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7/14

ダン、再び。

前回、前々回が長めだったので、今回は短く感じるかもです。

最低3000字は入れるようにしています。

村まで帰ってくると入り口でシュリが待っていた。


「遅かったわね。あれ?ダンは?」

「さっき起きたよ。しばらく一人にしてほしいって。」

「ふーん。ま、そりゃそうなるか。」


村では宴がもう始まっていた。

主役達を差し置いて宴が始まるなんてと思ったら、これは海の恵みに感謝する宴らしい。

なんか恥ずかしい。

宴の最中に村長に呼ばれる。


「カイト君、シュリちゃん。後一人はどこに行ったんじゃ。まあよい、今日は村人を救ってくれて助かった。本人は大事をとって休んでいるから、本人に代わって儂から礼を言う、ありがとう。」

「いいえ、当然のことをしたまでです。」

「ええ、お気になさらず。」

「あの魔物から取れた物じゃからお礼と言ってはちと難があるが、これで勘弁してほしい。」


村長の指示で運ばれてきたのは波々模様のついた角だった。

今朝倒したアシカに生えてたやつだ。

あとで収納しておこう。


その後も宴は滞りなく執り行われた。

僕達は未成年なので酔っぱらいに絡まれる前に退散する。


「これからどうする?」

「私はザンクトラノリアに帰る用事があるし、カイトを家まで送る義務があると考えてる。」

「え、ああ、うん。そうだね。」


やりにくいなー。


「それで帰る方法なんだけど…。」


シュリが言うにはこのラザンの村(大陸の北西端)から見て、ザンクトラノリア国は真東からやや南より、つまり東南東の方角にあるらしい。

だからと言ってその方角に真っ直ぐ進めばいいというわけではなく、村から南東に広がる山脈を左回りに迂回しないといけないらしい。

なんでも、その山脈はザンクティンゼル大陸の北端から西部方面にかけて広がってるらしく、その山脈と海の境目ギリギリの処にラザンの村はあるそうな。

その山脈の北端は断崖絶壁になっていて龍が棲むと言われているそうな。

とてもじゃないけど、行けないらしい。

だからだから、平地続きになっている山脈の西側を迂回してザンクトラノリア国に向かうんだって。

なんてこった。


「てことだから、ここから山脈に沿って南西にすすむことになるわね!」


ちなみに、そのまま進むと山脈が途切れる辺りで港町に着くそうです。


「徒歩で1ヶ月以上はかかるからね。」


ふーん。

……………………。

ええええええええぇぇ!!!

遠い遠い遠い遠い。

遠いよ!


「こ、ここってだいぶ秘境だったんだね。」

「そうよ。ラザンの民の村だからね。」


あれ?

シュリは知ってたのか。

シュリからも話を聞いてみよう。


「ラザンの民って?」

「その並外れた戦闘能力で大昔に大陸を統一した種族よ。統一しても争いが絶えなくて嘆いた神が彼らの力を封印したんだって。今はジャングルの秘境でひっそり暮らしているとかなんとか。本当にいたんだね。」

「あの時のダンは力が解放されたってことでいいのかな?なんで解放されちゃったんだろう?」

「たぶんそうね。聖女の従者として封印された状態は良くなかったんじゃないの?知らないけど。」


知らないのかよ!


「そういえばなんでシュリはあのダンを止めることが出来たの?」

「聖女の力は争いを鎮める力らしいわ。一人で暴れてる子どもを止めれない訳がないんじゃない。知らないけど。」


そればっかりか!


