るわ。

今の自分のままでいいって身勝手な諦めに

縋って、言い訳して逃げた人間がね。」


「は? そんなの楽勝に決まってんだろ。」


「さぁどうでしょうねぇ?」


「………。」


「明日はみんな大好きハロウィン。

そこで光ちゃんに私から訓練生になる為の

試験を与えるわ。私が納得する

やっきゅん愛をそれで証明できたら合格。」


「具体的には何すんだよ。」


「コレを着てヤク君に『トリックオアトリート

お菓子をあげてキスしないと

イタズラ(意味深)しちゃうぞ♡』って

一字一句間違えないで可愛く言いなさい。

録音してあげるから。」


矢夢が見せた服はハロウィンをイメージした

魔法少女服。これを着て外を歩くだけでも

かなりの羞恥心に襲われるだろうデザインだ。


それプラスあのセリフ。


「あぁ分かった!

やりゃあいんだろやりゃあ!」


「その男気嫌いではないけど。

合格後はじっくり消してあ・げ・る。」


「なんか言ったか?」


「ううん、それじゃあ頑張ってね。

タイムリミットはそうねー、今から30分以内。

ハイスタートぉ。」


「って! 今からすぐ着替えて走って

行けって事かよ!」


ーーバッ!


早い、一瞬で衣装を取った。


ーースタタタッ、ばぁんっ。


「あらー、青春ねー。」


「追わなくて良いんですか部長。」


「美琴あんたいつから?」


「……お答えできません。」


「後で『お話し』しようね♡」


「勘弁して下さい。」


***


……。


…………。


タイムリミットは迫る!

着替えを太陽寺光は猛ダッシュで走る。

目的地到着には17分を使った。


それは、矢夢の予定よりも遥かに早かった。

しかし! 矢夢の想定内でもあった!


岸守家入口扉前。

光は深呼吸で心を落ち着かせる。

そうでもしないとやってられないのだ。


扉付近、光の視覚外で矢夢は

録音機片手に息を潜めている。


ーーピーンポーン。


(遂に意を決したわね光ちゃん。)


