87灯 思い出したオヤジUC
<TOKISDEO・RADIO>
「季節は6月、梅雨入りの期を迎え。
台風も迫っているとの情報も伝えられている今。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?
どうも、私、TSO宣伝部のゾン・クラヴィラです。
今回も前回のおさらいあらすじしていきましょう。」
A1:ノジヤ皇子の昔話!
A2:ノジヤ君、八百屋の親父と遭遇なう!
「ーーそうだ、お前さんはあん時の坊っちゃんか!」
僕に急に声をかけたオジサンは変な壺を取り出して見せる。
「これ、お前さんが俺の誕生日にくれたモノだっせ!」
「まさか、カルル八百屋のケン爺!?」
「おーおーおー! やっと思い出してくるぅたか!
ほら、ニンジンサービスだ。」
「あ、有り難うございます。」
「いいって事よ! んで、お前さん。家族連れじゃねぇんか?」
「……それは、」
「ほう、ほう。分かったぞ。これ以上は無理に言わんでええぞ悩める少年よ。」
彼は僕の両肩を掴んでアドバイスする。
「少年よ、悩んで悩んで好きなだけ悩んで自分の答えを出して進みぃ! 俺ぁ応援しまっせ!」
彼はそう言い残して近くの八百屋の奥室へと去っていく。
僕はその彼の姿をぼんやりと見守って、
自分を励ますように、乾いた独り笑いする。
「……はは、進まなくちゃね。」
そして、闇商人が取引をしそうな小道へ
足を踏み入れていった。
……。
…………。
小道の中。
そこは、暗く小さい路地の中。
「おいそこの少年!」
「ーー!?」
僕は呼ばれる大声の方へ振り向く。
振り向いた先に居るのは如何にも悪な服装をしている怪しい人達だ。その姿は盗賊に見えなくもない。
「てめぇ、トリス盗賊団では見かけねぇ顔だな。
あっ、もしかしてお前さん入団しに来たのか?」
「いいえ……。」
「用がねぇなら黙ってさっさと去るかここで
殺されるか選べ。」
彼らは腰の辺りにある小型包丁を取り出して僕の方へ揃って向ける。
逃げ道が完全に塞がれた自分には仕方なくこの選択でここを乗り切るしかなかった。
「いゃっ! 今のは冗談ですよ。
そうそう。入団したくて堪らないんですよ!」
「ったく。初めからそう言えよ。
んで、お前、名前は?」
「…………。」
「沈黙か……、お前、家族に捨てられたんだろ?」
「……!」
「おっ、その表情は図星みてぇだなぁ。
安心しろよ。俺達も捨てられた者同士さ。
だからいっそのこと、復讐してみねぇか?」
「復讐。」
「あぁ、復讐だ。この理不尽な世の中にな。
本当は200000G支払って入団しなきゃならないんだが、お前の可哀想な境遇に免じてその3つの灯素石をくれれば俺達が代わりに申請してやるよ。」
盗賊の目を侮っていた。
価値の高いモノには目が鋭い、これは盗賊だから成し得る技だろう。
だけどいつ、何でこの距離で僕が隠し持っている3つの灯素石に気が付いた?
僕は盗賊達の底知れない力に、冷や汗を垂らしながら固唾を飲む。
それと同時に、彼らの力に頼りたいと思ってしまった。
「どうした? お前の生き場を提供しようと提案してやってんのに無反応は寂しいぜぇ~。
俺達と一緒に……これから毎日家を焼こうぜ☆」
「お願いします。」
「ケケケケケケケ! 交渉成立♪
これからは俺らの仲間だ、お前さんを俺達が養ってやるよ。」




