15灯 インキュバス
「まて、話をしよう。」
ナイス会長。
ここで、あの店主を説得してやれ。
「話ですか。
その前にやるべきことがあるのでは?」
話を持ちかけてくる会長を挑発する店主。
それの意味を知るのは数秒も要らなかった。
サンライトは一瞬で俺との間合いを詰めて壁ドンする。
その勢いで仮面は外れ、イケメン過ぎる顔が露に。
って、ん? 待てよ、サンライトってこんなにかっこたっけ?
なんだこれ?
心臓がすげぇバクバクして、自分でも身体中が火照ってるのが分かる。
特にお腹の奥? の方が疼いて……
……ってちょっ! 俺はノンケだッ!
うん! これは気のせい。
そう思考した瞬間。
あの『哲学者』の言葉が脳裏をよぎる。
ーー【男を公園に誘うの♂
何? 野獣なの? 先輩なの?】ーー
くっ!
俺は、断じて認めんぞ!
女体化モノの薄い本にでるTS娘じゃねぇんだよ。
落ち着け俺ー!
ヤクは自分の心を辛うじてキープしているが身体は素直に反応する。
ひきつった笑顔で目はぐるぐる状態。
乙女のような赤面はまさに恋愛漫画さながらの絵になっている。
と、そんなヤクの葛藤をよそにカエデは勝手に盛り上がっている。
ヤクの意外で面白い乙女な表情に。
カエデはあまりのギャップ萌え思わず応援の声をあげてしまう。
「いいぞー、サンライト。
もっとやrーーいだだだ!」
「かーえーでー?」
「すいません会長、今すぐあの二人止めますんでグリグリすんのやめて!」
会長のグリグリから解放されたカエデがサンライトを止めようと動いた矢先、店主による止めが入る。
「そこの幼女ちゃん、無駄だよ。
彼はインキュバス。
酔ってるせいか、インキュバスの力が全て聖獣のお嬢ちゃんに向いている。」
「そうなのかー(にやり)」
「でっ、でも!」
会長は反論しようとするが、何も言い出せずに押し黙ることしか出来ない。
オーナーの言っていることは本当なのだから。
「竜脈黒線拳」
ーーシュワッ
黒く蛇のうねりを見せる複数の『線』がカエデから放たれてサンライトの頭部へ迫り。
ーードバァン
見事命中、ヤクから離れるようにサンライトは吹き飛ぶ。
「会長、サンライトはこうやって起こすのが得策ですよね?」
「よくやったカエデ!」
危なかった。
ヤクとサンライトはキス寸前で間一髪カエデの攻撃によって阻止されたのだ。
***
カエデの技がヒットしてある程度時間がたったのでサンライトは酔いから醒め正気を取り戻した。
そのおかげでやっとの事、あの話題に戻る事に成功する。
会長が深々と頭を下げるのを合図に。
「すいません、今の拙者らはそれほどの金を持ち合わせておらぬ!
どうか、他の方法でーー」
「分かりました、今回は『これ』で許しましょう。」