「わーっ!」

「きゃーーーっ!」

「何っ!?」

「広場からだ!」


遠くから悲鳴が聞こえた。

方向的に広場の方だと思う。

急いで駆け出した。

右手から剣を出して装備しておく。


広場は悲惨なことになっていた。

酒を始めとする飲み物が溢れて水浸しだったり、燃え盛る墨が撒き散らされていたり。

後片付けが大変そうだ。

その広場の真ん中で苦しむ者がいた。


「ダン…だよね?」

「オ…オレ……ハ…。」


頭を抱えてブツブツ言うのは正しくダンだった。

しかし、明らかに様子がおかしい。

それに声もなんだか低くてダンじゃないみたいだ。


「カ、カイトォ…っ!!」

「どうしたんだ。ダン。」

「オ…マエノ、セイダァァアァアアッ!!!」


そう言って襲いかかってきたダンの頭には角が生えていた。

それもみるみるうちに成長し存在感を主張する。

あれ?

牙とか生えてきてない?


さっきの暴走とは一味違う。

動きが速い。

避けるので精一杯だ。

くそう。


「『…。…。鎮魂歌(レクイエム)』!!ダメ、効きが悪いわ!」


さっきから詠唱してたシュリがレクイエムを発動した。

暴走を止めた時程の劇的な効果は見られなかったけど、動きがだいぶ鈍くなった。

ナイスだ、シュリ。


「おりゃ!」


剣で切りかかる。

切った皮膚には傷1つ付いていなかった。

暗くて分かりにくいが皮膚が赤く変質しているらしい。

まるで赤鬼だな。


刃物が聞かないとなるとどうしようか。

剣を手袋に収納しながら考える。

他の武器といえばダンが手に入れた弓くらいしかない。

でも使いなれてないし接近戦だからやめておこう。

後は左手の賢者の手袋かな。


ダンに向けて手を翳す。

火の玉をイメージすると本当に出た。

やばい。

感動。

ダンはというと、まさか僕が魔法を使うと思っていなかったのか見事に喰らっていた。


「フーッ、フーッ。」


怒っている。

プスプスと煙を出しながら。

その後はファイアボールは当たらなくなった。

あ、今名付けました。


他の魔法に切り替えることにする。

ダンの不意をつけそうなのは土魔法かな?

次は地面から出てくる土の杭をイメージする。

…あれ?

失敗。

ダンの攻撃を避けながら考えた結果、地面に触れるとちゃんと発動した。

よし、ストーンアッパーと名付けよう。


「…。」


怒っている。

怒り狂って声も出ないか。

でも、明らかに疲れが見えてきた。


「こんな不毛な争いは止めない?」

「…。」


聞こえているのか聞こえていないのか、変わらず殴り掛かってくる。


「僕達は友達じゃなかったのか?」

「…。」


友達という言葉にダンが反応した。

少し殴る動きが鈍ったが、また怒涛の猛攻だ。

もう素手で受け止められそうな程に遅いけど。


「オレ…ハ、カイブ、ツ…。」


パシッ。


殴り掛かってくる右手を受けとめる。

そして左手で腹に1発重いのをくれてやった。

そして力なく倒れるダンを受けとめる。


「お前は怪物なんかじゃない。そんなこと言うやつは僕が叩きのめす。僕はいつまでもダンの友達だ。」


強く抱き締めて言ってやった。

僕、小説の主人公みたいだ。


「…マタ……メイワク、カケ……。」

「迷惑じゃない。また僕とシュリが止めてみせる。このすごい力をダンが使いこなせるようになるまで、何度でも止めてみせる。だから安心して。もう止めようよ。」


広場に沈黙が流れる。

パチパチと火の粉を飛ばす炭の音だけが耳につく。


「…………アリ、がと…う…。」


ダンの声が元に戻った。

抱きしめるのに邪魔だった角が顔の前でどんどん縮んでいく。

どういう作りになっているのかしら。

全身に広がっていた赤い皮膚も胸の辺りに収束していき、最後には消えた。

心配そうに遠くから見ていたシュリが近寄ってくる。


「よかった。どうなることかと思ったわ。」


私もまだまだ力不足ね!と言いながらシュリは広場の後片付けを始めた。

この眠りこけているダンを僕はどうしたらいいんだろう。

とりあえず、ストーンアッパーによって出てしまった杭を左手でポンポンと直しておいた。







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