01 革命の闘士
わたしの名前はモケモケ・サジュス。フリパラ国民公会の議員をしている美少女十六歳。ただ十六歳だとさすがに議員になれないのでわたしは設定上十八歳ということになっている。ただ若く見えるだけ。これ大事。
そんなわたしは野原の真ん中でうんちしながらこの国の未来について憂いている。
わたし達の国は今滅亡の危機に瀕している。それはもう、少し前のわたしのお腹くらい。
フリパラは一昨年の暴動から始まった市民革命が実を結び、政府は貴族や聖職者ではない第三身分、つまり市民が主導している。素敵な議会制民主主義。
でもそれを良く思わない旧時代の王国達が反革命同盟を築いてしまった。
最悪なのは世界初の市民革命を経験して立憲君主制をとってるはずのアギルスがその反革命同盟を主導していること。あの国絶対許さない。
まあそんなことがあって今フリパラは周囲の六か国全てと戦争状態にあるという前代未聞の未曽有の危機に陥っている。
ぶっちゃけ今にも滅亡しそう。
でも負けない。なぜならわたし達は革命の闘士だから。
そんなわけで国民公会は三十万人動員令を制定、全国から兵士を強制徴募してこれに対抗しようとした。
でも苦難はこれで終わらない。
今度は強制徴募に反発した農民達が王国再建を目論む聖職者達にたぶらかされて各地で反乱を起こしてしまう。
ただでさえ周囲の国全てと戦争してるのにさらに内乱まで起きるとかこれもう絶対に詰んでると思う。
でも負けない。なぜならわたし達は革命の闘士だから。自由の使者だから。
王侯貴族を皆殺しにして国を市民の手に取り戻すまでわたし達は戦い続ける。
そんなわけでわたしは派遣議員として反乱の鎮圧を視察している。
ちなみに派遣議員はもう一人いて名前はフィリシェ・オルフーレ。王族なのに積極的に革命を支援している野心溢れる危険人物。もちろんわたしの皆殺しリストにも入ってる。
だけど彼女はマジで強い。王族にしか使えない王室魔法の使い手で、その威力は国王をも凌ぐとさえ言われている。
国民公会は今のところ立憲君主制を目指していて本気で王様と戦うつもりはない。
でももし王様と戦うことになった際、オルフーレ公は革命側の最終兵器になるとも言われている。
くやしいけど革命には必要なのでまだ殺せない。オルフーレ公自身はわたしのファンだと言ってくれて名前で呼び合うくらい仲良いけど。
まあそんな感じで戦闘にはオルフーレ公、フィリシェがでしゃばっているのでわたしはやることがあんまりなかったりもする。
というかぶっちゃけ疎まれてる。議員様は後方に隠れていろとか散々な言われ様だけど、わたしが若いから舐められてるんだと思う。フィリシェは二十八でおばさんだから大活躍してるのに。
そんな感じでわたしはふてくされつつ野原でうんちをしてる。
でも正直言ってすごく辛い。今日もうんちが下痢下痢してる。
これはきっと食べ物のせい。
フィリシェは王族なのをいいことに毎日いい物食べてるけど皆は日々の食事にも困ってる。栄養状態が極度に悪いからちょっとでもいい物食べるとお腹がびっくりして下痢下痢するんだと思う。
フィリシェのご飯はわたしには刺激が強すぎたのかも知れない。
でも薦められたら食べずにはいられないけど。おいしい物の誘惑に抗うのは難しい。
そんな感じでわたしは今日も苦しんでたけど、だんだんお腹もすっきりしてきた。
すごく開放された気分になる。
――自由。
大草原の中一人でうんちをしているとわたしはすごく自由を感じる。
たとえ王様や貴族にだって、わたしの草原うんちを止める権利なんてありはしない。
そうしてわたしは自由な開放感に満たされつつ空を見上げた。
……馬が飛んでる。
大丈夫。あれが何かくらいわたしは知ってる。あれはペガサス。アギルスの絶滅危惧種と思っていたけどフリパラで見られるとは思わなかった。
何かいいことあるかも知れない。
そう思っていると馬がどんどん近づいてくる。そしてわたしの目の前に降りた。
綺麗。
ペガサスは少し青みがかった白馬でとても綺麗な毛並みをしている。降りてきたのがペガサスだけなら、わたしはペガサスの美しさに見惚れていたと思う。
でもわたしが本当に綺麗と感じたのは、その上に乗る人物だった。
整った顔立ちに均整のとれた体躯。背の高い黒髪の男性はまるで古代の彫刻のように美しかった。
そんな彼がペガサスに跨っている姿はまさに白馬に乗った王子様。しかもペガサスだから羽根までついてる。素敵。
わたしは生まれて初めて一目惚れというのを経験してしまったかも知れない。
最後のゆるゆるうんちを出しきりながら、わたしはその姿に見惚れてしまった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
我はマレゴンの背に乗り近くの村へと疾駆していた。だが途中の草原で人の姿を発見する。十六歳くらいの小さな少女だ。
少女はなんだか苦しそうな顔で地面に座り込んでいた。
放っておいても良かったが人里に入る前に現地人から情報を得るのも有用だ。だから我はマレゴンに言って少女の前へと降りてもらった。
我は少女を一目見て思わず困惑してしまう。なぜなら彼女が葉月達に匹敵するほどの美少女だったからである。
正直言って地球に葉月達ほどの美少女はいなかった。彼女達三人は世界でも群を抜いていたのだ。学校一番の美少女と呼ばれるのはもちろんのこと、美少女すぎて雑誌社などが押し寄せようとするほどだったのである。
本人達が出たがらないので我が裏から手を回して取材をやめさせねばならぬほどだった。
なのにである。
異世界に来て初めて会った第一村人が葉月達に匹敵するとは。
もし彼女がこの異世界で標準的な少女だとすると、ある種の恐ろしさを感じずにはいられない。
だがそんな心配も一瞬ですぐ吹き飛んだ。
なんかくさい。
いや、くさいのは想定内だ。何せ異世界であるからな。下水すら整備されてなさそうな異世界がくさいのは始めから予想出来ていた。
少女の体も汚れていないわけではない。貧相な服装ではなかったが服には汚れが目立っていた。
だがこの臭いは違う。そういうのとはあきらかに別次元のくささを放っていた。
出所はおそらく彼女の下。
少女は長いスカートをはいており、それが彼女を中心に地面を覆い隠している。だがその中に臭いの元があるのはあきらかだった。
思わず我は少女に尋ねる。
「貴様、ここでうんこをしていたな」
「くっ」
我の言葉に少女は苦悶の表情を浮かべた。




