10灯 サンライトの正体
~某ファミレスにて~
俺は広々とした席に着いて珈琲を啜る。
やはり珈琲は落ち着く。
特に珈琲フレッシュ2個とガムシロップ1個の調合は俺のお気に入りだ。
さーて、もうそろそろ来る頃合いか。
太陽寺ちゃんはお人好しだからな。
ヤンキーガールに頼まれて嫌々でカエデと会長が計画したドッキリに付き合わされているんだ。
可哀想に……
この俺がヤンキーガールに裁きを与えてやる!
そう決意を固めたところでちょうどファミレスのドアが開かれる。
それを待ち受けたるは店員の役目。
営業スマイルといつもの台詞を使う。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
「待ち合わせです。」
こっ、この声は太陽寺さん!
あのヤンキーガールめ、ここまで手の込んだ事をするとは……
余程俺との面会が嫌みてぇだな。
ーーフワッ
俺の座席の前席に太陽寺さんは座った。
俺はこれが仕組まれた事だと知っているから
嬉しくない。
あぁ、これが本当のデートだったらな。
「どうしたのヤク君。残念そうな顔してるよ。」
チッ!
これ以上太陽寺さんを心配させてたまるかよ!
「太陽寺さん、正直に話して欲しい。
誰かに命令されてここに来たんだろ?
そいつをここに連れてこい。」
「んー、その人ならここにいるよ。」
ここにいるだとッ!
何処だ、何処に居やがる。
「ヤク君、急にキョロキョロ見回してどうしたの?」
「太陽寺さん! その人とやらは何処に居る?」
「私の前に、」
そうか、俺の背後にーー
「ーーヤク君、もしかしてだけど。
私が悪い子に従ってると思ってる?」
俺は後方確認する首を正面に戻す。
「当たり前だ!」
俺の真剣な返答に太陽寺さんは
俯いてぷるぷると震え始めた。
「ぷっ、あははっ!
ヤク君面白いよ。
私は正真正銘サンライトだよ。
ねぇ、良かったらどんな勘違いしてるか具体的に話してくれるかな?」
***
「ーーこんな感じさ、笑えるなら
笑えばいい。
だが、あの二人には内緒にしてくれ。」
太陽寺さんは俺が話終わった後にも笑いの余韻が消えることはなく、むしろエスカレートした。
例えるなら笑いの壺にはまって溺れたって感じだ。
まぁ、可愛いから許す!
ーーおっと、話し込んでたらもうこんな時間か。
不味いな、あの時みたいに二人を待たせてしまう。
「太陽寺さん、早くTso始めましょう。
あの二人をこれ以上待たせるとあかん。」
「ふふ、そうだねヤク君!」
***
カランカランと俺達が出たドアから退出を伝える鈴の音が鳴る。
すると店員は何かから開放されたかのような笑みを浮かべて俺らにお決まりの別れを告げるのであった。
「ありがとうございました!
またのご来店、お待ちしております!」