ーーガチャっ……


扉は開かれた。


「ーートリックオアトリート

お菓子をあげてキスしないと

イタズラ(意味深)しちゃうぞ♡」


「……ふむ。」


返ってくる声はヤクの声ではなく大人の男の声。

大人はしゃがんで光の頭を撫でた。


「誰のイタズラかしらんが間に受けちゃいかんぞ

お嬢ちゃん。ワシがお嬢ちゃんにキスしたら

お巡りさんに捕まってしまう。

キスの相手はもうちょっと時間かけてから

選ぶんじゃぞ。後悔せんようにな。」


「それにこの家にお菓子は置いとらん。」


「へ?」


「正確にはバカ息子が完食してもうた。

だから帰りなさい。」


「待てクソジジイ!」


「「ーー!?」」


二人の注意を引いたのは幼い男の子。

光の目当ての男の子であり、バカ息子。


「ヤク、今どういう状況かわかっとるのか!」


「分かってるさ。お菓子がねぇなら

作ればいい! だろジジイ!」


「こんな見ず知らずの子に渡すモノなぞ

ないわバカ息子ォ!」


「俺の友達だ! 俺は意地でも渡しテェ!」


「ほぅ、ヤク。今日は随分と威勢がいい

じゃねぇか。良いだろうじゃが……」


「ん?」


「その子と一緒に作れ!」


「「ーーぇぇえええ!!」」


「なぁにを驚いとるのじゃ。」


「だだだだって!」


「不満かヤク?」


「いいえお父様、お言葉に甘えさせて

頂きます。」


「ふっ、ワシに似て手のひら返しが相変わらず

うまいのォ。これも青春という奴か。」


***


翌日。


「ーー合格よ。よろしくね太陽寺訓練生。

あなたがjkになるまでにヤク好みの

完璧美少女に仕上げてあげる。

死にものぐるいでついてきなさい。」


「……ぅうぅおっしゃぁぁあ!」



この時、太陽寺光はまだ知らない。

この部に所属した後の苦しさを。

ヤクへの本当の愛が試される事さえも。


ーーキタマジ外伝

【1周年突破記念HALLOWEEN episode2018】

《完》




河義貝かぎかい小学校、太陽寺光転入。

続けてとある男子生徒が転校する

事になった後のお話。


蝉の叫びはいつしか消え、夏は終わりを見せる。

秋の始まりを漂わせる気温の変化が

目立つ十月下旬。


夏と秋の中間に思い馳せる美少女が一人、

夕陽に染まる街を窓から覗く。


ここは女子力特訓部秘密基地。

彼女、岸守矢夢は父のコネで手に入れた別荘で

抹茶ラテを満喫中だ。


「早く帰りたいなぁ……」


「ちょっ! 岸守部長貴女仮にも部長でしょう!?

何言いだしてんのよ!」


「だって早くやっきゅん愛でたいのよぉ。」


「はいコレ。」


部員は部長にある写真を渡す。


「ぅぅぅうぉおおおお! 私復活ぅうう!」


「たまに女子力より男子力が勝りますね部長。」


ーーピーンポーン!


「おや、こんな時間に誰でしょうか?」


「さっき帰った部員ちゃんが忘れ物取りに

きたんじゃないかな。」


「ありよりのありですね。

もしくは一日早めのトリックオアトリート

とかだったりして! では、行ってきますね。」


「待ちなさい美琴!」


「はぁ、次は何ですか部長?」


「私が行く。」


「え、部長が自らですか? 珍しいですね。」


「こらこら、私がいつも動いてないみたいな

言い方やめなさい。だから貴女は

男子に女子力が足りないって言われるのよ!」


「それとこれは別では……」


「もう行く!」


ーースタタタッ! ガチャ!


彼女は、扉を開けた。

目の前に居たのは、インターホンを鳴らしたのは

部員とは全くの無関係な人間であった。

女子小学生だ。


「……(JCが何故こんな所に?

岸守矢夢考えなさい。ここに来るという事は

それほどまでに追い詰められてるということ。

不審者のロリコンに追われてるのね!

可哀想に!)」


「……お姉ちゃん?」


矢夢は少女の双肩を優しく掴む。


「大丈夫よ、私がどうにかしてみせる。」


「本当か! 助かるぜ!」


助かるぜ? この子今確かにそう言ったわよね?


「お名前は?」


「俺の名は太陽寺光! 宜しくな!」


光ってどっち男の子、女の子!?

でもこの服装からして女の子よね!

待って、不審者に女装させられたショタって

可能性も!


仕方ない、使うしかないわね。


「あー、下に5円玉落ちてるぅわァア!」


「何処だ!」


ーースッ


太陽寺が5円玉に気をそらし捜索に専念して

生み出した隙5秒。


岸守矢夢は、気付かれない様に

スーパースローカメラでしか撮ることの出来ない

速さで触れた。


ーー確認完了。

困ったわね、美琴と同じ男気タイプ全振り女子。

育成にはかなりの期間がかかりそうね。

ううん、その方が『やり甲斐』がある!


でもまずは……


「お嬢ちゃんはどういった目的でここに

来たのかお姉ちゃんに聞かせてくれないかな。」


「ヤクに言われたんだ。皆に好かれる様な

人になりたいならここに来いって。」


「ヤクって岸守矢九くん?」


「あぁ。」


ムムム。やっきゅんの頼みとあれば尚更

コレを断る訳にはいかないわね。

寧ろ、この子をやっきゅんの理想女子に

仕上げるのも悪くないわ。


この年で、この容姿なんだから将来どう転んだと

しても超の付く美少女になるのは間違いない。


彼女の女子力を私並みに極めたら越される

可能性大な逸材よ。逃してたまるものですか!

……確かやっきゅんの理想女子は金髪碧眼で

ゆるふわ天使系女子。


目と髪色は後でどうにかなるとしても。

ーーなんてことでしょう!?

