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03 チート能力と要塞御殿

「まずは執事の玄庵げんあんさん。おじいちゃんには暗殺者の職能を伝授しちゃいます。これは隠密行動が得意なジョブですね。玄庵さんが元から持ってる能力と合わせたら忍者みたいになれますよー」


 玄庵は元CIAの諜報員。日本で諜報活動をしている時に親父殿に拾われた逸材だ。そこに隠密が得意な職能が加われば正に無敵の諜報員と化すだろう。



「次はメイド長の葉月はづきさんですね。あなたにはオーソドックスに剣聖の職能をあげちゃいます。戦士系で文句なしに最強のジョブですよー。サムライとどっちがいいか迷いますけどー。あ、やっぱりサムライの方がいいですか?」


「いえ剣聖の方で結構です。わたくしは刀以外も扱えますから」


 葉月は……まあこういう奴だ。剣道においては複数の流派で免許皆伝。他にも剣技に分類される物なら軒並みマスタークラスの実力を持つ。


 総合的にはもちろん我の方が最強なのだが、剣技に限定すれば葉月は我をも凌ぐ使い手だ。つまり地球でもっとも強い剣士と言うわけだな。


 彼女自身が地球で剣聖と呼ばれるべき存在なのだ。職能とやらも剣聖以外にはありえぬだろう。



「さて次はお待ちかねのニコちゃんですよー。ニコちゃんは駆馬かるまさんと違って本物の天才ですからね。私もはりきってふさわしい職能を考えました。ジャッジャジャーン。なんと、錬・金・術師です! ニコちゃんの頭脳にこの職能が合わされば異世界に革命だって起こせちゃいますよ!」


 女神はとっておきだとでも言うように錬金術師を読み上げた。その後補足説明がしばらく続く。


「なるほど。元素変換能力か。結構使えそうな能力だからありがたく貰ってやるぞー。工房にある3Dプリンターと組み合わせたらなんでも作れるようになるなー」


 ニコに与えてくれる能力は材質を変換出来るというものらしい。錬金術師の名の通り、石ころを同じ重さの黄金に変えることも可能だそうだ。


 これはかなりのチートだな。ニコは異世界で一番の大金持ちにもなれるだろう。ただし、そんなスキルをフルに使えば王侯貴族に目をつけられるのは確実だが。


「ニコちゃんのスキルは危険がいっぱいですからねー。皆さんでちゃんと保護してあげて下さいねー」


「大丈夫だぞー。あたしは金なんかに興味はないからな。金なら王子がいくらでもくれるし。あたしは自分が作りたい物を作るだけだー」


 ニコは我のことを金づるとでも思っているらしい。実際にはニコの研究は売れるから我も利益を得てるのだがな。まあ本人がその生活を異世界でも続けたいなら我に止める理由はない。


 そしてもちろん、ニコ自身の意志で我らの下を離れぬ限りは、異世界のどんな害意からもニコを守ってやるつもりであるしな。



「次はコネクトームさんですね。あなたには学者の職能をプレゼント。コネクトームさんって人間じゃないからちょっと複雑なんですけど、これならあなたにも使えます。知能が増大するだけですからね。特に並列思考と高速演算は重宝すると思いますよー。クラフトロイド千体の同時完全制御も出来るようになっちゃいます」


「それはすごく嬉しいです。ありがとうございます」


 コネクトームは千体のクラフトロイドを制御しているが完全に扱えているわけではない。ごく単純な作業なら千体同時も可能だが、複雑になると動かせる数がどんどん減るのだ。


 実際には十~百体程度をローテーションで使っている状態だった。ニコの工房が忙しくなったりすると屋敷の清掃などの他の雑務に手が回らなくなるくらいだ。


 その枷がはずれて千体のクラフトロイドを最大限に使えるようになるのはかなり便利と言えるだろう。



「さてと、次はひよりちゃんですねー。ひよりちゃんには聖女の職能をプレゼントしちゃいます! 治癒系の最上級職ですよー。聖女の職能があれば身体能力もそこそこつくし、防御魔法も使えますからね。これならひよりちゃんも安心ですよね駆馬さん?」 


