「メイド界からこんにちは!」
処女作となります。
頭のイメージにあるキャラクター達が喋っているのを文字にした様なものなので
とてもお見苦しい所もあるとは思いますが、宜しければ是非一読お願いします!
感想やレビューを頂けると幸いです!
新しい環境、新しい出会い、そして新しい高校生活。
誰もがここで一転し、新しい自分に生まれ変われると思うだろう。
少なくとも俺はそう思っていた。
だが、人の本質とはそう簡単に変わるものじゃないらしい。
中学生活のほとんどを家で過ごし、半ば強制的に義務教育から追い出された。
なんとか勉強だけはこなし、中学の連中が誰もいないそこそこの高校に進学。
そして、新しく始まる高校生活に胸を躍らせていた。
しかしそれも、もうはるか昔のように感じる。
そう、俺は高校生になり、夏を待たずしてさっそく引きこもりなのだ。
「はー、やっぱ学校ってクソだわ。友達とよろしくしたところでなんの生産性もないっての」
独り言を呟きながら今日も朝十時に起床。
そんな俺の名前は佐須駕野 一正。
高校生となり、念願の一人暮らし生活を手に入れて悠々自適である。
「いやー、一人暮らし最高だな。中学のときは家族がうるさかったしな」
もう、俺を止める者はいない。
今日もいじめられる夢を見てしまった。気分が悪い。
二度寝でもして、リフレッシュしよう。
そう思って布団に入り直そうとする。
その時だった。
……後に、俺の平穏を破壊する女の子の第一声を聞くことになる。
「本当に中高共に引きこもりなんですか。こんな人が今日からぼくのご主人様だなんて前途多難というより、もはや地獄です……」
うるさい、なにが地獄だ。
いきなり人を全否定する、お前こそ地獄の住人の鬼だよ。
さっさと二度寝しよう。
……ん?
「二度寝……? ということはここ家? いや、俺引きこもりだから家に決まっているか」
じゃあ、なんで俺を罵倒する声が聞こえるんだ。
慌てて布団から飛び出し、その声のする方角を見る。
「二度寝なんて許しませんよ。ぼくが来たからには、規則正しく健康的でそして誰もが羨むようなリア充生活を送ってもらいます!」
目の前には、赤髪のミドルヘアに黒いリボンをつけ、綺麗な顔立ちをした女の子が立っていた。
見た目的に歳は中学生ぐらいだろうか。
しかし何といってもその服装に、目を奪われてしまう。
この、六畳の狭い部屋に似つかわない立派なメイド服を着ているのだ。
「たとえ、こんな引きこもりのご主人様でも!」
その女の子は付け加える様に、ドヤ顔でそう宣言する。
「…………」
言葉が出ない。
この状況に思考が追いつくほど、俺の頭は立派にできていないのだ。
加えて寝起きということもあって、本当に何がなんだか分からない。
とりあえず冷静になって、俺がここですべき行動は……。
「あー、警察ですか? 今ですね。僕の家に怪しい人が不法侵入してまして」
いくらかわいいと言っても不審者は不審者だし、不法侵入は不法侵入だ。
俺はそそくさとスマートフォンを取り出し警察に通報。
このイカレた状況に正義の鉄槌を下してもらおう。
「あー! 何やってるんですか。切ってください!」
「お、おい。やめろ」
その謎の女の子は予想以上の俊敏な動きで俺に突っ込んできた。
そしてそのままスマートフォンを持つ右手を抑え、押し倒す。
余りの突然の行動に俺は為されるがままであった。
「くそ、痛えな……って、ん?」
なんだが左手にすごくいい感触がする。
丁度手に収まり、ましゅまろみたいに柔らかい心地のいい感触。
「やわらかい……」
「ってどこ触ってるんですかー! 変態!」
「いってえ!!」
それはそれは気持ちのいいビンタを食らった。
怒りと恥ずかしさその他諸々が詰まったかのような一撃だった。
「む、胸を触られるなんて……。今までどんな殿方にも触られたことなんてなかったのに……」
「あ、それはご馳走様です。……じゃ、ねえよ! さっきからいてえよ!
そしてまず、お前誰なんだよ! 何で勝手に家に入ってきてんの?」
どんな大義があって、俺の神聖なパーソナルスペースを侵害している!