こんなの人生初最高難度の任務じゃないの!


「何を迷ってるんですか部長。

決めた事は曲げない。それがこの部の

流儀と言ってたじゃない。」


「そうね! もうやるしかないわ!

任せて光ちゃん! また明日の夕方ここに

来てね!」


「は……はぁ。」


光ちゃんは帰宅した。

私は疲れたのでリビングのソファーに

速攻で向かい腰を下ろした。


「ふぃーー」


「ふぃーじゃないですよ部長。

一件落着みたいな表情しても何一つ

解決してません。」


「辛辣だなぁ〜、ちょっとくらい

ゆっくりさせてよねー。」


「事実を述べた迄です。」


「うーん、私も任せてと言った以上

作戦を練らなくちゃいけないのは

わかるのだけどね。

いざ急にこうゆう場面にでくわすと

割と動きが鈍くなるクセがあるんよー。」


「私の時はスピーディーに対応してた

じゃあないですか。」


「『準備』があったからね。」


「成る程、つまり今の部長は『準備不足』と。」


「その通り。」


「もう夜も近いし帰りますね。」


「送ってあげるよ。」


「助かります部長。」


***


岸守家の家、矢夢の部屋。


「うーん。」


彼女は光をどう救うべきか考えていた。

頬杖をついてカレンダーを眺めても答えが

出るはずもなく。


ただ一刻一刻と時は刻まれていく。


「……もうすぐ十月も終わりね。

あ、そういやハロウィン近いじゃない!

ーーこれだ!」


矢夢は咄嗟に携帯を開き、ポチポチと素早く

電話番号を入力した。


ーーピリリリリリッ!


