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11 CNF紙幣

 硝石丘に関する法案と派遣議員制度の改正案。二つをモケモケに口述筆記してもらい、今日の仕事は終わりとなる。


「……すごく充実した時間だった。任せて。どちらの法案もわたしが絶対に実現させる」


 転移で首都のホテルに移った後、モケモケは満足した顔で帰っていった。


 ほどなく葉月がフィリシェの元から帰ってくる。葉月と合流した上で我は再び屋敷に戻った。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「今日はモケモケちゃんとお話し出来て楽しかったです。お風呂も一緒に入ったし。モケモケちゃんはいい子だよお姉ちゃん」


「いえ。なんといいますか。わたくしは彼女のことを悪く言った覚えはないのですが」


 確かにな。モケモケの方が葉月を怖がっているだけだ。まあ葉月の方にも敵意のこもったオーラが出てるのを感じるが。


「……駆馬様に排便する様を見せつけるような変態な点を除けばですが」


 やはりモケモケに対して敵意を持っているかも知れぬ。


「うー。あー、ぬぉおおー」


 そしてニコは呻いていた。だいぶストレスが溜まっているようだ。その理由は概ね察しがつくが。


「やはり硝石丘は不満か、ニコ」


「ご不満だー」


 ニコは硝石丘による火薬の原料製造に反対だった。


「なんでハーバー・ボッシュ法使わないんだー。食糧問題の方だってこれ使えば一発だろー!」


 そう、我等には硝石丘などより遥かに効率よく火薬を作る技術がある。二十世紀の化学の魔法、ハーバー・ボッシュ法がそれだ。これは化学肥料を生み出す方法でもあり食料生産にも革命を起こす。


 だがなニコ。ハーバー・ボッシュ法では解決出来ぬ問題があるのだよ。


「ハーバー・ボッシュ法では火薬は大量に作れてもうんこが処分出来ないだろう」


「主題そっちなのかー!」


 初めからそう言ってただろうに。


 もっともハーバー・ボッシュ法やさらに進んだ二十一世紀の合成法も後々開発する予定ではある。


 これは食料生産に関わるからな。


 この国ではうんこを肥料に使わぬ以上、肥料の原料を化学合成する意義はある。ただし火薬と肥料は材料が共通してしまうため、うんこを一掃するまではこの方法は使えぬのだ。


「我にとっては衛生問題が第一だからな。まずは街からうんこを一掃。その後下水を整備して川の水を浄化する。トイレと下水処理施設まで完備されれば硝石丘でうんこを処理する必要もなくなる。火薬の化学合成を行なうのはこれらが達成された後だ」


「果てしなく長い道のりだなー」


「そうあせらずともやる事は他にもある。鉄の増産も行いたいしな。だがまずはここまでだ。ミニエー銃と硝石丘。まずはこの二つの技術を普及させる。この国に関する資料を集めるようモケモケにも頼んでいるしな。その資料を元に次の提供技術は考えよう」


「分かったぞー」


 ニコもしぶしぶながら了承した。


「と、そうだ。そういえばフィリシェとモケモケ以外にバロスに見せる物もあった。カード状にしたのシャトラの新型駒を作成せねばな」


「王子ゲームまで作ってんのか。他にやることいくらでもあるだろうに」


「まあそう言うなニコよ。ほら、これがこの国で流行しているボードゲーム、シャトラのルールだ。チェスに良く似てるだろう。これに日本が誇る持ち駒ルールをぶち込んでやる。これはそのための駒の形状変更案だ」


「カード状かー。確かにトランプ流行ってるなら受け入れられるかもなー。じゃあイラスト書いてそれをコピーすればいいんだなー?」


「その通り。だがただの紙ではつまらぬからな。CNF(セルロースナノファイバー)で作ってくれ。市販品はバロスの知り合いに作らせるが、見本にはCNF素材を使う。CNFのプロデュースを兼ねるのだ」


「何かやりたいことでもあるのかー?」


「うむ、CNFによるカード製作は前段階。本命は別だ。我はCNF素材を使って紙幣を作ろうと考えている」


 CNFは木から作れる夢の新素材。ニコは既に木の部分をCNFに変えた銃をモケモケに作っている。


 だがCNFで出来ることはこれだけではない。


 木から作られるCNFは紙の代わりとしても使えるのだ。もちろん強度は紙より高く、より優れた紙幣の材料となる。


 だが今回の本題はそこではない。重要なのはCNFなら紙幣を偽造されぬということだ。アギルスからの偽札攻撃に対抗できる。


 偽造を防ぐ紙幣には地球で既に前例がある。ポリマー紙幣と呼ばれるものだ。合成樹脂を使った紙幣でプラスティック紙幣とも呼ばれているな。偽造の難しい紙幣としてオーストラリアで発行されたのが始まりだ。


 ポリマー紙幣は透明な合成樹脂のフィルムに通常の印刷を行い、上から保護膜をコーティングして作っている。元が透明だからすかし部分を完全な透明に出来るのが特徴だ。


 ポリマー紙幣には他にも耐久性や防水性に優れ、耐用年数が長いという特徴もある。


 何よりプラスチック自体が普及してないこの世界では偽造不可能な紙幣となりうるのだ。石油があれば我もこっちを採用しただろう。


 だが油田はまだ掘ってないからな。代替案がCNFだ。


 CNFは木から作るが透明シートへの加工も可能だ。今回はそれを使用する。ポリマー紙幣における合成樹脂フィルムの代わりと言うわけだな。


 もちろん強度はポリマー紙幣よりもさらに上である。究極の紙とも言えるCNFの特性を活かした一品に仕上げられるだろう。


「今回はカードへと加工するからな。強度をより宣伝出来るだろう」



 こうしてニコにカードの作成を命じ、今日の作業は終了となる。


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