表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/41

03 覚悟

「……この辺?」


「いや、もう少し右だ。うむその辺だな、綺麗に洗えよ」


 我はモケモケにうんちのついてる場所を指示してやる。


 モケモケが我から目を離さぬからな。目を離した隙に銃を取られるのを警戒しているのであろう。


 もっとも我の力をもってすればモケモケが目を離さずとも銃を取れるし弾丸も素手で掴んで消し飛ばせるのだが。


「……もううんちついてない?」


 モケモケが我に尋ねてきた。うむ、もううんちはついていないな。尻から太ももまでどこも綺麗なつるつるだ。


「素晴らしく綺麗だぞモケモケよ。それで我の素性であったな」


 正直少し困っている。我は資本家を装うつもりだったのだからな。貴族が目の敵にされているとは聞いていたが、この国は政情不安どころかもはや内戦状態なのやも知れぬ。


 この少女を倒してしまうのは簡単だが、さて一体どうしたものか。


 正直に話してしまうのが一番簡単か。圧倒的に有利な立場にいる以上嘘をつく必要もない。


 ただモケモケも今自分が有利と考えているであろう。マスケット銃ごときで我を倒せると考えているならだが。そして自分が有利と思っているなら嘘をつく必要もまたないわけだ。


 相手が有利と勘違いしている便利な状況を利用して色々聞くのも悪くはない。


「我はこの世界の人間ではない」


 我は核心から語り始めた。


「……ひどい。ここまで馬鹿にされたのは生まれて初めて。……魔法が使えるから銃程度じゃ脅しにならないの?」


「いや違うぞモケモケよ。命の危機にあるからこそ我は正直に話している。証拠としては少し弱いが、お前に渡した紙があるだろ。その紙を包む透明な包装。見たことのない素材ではないか?」


「…………」


 モケモケは真剣な顔でティッシュペーパーをにらんでいる。そう、それが我が異世界人である証拠だ。


 我は初めからこの少女に対して異世界人であることを隠すつもりがなかった。それはこの少女が不用意にも一人でいるのを発見した時に決めたことだ。


 モケモケには悪いが問題が起きても少女一人どうとでもなる。


 街や村で正体をさらすのは問題だが、正体がばれた際のデメリットを観測するためにも一人でいたモケモケは都合が良かったのだ。


「……確かに、この紙は見たことない素材につつまれてる。あなたがわたしの知らない技術を持ってるのは確か。……でも国外なら製造は可能かも知れない。そう、例えばアギルス連合王国」


 アギルス……マレゴンが森を追われた国だな。この国はアギルスに比べ発展が遅れていると言っていた。この国にない技術であってもアギルスにならあると思ってしまうか。


 うむ、少し面倒だな。やっぱりこの娘さらってしまおう。


「あ、動かないで」


 我は少女の手からマスケットピストルを奪い取った。



 モケモケは反応さえ出来なかった。これは我とモケモケの間に圧倒的な身体能力の差があったのが一番の理由だ。だがそれだけではない。


 モケモケには覚悟が足りていなかった。必死に冷静さを装ってはいたが、実は銃を持つ手がかすかに震えていたのだ。


 もし我がもっとゆっくり動いていても、銃を撃てたかどうかあやしいところである。


「……わたしが撃てないって初めから分かってた?」


 モケモケがくやしそうな目で尋ねてきた。


「正直言うとそれ以前の問題なのだがな。銃ごときで我は倒せぬ。だがモケモケよ、貴様の行動は最悪だ。人を撃つ覚悟もないくせに銃を脅しに使おうとするな。こうして相手に銃を取られたら、次は貴様が脅される番になるのだぞ」


「……分かってる」


 これは事実だ。我が本当に王党派、モケモケと敵対する相手だったらこれでモケモケはおしまいである。殺されてもおかしくないところだ。


「……全部あなたの言う通り。でもわたしは革命の闘士だから。あなたが王党派なら見逃すわけにはいかなかった。……でも親切に水をくれたあなたにわたしは銃をつきつけた。それが事実。そしてこうなった以上殺されても文句は言えない」


「ふむ。……命乞いはしないのか?」


「わたしはこれでも革命家。王党派に命乞いしてまで助かりたいとは思わない。……でも革命はまだ終わってない。わたしにはまだやるべきことが残ってる。……だから本当は死にたくない」


「なら我に命乞いをする価値はあるぞモケモケよ。そもそも我はこの世界の人間でさえないのだからな。圧倒的に有利な状況の今改めて言おう。我は王党派の貴族とやらではない」


「…………」


 モケモケは今にも泣きだしそうな顔をしていた。


 勘違いで内戦と関係ない我に銃を向け、結果自分が殺されそうになっているのだ。泣きたくなるのも当然だろう。


 だが我に銃を向けたのは事実。その事実はきちんと反省してもらわねばならん。


「……ごめんなさい。わたしはあなたを貴族と思った。……あの状況ではあなたが王党派な確率は高かったと思う。でもそんなの言い訳にもならないって分かってる。……この状況であなたが嘘をつく必要がないのも分かる。わたしは勘違いであなたに銃を向けた。……何をされても文句は言えない。でも、出来れば命は助けてほしい。わたしに出来ることなら何でもする」


「良かろう。では我についてきてもらうとするか。色々聞きたいことがあるからな。それに我の屋敷を見れば、嫌でも我が異世界の人間であることが分かるだろう」



 こうして我はモケモケを連れ一度屋敷へと戻る。


 村を見る予定は変わってしまうが情報源は大事だからな。マレゴンの情報には漏れが多かった。馬なので仕方がないことだが。



 モケモケはただの少女でもないようだし色々な話が聞けるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