「身体能力も上がるのは良いな。それなら問題はないだろう。聖女という職能もひよりにはぴったりな感じだしな」


 我がそう言うと葉月に玄庵、ニコも大きくうなずいた。


 ひよりは我が家の癒し担当なのだ。我が家において既に聖女的な存在だったと言っても良い。


「ご、ご主人様にそんな風に言われたら、ひよりおかしくなっちゃいますぅ~」


 ひよりは顔を真っ赤にしてうずくまってしまっていたが。ひよりのこういう所も我が家にとっては癒しである。



「さてと。で、残るは我というわけか。もっとも我は存在そのものがチートの塊であるからな。能力などなしでも全く問題はないわけだが」


「えっ、何馬鹿なこと言ってるんですか駆馬さん。親の七光りで実力がついていってないって関係各所から陰で散々言われてるのに」


 なんだその初耳事項は。我はそんな話聞いていないぞ。確かに親父殿は偉大だが我はそれすら凌駕する逸材なのだ。有り得ないことを言う駄女神である。


 まあ天才は理解を得にくいともよく聞く。我の才能を理解出来ない愚か者も世には多いのかも知れないが。


「なかーま」


 ニコが憐れむような目で我を見てくるのがなんかムカツク。確かにニコは天才だし我も当然そうなのだが。少なくともお前に憐れまれるような人材では我はないぞ。


「とにかくスキルはあげますよー。それも七光りな駆馬さんにぴったりの思いついちゃいましたから。その名も|《七 光》《セブンスライト》です! 皆さんがこれから行く世界には火、水、風、土、光、闇の六属性の魔法があるんですけど、この|《七 光》《セブンスライト》はなんと七属性の魔法が使えちゃう最強スキルなんですよー。あ、ちなみに職能自体はただの魔法使いとなってますー」


 魔法使いか。まあ良かろう。


 我は存在自体がチートであるしな。スキルにこだわりはないのだよ。せっかく異世界に行く上で魔法が存分に使えると言うのも悪くはない。ただ……六属性しかないのに七属性使えると言うのはどういうことか。この駄女神のことだから算数が出来てないという可能性も。


「算数くらい私も出来ますよ! 馬鹿にしないでくださいー! 七つ目の属性は無属性! 向こうの人は誰も使えない秘密パワーなのですよー! あ、秘密パワーなので無属性は他人にバレないように使って下さいね。そもそも六属性が使えるだけでも十分チートなんですから。全ての属性魔法が使い放題なその上に、さらにオリジナル魔法も使えるワンダホーなスキル、それが|《七 光》《セブンスライト》なのですよー」



 親の七光り。意味も分からず我をそう呼ぶ者もいるのだろうが、七光りとは多くの恩恵という意味だ。確かに我は親父殿から多くの恩恵を受けている。


 実力が伴ってないなどという風評被害は心外だが。


 まあそのような我にとって、七光りの名を持つスキルは悪くはないとも言える。ただしこのスキルは親ではなくこの女神に与えられる物だから、神の七光りとでも言ったところか。


「まさに駆馬さんの考え通りです! そのスキルは女神ちゃんからの愛情たっぷりな恩恵の塊なんですからね。私の愛をたっぷりと感じながら使って下さい!」


 我を異世界に追放しようとしている女神がまたアホなことを言っている。



 だがともかく、人員もスキルも満足行く物が出揃った。


 残すは一つ。屋敷だけだな。


「はいはい。駆馬さんのあのシェルターめいた要塞御殿のことですね。ちゃんと一緒に異世界に送りますよー。備品もフルでつけますからね。ニコちゃんの使っている工房とコネクトームさんの本体に、ひよりちゃんが家庭菜園してた植物工場も作物ごとセットでつけちゃいます。後はメガソーラープラントとかもろもろも。やたら広い屋敷ですけど駆馬さんの所有地丸ごと転移させますから安心して旅立って下さいねー」


 これで旅立ちの準備は整った。


 我の住む屋敷は自給自足型のシェルターを目指して作られている。基本はオール電化住宅で、日の光さえあれば太陽光発電で日本と同じ生活が可能だ。


 もちろん設備は劣化するため整備が必要だが、それはニコとコネクトームがいれば問題ない。



 ともかくこれで、我ら六人は異世界へと旅立つことになる。


 我が家と親愛なる使用人達、そして地球最高の存在である我ならたとえどんな異世界でもやっていけることだろう。


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