「委員長がストーカーな訳がない」
「どうして誰とも話そうとしないんですか。
お昼もこんな誰も居ない屋上で食べているし!」
「ああもう、うるさい。飯くらい静かに食べさせろよ。
……うーんお前の作る弁当だけが楽しみで学校に来ているようなもんだな~。あーおいしい」
「え、それはどうもありがとうございます。そう言ってもらえると、とてもうれしいです。
……じゃないですよ! こんなんじゃ全然リア充のような素晴らしい高校生活は送れませんよ?」
香菜から人質をとられ、毎日半強制的に高校に登校し始め早一週間、
香菜以外とまともに会話したのは、たまに委員長っぽい女の子が連絡事項を教えてくれるぐらいである。
(しかもそれも、めちゃくちゃ緊張して俺は相槌しか打ててないんだけどね)
「そもそもクラスではぼくとすら会話しようとしないじゃないですか!
ぼくを通じてクラスの方々と仲良くなればいいじゃないですか!」
「お前は何も分かかっちゃいないな」
「え、どういうことですか?」
ふん。こいつにコミュ障の俺の悩みなど分かるまい。
分からないなら教えてやるだけだ。
「いいか、お前はどうやらコミュ力があるようだな。
そのせいでお前は既にクラスの人気者だ。お前を狙っている男連中もきっとたくさんいるだろう」
「え、まじですか? いや~、困りますねえ……。ぼくは立派なメイドとなりご主人様に仕える身。
ご期待に沿えないこのぼくをどうか許してほしい!」
なんだこいつ、意外に褒められ下手なのか?
顔が真っ赤じゃないか。
「……そしてだ、そんなお前に俺のようなクラスの腫物が仲良くしてみろ。
今はまだ空気として扱ってくれているのに、それが超うざい、邪魔者になってしまうだろう。
そして始まってしまうのだ。……いじめがな」
「被害妄想乙! ですよ。
もっとクラスの方々を信頼してみてはどうですか。皆さん優しい方々ですよ」
「はん、人っていうのはな、接する相手によってころころ態度を変えるんだよ。
お前には優しくても、問題児の俺には皆、非情になるんだ!」
「そんなことないですって……」
いいや、これが人の真実である。
いい人かそうでないかなんて、見る視点によって違ってくるんだよ。
「あ、ほら委員長さんとかご主人様にもとても優しくなさっていたじゃないですか?
ご主人様も顔真っ赤にしながら相槌を打たれていて……まさか惚れちゃったんですか?」
「ち……ちがっ!」
慌てて否定しようとしたその時だった。
階段に繋がる扉が勢いよく開いた。
「話は聞かせてもらったよ! ご主人様ってどういうこと!」
「委員長!?」
「委員長さん!」
綺麗な長い黒髪に黄色い目、とても整った顔立ち。
そして香菜とは違い、身長もそこそこ高く、胸もなかなかの女の子。
それは俺にも優しくしてくれた委員長だと思っているその女の子だった。
「いや、私は委員長ではないんだけどね……。
それよりも、さっきからこっそり盗み聞きしていれば、
ご主人様とかお弁当を作ってあげているとか面白そうな話が聞こえてくるじゃない!」
いやいや、盗み聞きっておい。
ていうか委員長じゃなかったのかよ。
プリント配布とか学校案内とか香菜と俺にやってくれたからお前が委員長だと思っていたよ。
「学校では一正さんとお呼びしていたのに気が緩んでいました。
やりますね委員長さん。ぼくが気配に気づけないなんて」
「いや、だから委員長じゃないから。
……そんなことより、あなた達二人、同じタイミングで学校に来出して何かあると思っていたの。
それを暴くために色々お世話をして接近していたんだ」
「な、なんでそんなことを……?そんなことのために、爆発物である俺にも優しくしてくれていたのか……?」
畜生。あの優しさは嘘だったのか。
美人さんに優しくしてもらってすこし嬉しかったのに!
「爆発物って。……まあ、確かに自己紹介とか逃亡劇とかは爆発していたかもね」
「ああああ、その話はやめてくれええええ!!!」
「あはは、でもそんなところも面白そうだなって思ったの。
私面白い事が好きなんだ。クラスの皆、普通過ぎてつまらない。
その点、あなた達二人は面白そうだなって思っていたら予想以上にすごい関係みたい」
「だめだ……。また俺の周りに変な奴が……。そっとしてくれよ……」
お前こそが面白いやつだよってつっこみを入れたくなるようなその変な女は、
ゲスな顔をして詮索してくる。
「私、瀬川夏芽っていうの。もう自己紹介してたと思うんだけどな。
改めましてよろしくね。そして二人のこと全部教えて?」