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07 暗殺者

「さてと、能力の確認も残すは玄庵一人だな」


 次は暗殺者の能力確認だ。暗殺者は剣聖と同じくスキルを使う戦闘職である。ただし、能力的に特殊な物が多そうだが。


 まあ何にせよまずは確認だ。と思ったのだが。


「駆馬王子。問題が発生いたしました。ドローン一体の信号が途絶。野生動物による襲撃を受けたものかと思われます」


 コネクトームが報告してくる。


 動物による襲撃、これは予想の範囲内だ。


 空飛ぶ馬さえ存在する異世界だからな。空中にいるドローンを落とせる生物などごまんと存在するだろう。


「やはり空飛ぶ馬の仕業でしょうか?」


「どうであろうな。あの馬には知性のようなものも感じられた。少なくとも我らの力量を察して攻撃を仕掛けぬ程度の判断は出来たようだからな。魔力を発さぬ機械に対して倒せるから倒したという可能性も考えられるが。まあこれは直接見に行くしかあるまい」


「では外へと出るのですね。わたくしもお供いたします」


 葉月がやる気満々だ。だが我はこれを制した。


「いや、葉月はここに残っていろ。丁度玄庵の能力確認がまだだったからな。我と玄庵の二人で出る。葉月にはその間屋敷内の守護を頼む」


「ですが……」


「まさかとは思うが、我と玄庵の二人がいて不安と言うこともあるまい。それに今回はドローンを回収するだけであるしな。能力的にも剣聖より暗殺者の方が適しているであろう」


「ふぉっふぉっふぉっ。それを言うとじい一人で行くのが最善という事になりそうですがな」


「それはその通りなのだがな。だがお前が行って戻ってくるだけでは我が暗殺者の能力を見れぬ。何、我の隠密能力もそこまで低くはないだろう? 何せ小さな頃からお前が仕込んでくれたのだからな」


「ふぉっふぉっ。では駆馬様の試験も兼ねて久々に森林探索と参りましょうか」


 いよいよ異世界探索の始まりである。


 我らは一度屋敷の中へと戻り探検装備に身を固めた。


「今回はドローンを回収するだけなので本格的な装備は不要だな。しかし未知の領域というのは気分が高揚する物だ。南米に行った時を思い出すな」


「ふぉっふぉっふぉ。アマゾンでは色々と大変でしたな。駆馬様とワニとの対決は中々見ごたえがありましたが」


「ふふっ、葉月などはあの時は気が気じゃなかったようだがな」


「当然でございます。もちろん駆馬様がワニごときにおくれを取ることなどありえませんが、主をそのような状況において平気な家臣などおりませぬ。今回とて未知の場所に駆馬様を行かせるなど」


 葉月は心配そうな顔をしているな。


 我が最強であることは葉月も当然熟知している。だがここは異世界。何が起きても不思議じゃない。


 だがだからこそ、探索メンバーは我と玄庵なのだ。


 葉月だと我らの危険を排除するために道行く魔物を全滅させてしまいそうであるからな。


「まあ今回は我と玄庵に任せよ。我ら二人で生還出来なかった戦場はないのだ。そしてその間屋敷の守りが薄くなることも事実。我らの留守を守るのも大事な役目であるのだからな」


「はい、承知いたしております」


 屋敷には神聖結界が張られているためまず危険はない。だがもしもの時に備えて葉月がいるのは大きな安心となる。



 そうして我と玄庵は森林探索用の装備を整え、屋敷の周りを覆っている神聖結界の外に出た。


「暗殺者の能力は使用者のみに作用するものが多いようです駆馬様。いちおうじいはステルスという気配遮断のスキルを使ってみようかと思いますが」


「うむ。やってみよ。我も可能な限り気配を消すが、スキルとの差異も検証出来よう」


 我は体から溢れ出る魔力を極限まで押さえ込んだ。


 気配を消す方法は幼少時より玄庵に仕込んでもらっている。もっとも我が師となる玄庵の方が気配を消す技能も上ではあるのだがな。


 正直ステルスなどというスキルに頼らずとも玄庵は生粋の暗殺者と呼べるのだ。


 だが玄庵がスキルを発動させてすぐ、我はその能力に驚きを隠すことが出来なかった。


「ステルスか……思ったよりすごいようだぞそのスキル。目の前にいて視覚ではちゃんとじいの姿は見えている。だが存在感のようなものが希薄だ。気を緩めると目の前にいても姿を見失ってしまいそうだ」


 体が半透明になっているとでも言えばいいのか。実際にそんなことはないのだが、印象としては正にそんな感じだ。


 玄庵の気配が限りなく薄い。


 相手が素人であれば今の玄庵は正面から近づいても相手に気取られぬことが可能やもしれぬ。


「確かにこれは使えそうですな。そして僭越せんえつながら、駆馬様は気配を遮断出来ていないようでありますぞ。駆馬様はあまりにも魔力が膨大すぎるようでございます」


 うむ。知っていた。


 我は魔力を極限まで押さえ込んでいる。漏れる魔力を一万分の一くらいには出来ているはずだ。だがそれでもまだ多いのである。ぶっちゃけ空飛ぶ馬を初めて見た時に感じた魔力より多い。


 もちろんあの馬の方も魔力を抑えていたであろうが。


 我は気配を消す訓練はしていても魔力を抑える訓練はしたことがなかったからな。こちらも訓練が必要そうだ。場合によっては魔力遮断の新呪文を開発する必要があるやも知れぬ。


 だがまあ、今回はこれでよいだろう。


「このまま進むぞ玄庵。何、これだけ魔力を抑えていれば魔物が逃げるほどではあるまい。むしろ丁度良く近づいてくれるはずだ」


「承知しましたぞ駆馬様。ではこのじいは駆馬様に近づく魔物を気取られぬように狩ってみましょう」



 こうして我と玄庵は原生林の中を突き進んでいく。


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