「もしもーし!!」


「部長何ですかこんな夜遅くに……

やたらテンション高いし。」


矢夢が電話をかけたのは美琴。

彼女は眠たそうな声色が電話越しに聞こえるが

矢夢は御構い無しであった。


「いい事思い付いちゃったの聞いて聞いて

ーーかくかくしかじか。」


***


……。


…………。


翌日の夕方。

女子力特訓部秘密基地。


ーーピーンポーン。


ーーカチャ


翌日出迎えたのは部長では無く美琴だ。


「え? 昨日の女は?」


「すいませんね今回は私で。

まぁあがってください、居ますから。」


「わかった。」


矢夢はリビング中央ソファーで王様気取りな

座りで待機していた。


「どうゆうこった。」


「美琴、去りなさい。」


「……了解。」


リビングは部長と光二人きりになる。


「さぁ、何故私が彼女をここから

退場させたか分かるかな光ちゃん。」


「邪魔だからじゃねーの。」


「なんとなく。」


「……。」


「とまぁ、冗談はさておき。

本題に入ろっかな。

ーー光ちゃん、やっきゅんの事好きでしょ?」


「バッ……そんなワケねぇだろぉ!」


あらあら〜、口元隠して頬赤らめちゃってぇ。

恋する乙女バレバレじゃないのー。


「ねぇ? 何でここに来たの。」


「それなら昨日言ったろ。」


「私はね。

『それだけ』が理由だとは思わないの。

だって好きでもない奴に命令されてここに

しょうがなく来る表情ではなかったから。」


「へ?」


「まるで『ヤクのお姉さん』だから

ヤクの好みを知っているだろう。

ヤクについて教えてくれる。

くっつけてくれるよう全力で協力してくれる。

そんな期待に満ちた顔。」


「……。」


「その期待には応えられるわ。

だけど一つ問題があるの、何だと思う?」


「知らねーよ。」


「光ちゃんが私の『指導』に耐えれるかどうか。 私の指導に耐えられず退部した訓練生女子は

山程居るわ。

今の自分のままでいいって身勝手な諦めに

縋って、言い訳して逃げた人間がね。」


「は? そんなの楽勝に決まってんだろ。」


「さぁどうでしょうねぇ?」


「………。」


「明日はみんな大好きハロウィン。

そこで光ちゃんに私から訓練生になる為の

試験を与えるわ。私が納得する

やっきゅん愛をそれで証明できたら合格。」


「具体的には何すんだよ。」


「コレを着てヤク君に『トリックオアトリート

お菓子をあげてキスしないと

イタズラ(意味深)しちゃうぞ♡』って

一字一句間違えないで可愛く言いなさい。

録音してあげるから。」


矢夢が見せた服はハロウィンをイメージした

魔法少女服。これを着て外を歩くだけでも

かなりの羞恥心に襲われるだろうデザインだ。


それプラスあのセリフ。


「あぁ分かった!

やりゃあいんだろやりゃあ!」


「その男気嫌いではないけど。

合格後はじっくり消してあ・げ・る。」


「なんか言ったか?」


「ううん、それじゃあ頑張ってね。

タイムリミットはそうねー、今から30分以内。

ハイスタートぉ。」


「って! 今からすぐ着替えて走って

行けって事かよ!」


ーーバッ!


早い、一瞬で衣装を取った。


ーースタタタッ、ばぁんっ。


「あらー、青春ねー。」


「追わなくて良いんですか部長。」


「美琴あんたいつから?」


「……お答えできません。」


「後で『お話し』しようね♡」


「勘弁して下さい。」


***


……。


…………。


タイムリミットは迫る!

着替えを太陽寺光は猛ダッシュで走る。

目的地到着には17分を使った。


それは、矢夢の予定よりも遥かに早かった。

しかし! 矢夢の想定内でもあった!


岸守家入口扉前。

光は深呼吸で心を落ち着かせる。

そうでもしないとやってられないのだ。


扉付近、光の視覚外で矢夢は

録音機片手に息を潜めている。


ーーピーンポーン。


(遂に意を決したわね光ちゃん。)


ーーガチャっ……


扉は開かれた。


「ーートリックオアトリート

お菓子をあげてキスしないと

イタズラ(意味深)しちゃうぞ♡」


「……ふむ。」


返ってくる声はヤクの声ではなく大人の男の声。

大人はしゃがんで光の頭を撫でた。


「誰のイタズラかしらんが間に受けちゃいかんぞ

お嬢ちゃん。ワシがお嬢ちゃんにキスしたら

お巡りさんに捕まってしまう。

キスの相手はもうちょっと時間かけてから

選ぶんじゃぞ。後悔せんようにな。」


「それにこの家にお菓子は置いとらん。」


「へ?」


「正確にはバカ息子が完食してもうた。

だから帰りなさい。」


「待てクソジジイ!」


「「ーー!?」」


二人の注意を引いたのは幼い男の子。

光の目当ての男の子であり、バカ息子。


「ヤク、今どういう状況かわかっとるのか!」


「分かってるさ。お菓子がねぇなら

作ればいい! だろジジイ!」


「こんな見ず知らずの子に渡すモノなぞ

ないわバカ息子ォ!」


「俺の友達だ! 俺は意地でも渡しテェ!」


「ほぅ、ヤク。今日は随分と威勢がいい

じゃねぇか。良いだろうじゃが……」


「ん?」


「その子と一緒に作れ!」


「「ーーぇぇえええ!!」」


「なぁにを驚いとるのじゃ。」


「だだだだって!」


「不満かヤク?」


「いいえお父様、お言葉に甘えさせて

頂きます。」


「ふっ、ワシに似て手のひら返しが相変わらず

うまいのォ。これも青春という奴か。」


***


翌日。


「ーー合格よ。よろしくね太陽寺訓練生。

あなたがjkになるまでにヤク好みの

完璧美少女に仕上げてあげる。

死にものぐるいでついてきなさい。」


「……ぅうぅおっしゃぁぁあ!」



この時、太陽寺光はまだ知らない。

この部に所属した後の苦しさを。

ヤクへの本当の愛が試される事さえも。


ーーキタマジ外伝

【1周年突破記念HALLOWEEN episode2018】

《完》



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