「あーもう。うるさいご主人様ですね。鬼畜で理解の遅いご主人様にぼくがひとつひとつ教えてあげるので感謝して下さい」
そう言うと、彼女は捲し立てる様に自己紹介を始めた。
というか、何故俺が感謝せねばならないのだろう。
「ぼくはスカーレッド・プランセス・香菜と申します。あなたを導き立派にするため、イギリスから参上した超一流メイドです。超一流なので、ご主人様の家に忍び込むくらい、造作のないことです」
だめだこいつ、早く何とかしないと……。
痛い妄想をした女の子が不法侵入だなんて、どれだけついていないんだ。
「分かった。警察に突き出すのは許してやろう。その代わり一刻も早く消えてくれ。俺は忙しいんだ。痛い中学生の妄想ごっこには付き合っていられん」
女の子を担ぐことには少し抵抗があるが、仕方がない。
俺はその女の子を担ぎ上げる。
「おら、玄関までご案内だ!」
「あああ! やめてください! ぼくが世話してあげるって言っているのにこんな扱いだなんて!」
「おい、暴れるな! 引きこもりのパワーでは支えきれん!」
「降ろせーー!!!」
「あっ、もうだめ」
盛大にバランスを崩し、宙にスカーレットと名乗る謎の女の子が舞う。
その後、衝撃音と共にまたもや重なり合うように二人は交差する。
……そして次は唇に暖かく、やわらかい感触を感じる。
「んーーーーーーーーー!!!」
「このご主人様……もとい鬼畜さん……。絶対許しません。ぼくの胸だけでなく……くち、唇まで……」
「俺だって、初めてだったんだぞ! 最初のキッスは年下でボーイッシュな感じの子と夕焼けをバックに河原でお互い照れながらも求め合う……的な感じでする予定だったのに!」
「き、きもすぎます。こんな人が今日からぼくのご主人様だなんて……」
「ていうかさあ、自称メイドさん。俺、メイドなんて雇った覚えないんだけど? そもそもお前、中学生だろ。義務教育くらい全うしろよ」
まあ、中学引きこもっていた俺が言うなって話だが。
「誰が中学生ですか! ぼくは大学生です! いいですか、ぼくは超名門の現代メイド養成学校プリンスド大学の初めての日本籍を持つ生徒です。しかも、飛び級の超天才ですよ! 実年齢は十四歳です!」
「どこから突っ込めばいいのかわからん……」
ここまで設定を作りこむとは相当重症な中二病だ……。
「あー、信じてないですね。それならば証拠を見せてあげます」
そう言うと香菜は学生証らしき物を見せてきた。
「な、なんだと……!? 本当に大学四年生って書いてある。しかも生年月日から計算すると、マジで十四歳だと……!?」
「どうです、ご理解頂けましたか? ぼくのすごさを!」
「っく、でもこの学生証が本物とは限らない……!」
めちゃくちゃ精工にできているが、頑張って作った可能性もあるはず……!
「往生際が悪いですね。それではこれを見てください」
そういうと香菜はどこから出したのか何らかのプレイヤー装置を取り出し、映像が流れ始めた。
『よう。元気にしてるか一正。俺が日本にいないからってどうせまた高校でも引きこもってんだろ? どうだ、当たりだろ?』
「親父!?」
『そんなお前に特別プレゼントだ。イギリスでちょっと頼み込んでプリンスド大学様の生徒さんをお前につけてもらうようにしてやったぞ。感謝しろよ。この一年でお前がどれだけ成長するかお父さんとても楽しみだ! じゃあな!』
「なんだ、このビデオは……! 余計なことしやがって!」
「ということでぼくことスカーレッド・プランセス・香菜が貴方を立派な人間に成長させ、引きこもりからリア充へと生まれ変わらせます! ご理解頂けましたかな、ご主人様?」
「こんなプレゼントはいらん。滅しろ」
今度は躊躇なく香菜を外へ追い出した。
「よし、色々あったが悪は去った。ああ、目も覚めてしまった。どれ読書でもするか」
しかし、彼女は必要のない根性があるらしい。全然諦めてくれない。
外側から激しくドアを叩きつけ、その上ピンポン連打のおまけつきである。
「開けてください! 内側のロックは卑怯です! ぼくの合鍵じゃ開かないじゃないですか~」
「うるせえよ! 近所迷惑考えてくれ。これ以上騒ぐならマジで警察呼ぶからな。いいからもうプリンスド大学とやらに帰れよ」
その言葉と共に物音は止んだ。やっと諦めてくれたか。
あいつも他の奴に仕える方が幸せだろう。
「う……ぐすっ……。あとちょっとで夢が叶う所まできたのに……。大学に帰れるわけないですよ……」
どうした? あいつ泣いているのか?
「おい、なんでお前そこまで必死なんだよ。他の奴に従えた方がお前も幸せだろ」
「プリンスド大学の掟の一つに、『どんなご主人様であろうと従え徹す』という掟がありまして……。この実習で大学を卒業なんですが、失敗するということは、退学を意味するんです」
なるほどなるほど。
泣き落としと来ましたか。
しかし俺は理を愛し、情に流されない男。
哀れなり。相手が悪かったな。
「入れてくれてありがとうございます……。
鬼畜野郎の変態引きこもりだと思っていましたが優しいところもあるんですね……」
今まで親戚類を除いた女の子と絡んだことなんてほとんどない人生だった。
この僅かな時間の女の子との触れ合い(しかもよく見るとちょっと、いやかなりかわいい)はさすがの一正でも。
もとい、佐須駕野一正でも気分が高揚していなかったというと、嘘になるであろう。
「とりあえず、鬼畜野郎とか変態引きこもりとか言うのはやめろ。でもどうするんだよ。俺が全うな人間になるなんて無理だと思うがな」
「ふふん、ぼくは天才なんです。まかせてください!」
こいつ、さっきまで泣いていたくせに切り替え早すぎだろ。
すぐにめちゃくちゃいい笑顔になりやがって。同情を返せ!
「ぼくは根本から一気に解決できるんです!」
そう言い放った香菜は続く言葉にとても恐ろしい地獄の宣告を言い放った。
「今から高校に登校してもらいます。まずはそこからです。一緒に行きましょう、ご主人様?」
「え、マジ……?」
……これは俺にとって泥船のような気しかしない。
だけど今は可愛いく笑う香菜の姿に目が奪われてしまうのは、
長い引きこもり生活のしからしむるところなのだ。
絶対に行きたくないけれど、
可愛い女の子と登校できるっていうオプションだけで少し、
本当に少しだけど行ってもいいかな~なんて思ってしまうのである。
一話、かなり修正しました。
話の流れは一緒ですが少しは読み易くなっていたら幸いです。