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11 王族フィリシェ

「駆馬王子。軍が森へと近づいてきています。数は百。全て騎兵です」


 コネクトームからの報告があったのは我らが朝食を終え、モケモケを送り届ける準備をしている時だった。


 百騎の騎兵。ライトソード・サウザンド一発で容易に殲滅出来る数である。だがドローンの映像を見てみても彼らは正規軍のようだった。モケモケにも見せて確認をとってみる。


「これは遠くの映像を映せる魔道具だ。我等がいる森の周りを映している。それで本題だが、この軍はお前が知ってるものか?」


「うん。……これはフィリシェの親衛隊。真ん中にいる派手な人見える? 彼女がフィリシェ・オルフーレ。王族の一人で国土の五パーセントを有する国一番の大富豪」


「……敵か?」


「ううん。フィリシェは革命前から国王と対立してた。今では革命派貴族の代表になってる。ここにも派遣議員としてわたしと一緒に来たし。……多分わたしのこと探してるんだと思う」


 モケモケは革命政府の議員だからな。我は議員を攫った誘拐犯か。


 たった百騎の騎兵ごとき制圧するのは簡単だが、この国を敵に回しては本末転倒だからな。ちゃんと話し合う必要が――


「あっ、ドラゴン」


 モケモケが画面の上部を指さした。空竜である。我は空竜に人避けとして森を守って欲しいと伝えていた。


 奴はその役目を忠実に果たそうとしている。実にまずい。


「いかんな、すぐに森の出口付近まで転移だ」


「待って、わたしも」


 ひよりに神聖結界を一瞬だけ解いてもらい、我はモケモケと共に転移した。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「馬鹿な! 空竜だと!」


「ひるむな。撃て! 親衛隊の力を見せてやれ」


王室魔法(ロイヤル・マジック)を使いますわ! みんな詠唱終了まで持ちこたえないさい」


「「「はっ!」」」


「こしゃくな人間どもめ。吾輩の真の力を見せてくれ――」


「やめよガングレイユ!」


「フィリシェ待って!」


 我とモケモケが止めに入る。空竜は上空を大きく旋回し親衛隊達も銃を収めた。ちなみにガングレイユは空竜の名前だ。


 銃を収めた兵士達は我の後ろへとガングレイユが降り立つ様をあっけにとられて眺めていた。


あるじよ。吾輩は勤めを果たしたしておるぞ。こやつら雑魚ではないようだが森には一歩も踏み入れさせぬわ」


「うむ。見事な働きだガングレイユよ。だが今はちょっと待ってな。こいつら我が保護した少女の知り合いらしい」


 我はガングレイユに状況を説明する。だがそこにフィリシェが割り込んで来た。


「保護? 誘拐の間違いではないかしら。あなたが誘拐犯ですわね。兵士の一人が見てるのですわ。ペガサスに乗った美男子がモケモケちゃんを誘拐する所をね!」


 美男子と言われては仕方ない。それは正しく我のことだな。


「うむ。誘拐と言われれば反論すまい。で、だとしたらどうするつもりだ」


「モケモケちゃんを返してもらいますわ!」


「だそうだ。どうするモケモケ」


「うん。でもちょっと待って。まだ支度が最後まで終わってないから」


「えっと……あれ? それだけですの?」


「それだけも何も、モケモケを帰す準備をしていたところだしな。そういうわけで後少しだけ待っててくれるか?」


 フィリシェという女性は間の抜けた顔になっていた。顔立ちは美人であるのだがな。


 だが我がモケモケを連れて森に戻ろうとするとフィリシェは大声を張り上げた。


「待ちなさい! モケモケちゃんは今渡してもらいますわ! 誘拐犯を信用できませんもの。さあモケモケちゃん。今すぐこっちの方に来なさい」


「フィリシェはせっかちすぎる。そんなピリピリしなくても平気なのに。ほらこの人かっこいいよ。悪い人じゃない」


「モケモケちゃん! あなた顔で善悪判断してますの? そんなだから誘拐されるのですわよ! 知らない人についてっちゃ駄目っていつもわたくしが言ってたでしょう」


「子供扱いしないで欲しい」


「子供ですわよ! モケモケちゃんまだ十六歳でしょ」


「あっ」


 年を言われてモケモケが固まっていた。そういえばこいつサバ読んでたな。実年齢を暴露されて困ってるのか。


「わ……わたしはこう見えて十八歳だし」


「嘘おっしゃい!」


「とにかく、わたしはこの人と一度戻るから。話は後でじっくり聞く」


「行かせませんわ! さては誘拐犯! あなたモケモケちゃんを洗脳してますわね! どうしても連れてくつもりなら実力行使しますわよ」


 フィリシェの魔力が一気に膨れ上がる。かなり強い力を持ってるな。言っちゃなんだがガングレイユを超える。空竜以上の実力者か。


「わたくしの魔力は国王さえ凌駕しますわ。つまりわたくしこそこの国最強の魔法使いですのよ。さあ、モケモケちゃんを渡しなさい。モケモケちゃんも素直にこっち来る」


 フィリシェの魔力を感じてモケモケも態度を改めた。


「ごめん。やっぱりこのまま帰る。駆馬には申し訳ないけど荷物は後で持って来てくれると嬉しい。フィリシェは本当にこの国で一番強いから。これ以上駆馬に迷惑かけられない」


 うむ。別に今モケモケを帰しても問題ない。もともと帰す予定であったしな。


 だがこの国最強の魔法使い。そう聞くと実力を見たくなるのも道理だろう。


「フィリシェとやら。一つ我と勝負しよう。魔法の撃ち合いによる勝負だ。ちょうど我も魔法を使えるからな。それに負けたら今すぐモケモケを返してやる。我が勝っても準備が終わったら帰すしな。どうだ、悪い話ではないだろう?」


「わたくしと魔法で勝負ですって? あなた本気で言ってますの? 王室魔法(ロイヤル・マジック)を知らないわけじゃないでしょう。王族に魔法でかなうのは王族だけですのよ」


「ならこのまま戦闘に突入するか? こちらには空竜もいるのだぞ。そちらの兵には確実に犠牲が出る」


 我の言葉を聞いてフィリシェも納得した表情を見せる。


「分かりましたわ。空竜なんてものを従えている以上、あなたも相当な強者なのでしょう。でも約束は守ってもらいますわよ。こちらは相手が空竜だろうと戦える精鋭揃いなのですからね」


「もちろんだ」



 こうして我とフィリシェの一騎打ちが始まろうとしていた。この国最強の力とや、存分に拝見させてもらうとしよう。


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