04 エロ小説家(BL専門)
我はモケモケとマレゴンを連れ神聖結界の外へと転移した。
「……すごい。今の魔法。わたしはこんなの初めてみた。貴族なら魔法は使えるけどこんな魔法は見たことない。……この世界に存在する魔法とはとても思えない」
「だろうな。だから言ったであろう。我はこの世界の人間ではないとな」
やはり|《七 光》《セブンスライト》の中でも無属性魔法はこの世界の理とたがえてそうだな。これは良い情報だ。
鑑定、転移、アイテムボックス。ともに便利な能力であるがこの世界の人間が持っていればやっかいな能力とも言える。
とくに転移やアイテムボックスのような魔法がはびこっていては地球の常識が通用しなくなってしまうからな。
「……今の魔法があったら戦争も物流も大きく変わる。前触れもなく現れる敵に対処するのはまず不可能。こんなので指揮官を暗殺とかされたら防ぐ手段がない。……この魔法の凄さは筆舌に尽くしがたいものがある」
モケモケもこの魔法の危険性に気付いたようだ。
「安心せよとは言わぬがこの魔法を使えるのは世界で我だけだろう。まあその辺はお前の方が分かるのではないか? 転移やアイテムボックスを使える者がこの世界にいるなら情報は漏れているはずだからな」
「もちろんそんな話は聞いたこともない。その能力があればあなたは物流でも諜報でも信じられない働きが出来る。でもわたしはあなたの存在さえ知らなかった。それほどの力があれば世界で有名にならないはずがない。……あなたが異世界から来たという話も信ぴょう性が増してきた」
モケモケには改めてアイテムボックスも見せている。無属性魔法がこの世界に本当にないかも確認せねばならなかったからな。結果として転移もアイテムボックスもこの世界には存在しないスキルと確認出来た。
もっとも無属性魔法は他にも無数にあるのだが。
鑑定の存在もモケモケには教えてないが、他にも攻撃に使える物など無属性魔法には切り札となる物が複数存在する。
『無属性はこの異世界にはない魔法を集めた切り札ですから。特に攻撃魔法は神以外には使わないで下さいね。六つの大量絶滅魔法なんかは世界を滅亡させちゃいますから』
女神が話しかけてきた。パッシブスキル全開だな。無意味に話しかけないように釘は刺していたのだが。
『無意味になんかじゃないですよー。駆馬さんがまだ鑑定を使ってないようですから。そのモケモケちゃんを鑑定しないのかって聞きたくなっちゃったんですよー』
ここで言う鑑定は我が新たに想像した魔法のことだ。女神の知識を経由するので正確性に疑問を感じあまり使う気になれていなかったが。だが元の鑑定よりいくらかマシにはなっているのでやはり一応使っておくか。
我はモケモケを対象に鑑定の魔法を起動させた。
【モケモケ・サジュス 十六歳 女】
職能(メイン):国民公会議員
職能(サブ):エロ小説家(BL専門)、テロリスト
この鑑定は攻撃力や防御力などステータス的なものが見れるものではない。基本的には相手の職能が分かるというものだ。
ステータスについてはそもそもこの世界にはないということだしな。仮に速さが一と十の人間がいて、十の人間は一の人間の十倍速く動けるのかということだ。
この世界で人の能力にそこまでの差は出ないようだからな。我らでもまだ常人の二~三倍早く動けるだけだ。また速さ一つとっても走る速さや反応の速さなど多岐に及ぶ。
ステータスとしてそれらを数字に落とし込むこと自体にあまり意味もないということだ。
そのため我が新たに組み直した鑑定は、相手の持つ職能を見れるだけの簡易な物となっている。
相手が戦士か魔法使いか分かるだけでも対処はやりやすくなるからな。
だが……。
このモケモケ、メインの職能が国民公会議員になっている。これはただの職業じゃないかと思うのだが。エロ小説家(BL専門)もそうだな。
そしてテロリストか……というかモケモケ、テロリストなのか。
『サブ職能については深く考えない方がいいですよー。そっちはあくまで今後の可能性みたいなものですから。ちなみにこのモケモケちゃんの話で言うと、元々はエロ小説家だったみたいですね。その頃は議員の方が可能性があるサブ職能だったはずです。でもってそこから議員にチェンジ。さらにこのまま成長を続ければテロリストにも転職可能って感じですよー』
エロ小説家から議員って言うのも大概だが、そこからテロリストというのもひどい。
まあ貴族かも知れないという理由だけで我に銃を向けた少女だ。このまま行けばテロリストにもなるのだろう。この国は内戦状態のようだしな。その可能性もより高くなるというわけだ。
モケモケは容姿が優れているだけでなく洞察力も高いと思える。十六歳の若さで議員になってる点から見ても能力は十分に高いのだろう。というか二歳サバ読んでやがったなモケモケめ。
ともかくそれが時代の趨勢とはいえ、テロリストになってしまうのはもったいないとも言えるな。
『そうですよね。私ももったいないと思います! こんな可愛い子がテロリストになっちゃうなんて。この子はまたエロ小説家になるべきですよ!』
エロ小説家(BL専門)もどうかと思うが。というかこの異世界にもBL(ボーイズラブ)の概念が存在するのか。なくて良いのに。
「……? わたしの顔に何かついてる?」
モケモケが我に尋ねてきた。モケモケの職能に突っ込みどころが多すぎてまじまじと見過ぎてしまったようだ。だが丁度いい機会である。少し突っ込んでみるとするか。
「いやな。急に聞くのもなんだがモケモケよ。お前もしかして本を書いた経験はあるか? いやないならそれでよいのだが。お前は知的に見えるからな。そんな気がして気になったのだ」
我がそう尋ねると、急にモケモケの顔が明るくなった。
「……すごい。うん、確かにわたしは小説家でもある。会ったばかりで気付くとはさすが。ちなみにこれがわたしの書いた本。題名は『ファルス ~そのふくらんだもの~』。わたしの最高傑作なので是非読んでみてほしい。……でもこの小説は教会に発禁処分にされてしまった。さらにわたしまで警察に追われた。あの時革命が始まらなければわたしは歴史の闇に葬りされていたかも知れない」
「そうか……大変だったのだな」
発禁処分を受けた上に作者が警察にまで追われるエロ小説とは一体。
我はモケモケの小説(間違いなくBL本なのであろう)に底知れぬ恐怖を感じながら、神聖結界の中へと入って行った。




