94灯 びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛
<TOKISDEO・RADIO>
「どうも、私、TSO宣伝部のゾン・クラヴィラです。
今回も前回のおさらいあらすじしていきましょう。」
A1:不可視の極細蔓からヤク一行は何とか退けた!
ミルノはるんるんと上機嫌な様子で鼻唄をしている。
「おい、ミルノてめぇどうゆうことだ。
何でそこに座ってやがる、お前料理担当の
メイドだろうが。」
「だって………今日はヤク御母様が手料理を振る舞ってくれるんですよ!」
ミルノは目をキラキラと輝かせて両の手を合わせる。
……ヤクの手料理か。
懐かしいな。
昔は一緒にお泊まり会した時以来だ。
そういや、めちゃくちゃ旨かったっけ。
「サンライト、仮面からよだれ垂れてるよ。」
「おっと、すまねぇなカエデ。」
俺はハンカチでテーブルに垂れた涎を拭き取る。
「ヤクちゃんの愛妻料理。楽シーミですね!」
「拙者も同感で候!」
「ブラックの分までヤク御母様が作るとお思いで?」
「ミルノちゃん、フラグ建築サンキュー☆」
「はーい! 待たせたね皆。ほら、ご飯の完成だよ。
たっぷりお食べ!」
続々と並べられるご飯。
白米と味噌汁と焼き魚、浅漬け野菜……和食だ。
いい梅酒の肴になりそうだ。
「ちょっと待ちなさいサンライト君。」
「はぁ?」
「梅酒をグラスに注ぐ前に皆といただきますしなさいよ。」
「っしゃあねぇな。」
「「「「ーーいただきます!」」」」
よし、これで文句ねぇだろ。
俺は中断された梅酒注ぎを再度繰り返す。
が、華奢な細腕にその行動は止められる。
「こら、サンライト君。
もうこれ以上梅酒飲むの止めなさい。
折角、いい体してるんだから大事にしなさい。
……お母さん、心配よ。」
いや、俺、梅酒一口も飲んでないんだが。
「こら、ブラック君。箸の持ち方がなってないわよ!」
ヤクはブラックの箸の持ち方に修正を施す。
「カエデちゃん。
女の子なんだから口にいっぱい食べ物入れちゃだめでしょ! はしたないわよ!」
「カイチョウ君! 食べ物は確り噛みなさい。
そんなんだから磯臭いって言われるのよ!
20回以上噛んで飲み込むのよ、分かった?
皆もよ!」
「ほら、ミルノちゃんを見てみなさい。
お嬢様並に綺麗なお食事してるじゃない。
これを少しは見習ってよね皆!」
「「「「はーい」」」」
どこのオカンだよ、流石にしつけぇぜ。
***
……。
…………。
食後、俺達は色々とヤク? の
説教や家事に追われ。
時刻はあっという間にクログロ邸規定の
就寝時刻へ。
ヘトヘトで自室に戻った俺は、
食事中没収されたのとは違う別の梅酒を
タンスから取り出してベットに腰掛ける。
すると、今日の疲れがどっと俺の全身にのし掛かった。
こうゆう時こそ、こいつの旨みは真価を
発揮する。
俺は、瓢箪を軽く揺らして栓を抜く。
ポンという音を立てて、中で眠っていた
淡白でありつつ芯のある優しい香りが
部屋全体に微かに広がった。
それは、確実に俺の身体を癒し。
俺の鼻を幸せに導いた。これぞ俺流アロマテラピー。
あぁ、たまんねぇ。
先ずは、一呑み。
ーーゴクンッ!
「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛」
あまりの旨さに某アニメ風のグルメリポートを
してしまった。
たまらん! 俺ァもう一口いくぜ!
ーーコンッコンッ!
くっそぉおおお! 何だよこんな時間にィイ!
俺のご褒美タイムを奪うんじゃねぇ!
「何の用だ。」
本当はドアを蹴破って相手を突き飛ばしたい
ところだが、仕方なく怒りを押し殺し。
平常を装った声色で扉先の奴に声を掛ける。
「良かった。起きてるわね。」
ーーカチャッ。
っておいおい。何勝手に部屋に入って
来ちゃってんのぉ!?
しかも、よりによってヤク? かよ。
もう、堪忍袋の緒が切れた。
一番来て欲しくない奴が部屋にあがるなんざ。
これ以上、梅酒が没収されんのは懲り懲りだ。
「おい、何の真似だ?」
「サンライト君。お母さん、やっぱり心配よ。
ずっと浮かばない顔してるじゃないの。
一体誰のせいなの? お母さん、怒らないから教えて頂戴。」




