泡と消えても…第二話
小夜は二日もすると起き上がりタエの手伝いをするようになった。
小夜は朝日の昇る前に家を出る源三の朝飯をつくり
小舟を漕いで沖に出ていく源三の姿をずっと見守っていた。
源三の姿が見えなくなるとタエと一緒に昆布やワカメ等の海藻や貝等を取りに行く。
そんな小夜にタエは疑問を持った。
『小夜や…もしや…
海が怖いのかい?』
小さく頷く小夜を見てタエは
『浜辺に打ち上げられていたんだから船で難破でもしたのかねぇ?
波打ち際なら溺れる事も無いから安心しなさい。』
小夜は小さく微笑み頷いた。
その頃源三は
何時もの漁場で漁をしていた。
海の上での漁は危険が伴う。
荒れ狂う時等
命を落とすのでは無いかて思うほどだ
今日の様に凪いだ日には
気分良く漁が出来る。
中々の大漁だ
小夜へ幾ばくかの魚を食べさせる事が出来ると早めに切り上げ浜に帰っていった。
鯵を数ひき
ぶら下げて帰ると小夜は表に出て待っていた。
鯵を手渡すと
ニッコリと笑い支度に取りかかった。
今日の晩飯はアサリの潮汁と鯵の塩焼き
三人で一緒に食べる。
小夜は幸せのあまり涙を流した。
コトリ…
と音を立てて落ちた。
涙は真珠に変わっていた。
小夜は慌てて真珠を拾い
掌に隠した。
自分の流した真珠の涙が
高価でその高価さ故に人は争い傷つけ合う事も知っていた。
源三親子をそんな事に巻き込みたくない
小夜は掌の真珠を握りしめた。
食事を終え後片付けも済ませ小夜は家の外へ出た。
今日も月が美しい
浜辺を海風がそよぐ
そよぐ風が小夜の頬をなぶる
その風に乗り小さな声が聞こえて来た。
『姫…お久しゅうございます。』
声の主は海の中から話し掛けてくる。
『お痛わしきお姿におなりで…』
小夜は声の主をじっと見詰めていた。
『姫は声を無くされたのですね…
失念しておりました。
お体の方は大丈夫ですね
安心しました。
それでは…今日はこれで帰ります。
くれぐれもお体にはお気をつけて下さい』
声の主は海に潜っていった。
夜が明ける前に
朝食を作り源三を送り出す。
何時もの様に源三の姿が見えなくなるまで小夜は見送った。
くれぐれもお体にはお気をつけて下さい』
声の主は海に潜っていった。
夜が明ける前に
朝食を作り源三を送り出す。
何時もの様に源三の姿が見えなくなるまで小夜は見送った。