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13 首都へ

 一旦屋敷へと戻る。モケモケの手荷物は元からほぼなかったので準備は我等の方が多い。


 だがモケモケの荷物をあえて一つあげるなら、銃を返さねばならないな。


 そして意外と早く解析を終えたニコからは二丁の銃を渡されている。


「一丁がモケモケの銃を調整し直した物で……もう一つはなんだ?」


 同じ型の銃が二丁である。マスケット銃は弾が一発しか入らぬからな。同じ銃が二丁あるだけでも有用だ。


 ただし、ニコはわざわざ同じ銃を複製するような奴じゃない。


「設計図は一緒だぞー。マスケット銃のまま性能上げるって定義も謎だしな。アイディアはいくつかあるからそれは後で見てくれー」


「確かに我の指示があいまいだったな。の割には何か作ったようだが。詳細を聞いてもいいか?」


「おう。めっちゃ頑丈なマスケット銃だー。性能は大して変わらん」


 なんか残念な物を作ったようだ。


「設計を全くいじってないからな。出来るのは素材変えるくらいだろー。だから木の部分を全部CNFに変えて、銃身もクロモリとかそれっぽいのに変えただけだー。弾と火薬もいじっていいなら性能はもっと変わるけどそっちはどうせ駄目だろうしなー」


「まあな。無煙火薬の技術などもまだ提供するかは決められん。特に弾は敵陣に打ち込むからな。敵に回収される前提で考えねばならん。まあ銃本体も奪われれば同じだが。だがCNFならそう簡単に再現はされぬな」


 CNF、セルロースナノファイバーの略である。セルロースナノファイバーは植物の繊維をナノレベルまで細かくした物だ。樹木から作れる夢の新素材である。


 その性能は素晴らしく鉄の五分の一の軽さで強度は鉄の五倍を誇る。他にも有用な面は多いのだが、今回は木の代わりに使っているな。


 CNFは元が木のため見た目は変わらず、強度は遥かに上がっている。まあ手に持つところの強度が上がった所で銃の威力は変わらぬのだが。


「どっちかっていうと銃身の方が本命だぞー。銃身の強度が上がれば連射しても命中率下がりにくくなるからなー」


 銃身の方はクロモリ、クロムモリブデン鋼だな。現在の銃に一般的に使われている素材だ。複合素材ではあるが基本は鉄。この時代の人間にはただの鋼と区別はつきにくいだろう。


 これならモケモケに渡しても問題ないな。設計をいじってないため性能も大して変わらぬ辺りが残念だが。使っても壊れにくい銃としては使えるだろう。


 ともかくモケモケに渡す荷物はオッケーだ。後は……。


「全て準備出来ております駆馬様」


 葉月の用意も整ったようだ。


 首都には葉月を連れて行く。一度首都までつけば転移出来るが移動には一週間以上かかるしな。危険なためニコやひよりは連れていけない。


 そして玄庵には先に首都へと潜ってもらう予定だ。我らはモケモケと共に馬車で向かうがマレゴンに乗れば一日で着くからな。


 こうして準備を終えた我は葉月を連れてモケモケ達の元へと戻った。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「その女性は一体なんですの?」


 フィリシェがいぶかしんで聞いてくる。


「護衛です」


「護衛……ねえ。あれだけの魔法を使う御仁に必要とは思えませんが」


「それはお互い様だろう。この国最強の魔法使いよ」


「それは皮肉でしょうかしら? でも親衛隊を連れてるわたくしがどうこういうことではなかったですわね。空竜を連れてこられるよりは遥かにマシですし。もっとも……その女性も強さは空竜にも劣らぬように感じますけど」


 フィリシェも葉月の強さは感じたようだ。我の強さは感じ取れなかったようだが。


 まあ我は魔力を抑える訓練もしてるしな。玄庵ほどではないが強さの偽装程度は完璧なのだよ。


 それを言うと葉月が実力を隠せてないわけだが、葉月は隠密担当でもないしな。こっちはこれで問題ないのだ。


「……一番怖い人ついてきた」


 モケモケも葉月を怖がってるが。


 そのモケモケには二丁の銃を渡してやった。思いの外喜んでいる。素材の違いはほとんど分かってないようだが、部品の精度が上がったこと自体を喜んでいた。


「すごい。どっちも新品以上。銃身が超真っ直ぐだし。これだけの銃を作れる職人はフリパラにも二人もいるかどうか。片方はすごく固くなってるし、こっちはどうやったら作れるかも謎すぎるくらい」


 うむ。謎は謎のままにしておこうな。作り方までは教えぬからな。


「その技術はまだ提供するとは決めてない。あくまで個人的にやるものだ。たくさん作れる物でもないしな。一品物だと思っておけ」


「もちろん。こんな精度の銃は作れる職人も限られる。わたしとしては一日でこれが出てきたことに驚いてるけど。銃持ってったあの小さい子がすごい職人なの?」


「そうだな。ともかくそれはニコにしか作れぬものだ。まあお近づきの印として貰っておけ」


「うん。ありがとう」


 実際の作業はほぼコネクトームがやってるがそこまで教える必要はないだろう。


「それで、我々は首都へ行くつもりだがモケモケも連れてって大丈夫なのか?」


 モケモケは議員の仕事でここに来ていたからな。今さらだがフィリシェに聞いてみる。


「それは問題ありませんわ。この地域の反乱はほぼ鎮圧が完了しましたもの。後は軍が上手くやってくれるでしょう。ここの将軍は実直で問題もない人ですしね。貴重な戦闘職の指揮官ですし任せて問題はないですわ。わたくしも首都に戻ろうと思っていたところですしね」


 フィリシェも軍の指揮官ではない。百騎の私兵は持ってるが軍自体は万単位で今も鎮圧戦を続けているのだ。


 ただしこの地域では将軍以上にフィリシェが軍功を上げてたそうだが。指揮系統に色々つっこみたくなるところである。


 まあともかく派遣議員が交代しようと軍は動くということだ。馬鹿な議員がつくと問題もあるそうだがこの地域の鎮圧はほぼ終了なのでそれも問題ないとのこと。


「将軍は邪魔だから議員はいらないって言ってるくらいですけどね。同情はしますけど規則ですから。まあ交代要員がつくまでの間くらいは羽を伸ばさせてあげますわ」


 フィリシェの言う規則によれば議員が勝手に帰るのも違反だがそこは気にしてないらしい。


「ふふ。そもそも派遣議員なんてわたくしのやるべきことではなくってよ。スピドール議長の言う事聞くのもおしまいですわ。それに……これから首都も面白くなるかも知れないですしね」


 フィリシェは我を見ながら不敵な笑みを浮かべていた。


 こいつはこいつで何か思惑があるようだ。我に何を期待しているのかは知らぬがな。



 こうして我らはフィリシェと彼女の私兵百騎と共に首都へと向かうことになる。思わぬ大所帯になってしまったがこの程度は許容範囲だろう。


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