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メイド界からこんにちは!  作者: 柚堂ゆゆ
第2話「瀬川 夏芽(せがわ なつめ)」
6/23

「狂気のオーディション」

「それじゃあ、気をつけて帰るように」


 帰りのホームルームが終わる。

 本来であれば学校から解放される至福の瞬間。しかし今日は訳が違う。

 地球上において、唯一俺が心から安息できる場所、その名も我が家。

 一刻も早くその聖域(サンクチュアリ)に帰りたいが、それを阻む声が教室中に響く。

 その綺麗で透き通った声の持ち主は瀬川夏芽、我らが部長である。


「はい、香菜ちゃんと、サスガノ君集合!」

「はい、はーい!」

「…………」


 ノリノリの香菜。

 トボトボ向かう俺。


「ほらサスガノ君、もっとやる気だす! そんなんじゃ足跡、残せないよ?」

「いいか、瀬川さんが残そうとしている足跡。それは何れの日か昇華するぞ……黒歴史にな」

「あはは、サスガノ君、セリフが中二病」

「一正さん言うと、説得力ありますね」

「…………」


 散々馬鹿にしやがって。

 こいつら覚えてろよ。いつか復讐してやる。


「場も和んだことだし、本題! 部活動作成申請書を貰ってきました。とりあえずここに二人とも記入して下さい」

「分かりました!」


 そう言うと香菜は自分の名前と俺の名前を記入した。

 しっかりと俺の名前は俺の筆跡で。


「一正さんが渋る前にさっさと書いちゃいました!」

「香菜ちゃん、ナイス!」


 何だよその無駄スキル。

 もう諦めてるから普通に書いたのに。

 ……ん?


「おい、ここに部活動作成を申請する場合は、四人以上が必要と書いてあるぞ!」


 これは、もしかしたら突破口になるか……?

 俺の平穏を間違いなく破壊する、足跡部とかいう怪しい団体の発足を止める突破口に!


「お、よく気づいたねサスガノ君!」

「どうします? 誰かに幽霊部員として名前貸してもらいます? ぼく、既に何人かの筆跡抑えてますよ」

「なにやってるんだよお前……」

「正直香菜ちゃんとサスガノ君が居ればそれでいいんだけど。せっかくだからやる気満々で面白い人がいいの。幽霊部員は士気が下がっちゃう」

「なるほど! 確かに活発な方が楽しいです!」

「ということで私は授業中に部員募集のポスターを作っておきました!」

「ちゃんと授業受けろよ……」

「一ヶ月も学校に来ない人に言われたくないな」

「ぐぬぬ……」


 相変わらず痛いところを突いてきやがる。


「私が作ったポスターはこれ!」


 足跡部『生きた証を残す部活』

 私達は同士を後一人募集します!

 自分の生きた証を何か形にしたい人。

 三日後の放課後、オーディションを行うので105教室まで来て下さい!


 これに俺達三人のイラストが描かれたポスターだった。


「わー! 瀬川さんイラスト上手ですね」

「ありがとう香菜ちゃん! 後香菜ちゃんは夏芽って呼んで」

「分かりました夏芽さん!」

「いちゃついてるところ申し訳ないけど、オーディションなんて誰もこないだろ」


 誰がこんな怪しい部活に入ろうとするんだ。

 こちらからお願いするならまだしも、向こうから頭を下げて入るような部活じゃないぞ。


「ふふ……それはどうかな」


 なんだその不敵な笑みは……。


◆◆◆ 


 そして三日後の放課後


「うそだろ……!?」


 何が起きているんだ。

 こんな怪しい部活のしょうもない一席を求めて、


「三十人近くいる……だと!?」

「ぼく達の部活、大人気です!」


 何故、こんなに大人気なのだ。

 この学校の奴らは頭大丈夫なのか?

 いや、でもなんか、よく見ると男ばっかりだな。


「こいつらまさか……!?」

「ふふ、察しの通りだよ。香菜ちゃんと私、一年生の女の子の人気一位と二位らしいよ」

「まじかよ……。実態を知らないばかりに」


「むむ、失礼な!まあでも、この部活に入ればライバルは噂の変人のサスガノ君だけ。これだけ人が来るのは予想通りだよ」


 お前こそ失礼だよ。

 でもその通りだから何も言えない……。


「それでは皆さん、オーディションを開始します。今回進行役を務めさせて頂きます赤姫香菜です。どうぞよろしくお願い致します!」

「ふうううううう!」


 会場は大盛り上がり。

 本当にあいつ大人気なんだな……。


「それでは一人目の方、お願いします!」

「はい。僕が今までに懸けてきたことは数学です。円周率行きます!」


 こうして狂気のオーディションの幕が上がった。

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