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05 衛生観念

 結界内に入るとすぐに葉月達がやってきた。


 軽くモケモケのことを紹介し、我らの方も自己紹介を済ませておく。


「……結局駆馬は資本家ってことでいいの?」


「その通りだ。我のいた国ではすでに貴族は存在しない。お前達の革命がどういうものかは知らないが、我のいた国はすでに革命が達成された国とも言えるな」


「……それは素晴らしい」


 我のいた国、日本が民主主義国家と聞いてモケモケはいたく感動していた。彼女達はこの国の絶対王政を打倒して民主化することを目的にしているそうだからな。


 もっとも民主主義国家というのも全てがいいものではないのだが。


 ちなみにそんなモケモケのことをニコとひよりが物珍しそうに観察していた。コネクトームは今この場になく、玄庵の存在は極秘のため今は隠れてもらっている。


 そしてただ一人葉月だけが、モケモケを油断なく警戒していた。


「その少女、銃器を所持していますね。とりあげずともよいのですか駆馬様?」


 我はモケモケに銃を返していた。どうせ我には効かぬからな。この異世界の治安がどうかも分からぬし護身用として持たせておくべきかと思っていたが。


「確かにニコなどが撃たれると心配であるな。悪いがやはりその銃は没収させてもらうぞ」


「……分かった」


 モケモケの表情が暗くなる。


 基本的に我はモケモケを誘拐しているからな。圧倒的強者に捕らわれている状況というのを改めて意識させてしまったか。


 だがこれは仕方のないことだ。我らから見てもモケモケは異世界の住人である。まだ信頼を築く段階にはないのだ。


「この銃はそうだな……ニコが持っておくか。古風なマスケットピストルだ。興味もあるだろう」


「おおおー。マジだ。火縄銃とか初めて見るぞ。骨董品だー」


 その銃に火縄はついていないのだがな。まあ似たような物とは言える。


「なあなあ、これ分解してもいいのかー? いいよな? ちゃんと綺麗に直すし」


「……わたしは捕らわれ状態だから。拒否権がないのは分かってる」


「あう、なんだかモケモケちゃんかわいそうです」


 モケモケは我に銃を向けたので捕虜扱いで強制連行しているが、あまりひどい扱いをしているとひよりが同情してしまいそうだ。


 モケモケにはこの世界について教えてもらう必要もあるし、あくまで友好的な関係を築きたいところだ。


「モケモケよ。武器の没収は必要だからおこなっている。分解はアレだが認めてくれるとありがたい。言ってはなんだが我らは高い技術を持ってるからな。協力してくれればより高い性能にして銃を返してやってもよい」


「新しくオートマチックのピストルでもやったらどうだー?」


 ニコが話にわって入ってくる。だがその提案は許容できん。


「却下だ。この世界ではまだ一体型薬莢が開発されてないようだからな。実用的な一体型薬莢が開発されるとマシンガンの開発にまでつながる恐れがある。やるとしても時期を見てからだ」


「あー、確かにこの銃って球と火薬が別々だもんなー。球なんてただの鉄球だし。あんまり進化させすぎるのも駄目かー」


「この世界の技術で作った銃なら部品の精度も悪いだろう。その辺なら修正しても構わんぞ。あと採用するかは我が決めるがマスケット銃のまま性能を良くするアイデアがあればそれも後で聞かせてくれ」


「了解だー。こんな銃見るの初めてだしなー。分解して色々見てみるぞー」


 ニコはマスケット銃を持って嬉しそうに離れていった。研究モードに入ったな。ほっとくと二~三日工房に籠るかも知れん。時間が空いたら後で様子を見に行ってやるか。


 そしてこっちはモケモケから話を聞くのが先決だ。だが。


「こう言ってはなんだがモケモケよ。お前少し汚いな。風呂にはどれくらいの頻度で入ってる?」


 このモケモケ、顔立ちがいいのは確かである。服装も決して貧相な物ではない。だが全体的になんというか、汚れが目立っているのだ。


 これはモケモケがどうこうよりこの異世界の問題だろう。この世界の衛生観念を知る上でも風呂については聞かねばならない。


 そしてモケモケの答えた回答は、予想通りではあるが実に残念なものだった。


「……冷水浴なら一月に一回。でも手と顔は毎日洗ってるし足も週に一回は洗ってる。おまたはうんちのたびに洗ってるし。……だからフリパラではわたしは綺麗な部類に入る。でも駆馬達はあまりに清潔すぎる。人の匂いを感じないからわたしは正直驚いていた。……実は駆馬の匂いを嗅いで楽しんでいたことを告白する」


 おおむね予想通りだな。


 中世のヨーロッパでは水に恐怖心を持っていた頃さえあるという。温まって開いた毛穴から有害物質が侵入するのを恐れていたそうだ。


 また水を確保したり暖めたりするのにも手間がかかる。モケモケが冷水浴と言っているのもそういう事情があるのだろう。


 ともかくこの異世界の風呂事情が劣悪というのが分かったわけだ。街へと乗り込む前に匂いを遮断する魔法も開発する必要があるかも知れぬな。


「ちなみに最後に冷水浴をしたのはいつだ?」


「……三週間前」


 うむ。モケモケよ有罪(ギルティ)だぞ。屋敷で話を聞く前に風呂に入れてやらねばならんな。


「よしモケモケよ。お前にはまず風呂へと入ってもらう。だがお前を一人にするわけにはいかぬからな。誰かと一緒に入ってもらおう。この場だと葉月一択だが」


 ひよりではモケモケが何かした際に対処できるか不安だからな。葉月ならモケモケに後れを取るようなことはない。だが。


「その人なんか怖いからやだ。……誰かと風呂に入れというのならわたしは駆馬を希望する。そして嗅ぐ」


 我を指名されてしまった。


 葉月の戦闘能力に本能的恐怖でも感じているのだろうか。総合的には我の方が最強なのだが。



 まあ指名されては仕方がない。我自らの手でモケモケを綺麗に洗ってやるしかあるまいな。


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