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08 鑑定

 玄庵の能力は凄かった。


 魔物を次々と狩っている。もちろん全く気付かれずにだ。暗殺者の能力も優秀だがやはり玄庵自身の隠密能力が凄まじい。


 だだ一つ納得出来ぬことがあると言えば、向かってくる魔物が全部必死な表情をしていることだな。


「やはり駆馬様、これでは確認にもなりませぬぞ」


 玄庵が苦言を吐いてきた。


「魔物が全て駆馬様に怯えてしまっております。これではステルスを使わずともじいの存在など彼らの目にすら入らぬでしょう」


 玄庵の言う通りであった。


 おかしい。我の魔力は十分抑えられているはずなのだが。さすがは野生動物か。野生の本能か何かで我の潜在魔力を感じ取っているのかも知れぬ。


「まあこれはこれでよいではないか。魔物が逃げるまでにはいっていないのだしな。玄庵の能力は我の目から見て確かなのだし問題となるほどではない」


 そもそも能力確認は屋敷の中でするつもりだった。我の目から見てステルスの能力は十分検証出来ているのだ。


 我の存在が強大すぎるために玄庵の隠蔽能力を実戦確認は出来ておらぬが、これはまた後日やればいい。


 そもそもこんな野生動物相手に隠れても意味はない。玄庵の隠蔽能力は人間相手に諜報活動をするためにこそあるのだからな。


 人に対して効果がなければ意味がないのだ。


 そしてそれは我の目から見て十分合格だったのだから、玄庵の能力確認は充分である。


 なのでまあ……少しは我に獲物を回してもよいのだぞ玄庵よ。


「ふぉっふぉっふぉっ」


 年甲斐もなくはしゃいでいる玄庵である。



 もっとも我の興味がすでに戦闘になく、植生調査に移っていたので玄庵はそれを邪魔せぬように配慮していた。


 そしてこの異世界の植生だが……うむ。地球と全く変わらん。


 サンプルを遺伝子検査にかけるまで詳細は分からぬが、この森の植生は一言で言うとヨーロッパ。気候で言えば地中海性気候であるな。


 動物の方は魔物としかいいようのない変な物が多いのだが。地球と同じ植物を食べてなぜこんな魔物が生まれてくるのか興味の尽きないところである。



 とまあ我はこの異世界の植生について楽しく観察していたのだが、視界の端に邪魔なポップアップが出て非常に煩わしい。


 この世界の仕様とでも言えばよいのだろうか。魔法や魔物などファンタジー要素の強い世界であるが、ステータス画面などというのは存在しない。


 魔法を使う際にも記憶を辿る要領であくまで自分の頭で処理するのだ。スキルについてもそうである。技を出すのもあくまで体を動かす要領でやるのだ。


 だから基本的には、この世界において視界に邪魔な画面が現れたりするようなことはない。


 葉月もニコもひよりも玄庵もコネクトームも、そのような物は一切表示されないと断言していた。


 のであるが……。


 実は我だけは視界の端に変な物が見えているのであった。


 うむ。これが何かは分かっている。|《七 光》《セブンスライト》最後のスキル、女神が無属性と言っていたものだ。


 だがこの無属性。どう見てもあきらかに魔法じゃない。


 ポップアップを確認して中身も見たが、色んな便利能力を詰めてみましたみたいな内容になっている。


 具体的に言うと《アイテムボックス》《鑑定》《転移魔法》などが無属性というカテゴリーで雑多に詰め込まれているのだ。


 使用方法も画面からの選択式である。


 無属性だけあきらかに他の能力と仕様が違う。


 女神は無属性のことをこの世界の人間には使えない秘密パワーだとかぬかしていたが、こことは別の異世界のスキルや能力を無理やり搭載しちゃいました感がありありだ。


 確かにこれはオリジナルだな。オリジナル感がありすぎて魔法だかスキルだか訳の分からんことになっているが。


 しかし今の問題はここではない。問題はこれらのぶっ飛びスキルの中で鑑定がずっとポップアップし続けていることだ。


 ご丁寧にも『鑑定するなら今しかない!』『魔物の生態もマルッと丸わかりになっちゃうよ!』など色んな注釈つきで使って欲しそうにアピールしているのである。


 はっきり言って嫌な予感しかしない。



「駆馬様。何か問題でありますかな?」


「うむ。実はな玄庵。我には鑑定というスキルがあるようなのだ。なぜか魔法として無属性にカテゴリーされておるが。で、その鑑定が、スキルの癖に使って欲しそうに自己主張を繰り返している。この無駄な自己主張さえなければ森の植生を見るのに使いたいスキルではあるのだが」


「それは難儀なことでありますな。ですがそう邪険にせず使われてはいかがですかな。一度使ってさえやれば、その鑑定とやらも満足するやも知れませぬし」


「うむ……」


 正しく玄庵の言う通りである。放っておいてもこのポップアップがことあるごとに出続けることは確実。使えるスキルであるのは確実だし使わない理由の方こそ全くない。


 ただし使うとうざいことになるのが容易に想像出来てしまう。


 なぜならば、天才である我にはこの《鑑定》の正体がすでに予想出来てしまっているからだ。


「だが先送りにしても問題は解決せぬ……か。致し方あるまい。奴との会話は疲れそうだが一度話さねばなるまいな」


 我は覚悟を決めて鑑定のスキルを発動させた。


『むむむむむむむむー。おっそぉーい! なぜですか? どうしてすぐ鑑定使ってくれないんですか? こんなに便利なスキルなのにー! いじわるですか? どうして駆馬さんは私にいじわるばっかりするんですかー!』


 だまれ駄女神。


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