エピローグ
マフラーを盗まれてから、一週間が経った。
いつもどおりの朝、学校に向けて歩いていた。
「大丈夫?」
隣で一緒に歩いている美雪が声をかけてきた。
「大丈夫だよ。わたしこそ、ごめんね。美雪を疑ったりして」
「いいんだよ。そんなことより、あのマフラーどうするの」
マフラーは今、わたしの家に保管してある。
「分かんない。だけど、わたしなりにどうするか決めるよ」
「そっか。それで洋太には……」
「それも自分で決める」
「そうだよね。いくら両思いでも盗まれちゃったらね……」
洋太とは、あの日以来話していない。
とても気まずくて、近寄ることもできなかった。
「寒いね」
美雪がそっと言った。
「だね」
わたしは冬の空を見上げた。
とても清々すがすがしい青空だ。
「春香!」
振り返ると、洋太がいた。
びっくりして、その場で固まってしまった。
洋太がわたしに駆け寄ってくると、カバンから何かを取り出した。
マフラーだ。編み目はグチャグチャだが。
「受け取ってくれ……」
わたしは洋太が作ったであろうマフラーを受け取った。
そして、彼はわたしたちを追い抜いて走り去る……。
「どうやら、彼はまだ諦めていないみたいだね」
美雪がいたずらっぽく笑う。
「……早く行かないと、また遅刻しちゃうよ」
「あ、そうだった!春香、走ろ」
「うん」
わたしはそのマフラーを首に巻くと、美雪と一緒に走り出した。




