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メイド界からこんにちは!  作者: 柚堂ゆゆ
第3話「葵 蒲公英(あおい たんぽぽ)」
8/23

「変態ぽぽちゃん」


「それでは、全員の審査が終わりましたので結果発表をしたいと思います……。

 皆さまお疲れ様でした……」


 ほとんどの連中は、香菜と瀬川さんにボコボコにされて教室から逃げて行ったけどな。


「審査方法は三人の票が一番多い人となります……」


 香菜はなんとなく自分のつらい未来を察しているからか、元気がない。

 それでもちゃんと司会を全うしているのは、何というか健気だな。


「発表は、部長である夏芽さんから行わせてもらいます……」


「代わりまして足跡部、部長の瀬川夏芽だよ。

 いや~皆さん、非常に面白い足跡を残してくれたね」


 お前らがほとんど踏みにじったけどな。


「それでは勿体ぶらずに発表しましょう!

 今回、オーディションを勝ち抜き栄えある足跡部の一人になるのは!」


 瀬川さんは、セルフで「でででででで、でん!」と言うSEを入れた後、当然あの子の名前を発表した。


「葵 蒲公英ちゃん! 君だ~~!」


「やりましたよーーーー!!!」


 もちろん、票の内訳は葵さんに俺と瀬川さんの二票が投じられただけである。

 

 香菜は適当に誰かに入れたみたいだが、無念。多勢に無勢とはこのことだ。


「ううう……やはり、こうなってしまいましたか。

 夏芽さんはともかく、一正さんは面白がって入れただけですよね!」


「何を暴論を! 俺は一番やる気を感じた葵さんに入れただけだ!」


「はいはい、そこ喧嘩しない。もう時間も遅いし帰るよ。

 明日から本格的に活動開始だ!」


 確かに、いつの間にか七時になっている。

 まあ三十人近くオーディションしたしな。

 結局、葵さん含め、香菜と瀬川さん目的の奴しかいなかったけど。


「よーし、それじゃあ帰るか」


 そう言いながら俺が鞄を背負ったその時。


「待て、私はお前に用があります」


「ひぃっ」


 突然、葵さんが後ろから肩を掴み、そう囁いてきた。

 そのドスの聞いた声に俺は情けない声を上げてしまった。


「香菜さん、部長これからよろしくお願いします!

 それとちょっと佐須駕野くん借ります」


「了解~。二人とも遅くならないように」


「はぁ……。まあ、悪い人ではないとは思うのでがんばりますか……。

 あ、一正さん、それではお先に失礼しますね。夕飯作って待っています」


 おい、バカ。毎日夕飯作りに来るの学校では隠してたんじゃないのか。

 落ち込み過ぎて油断しているぞあいつ。

 しかも最悪のタイミングだ。


 こうして、賑わいを見せていたクラスには葵さんと俺の二人きりとなってしまった。


「夕飯ですと? 詳しく教えてください。返答次第では……殺す」


 ほら、面倒な事になった。


「い、いや違うんだ。落ち着いてくれ。これには深い訳があるんだ」


「あんなに可愛い香菜さんとお前なんかが付き合えるわけがないはずです。

 何か握っているんでしょう、弱みを!」

 

 いや、弱みを握られているのは俺の方だから。

 お前は香菜が聖人君子みたいに見えているのかもしれんが実態は全然違うぞ。


「と、とにかく落ち着いてくれ。

 いいな、こうなってしまった以上は全部教えてやる。

 俺は元々引きこもりだったんだ。

 それを何とかしようと香菜はプリンスド大学とやらから実習できたメイドなんだよ」


 だめだー!!! こんな話、誰が信じるんだ!


「え、香菜さん。なんて優しいんですか……。惚れ直しました」 


 あ、こいつ香菜のことになるとアホになる奴だ。

 俺も大概だけど、こいつさてはそれ以上だな。


「ということは、香菜さんは大学生なんですか?

 あの見た目からは信じられません。まるで中学生みたいですよ。守りたくなります」


 守りたくなるって……。

 

「確かにあいつは大学四年生らしい。しかし実際の年齢は十四歳なんだ。

 あいつはなんと飛び級ってやつだ」


「おおおおお! さすが香菜さん、だからあんなに頭が良いんですね!

 それでいて、あんなに可愛くて……。性格もとても優しくて……。

 見てください、この写真! この後ろ姿! この横顔!」


 え……。こいつどうやってそんな写真を!?


「お前、その写真どうしたんだ? ま、まさか隠し撮り……?」


「……ハッ! 興奮しすぎました。い、今のは忘れてください」


「忘れねえよ! お前の愛は行き過ぎだよ! 盗撮って……」


「あああ! 絶対このことは香菜さんには秘密です。お願いします!

 もし、もしも香菜さんにこのことを知られてしまったら、ドン引きされてしまいますよ……」


 いやもうドン引きされてると思うけど……。

 しかし、これは良いことを知ってしまったようだな。


「ハッハッハ! 俺も大概だが、お前はそれを超える変態のようだな!

 なあ? たんぽぽちゃん。 いや、ぽぽちゃん!」


「ぽぽちゃん!? そんな呼称で私を呼ぶなー!

 それに、お前ずるいですよ。香菜さんがメイドだなんて」


「お前じゃない、佐須駕野 一正だ」


「知っていますよ。貴方クラスではサッスガーノって呼ばれていますね?」


「っく……。痛い所をついてきやがって。変態ぽぽちゃんの癖に……」


「とにかく、香菜さんがメイドなんてずるいです。解放してください!

 そして、私のメイドに……ぐへへ」


「あいつ、メイドとして俺を立派な人に導かないと大学卒業できないらしいぞ」


「ぐぬぬ……。こんなやつを立派にだなんて、無理難題を……」


 余計なお世話だよ。

 言い返す言葉も見つからないけど。


「こうなったら、私が香菜さんを助けるしかありませんね。

 晴れて同じ部活にも入れたことだし、頑張りますよ。見ていてください香菜さん!」


 香菜も大変だな。

 こんな変態に頑張られても絶対困るだけだろ。


「じゃあ、そういうことで失礼します。

 あ、隠し撮りのことばらしたら殺すからなサッスガーノ」


 そう言い残してぽぽちゃんは去っていった。

 面白がって票を入れてしまったが、あいつあそこまでの変態だったなんて。

 しかも相当俺を嫌悪しているようだし……。


「部活かあ……。変な部に変な部員しかいないし、どうなることやら」

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