表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/14

カイト、探険する

その夜、僕の部屋にシュリが来ていた。


「あの、今までごめんなさい。」


今更そんなことを言う。


「いいよ。それよりシュリは早く元気になることだね!」

「わかってるわよ!」

「そういえばそのしゃべり方どうしたの?」

「え?」

「前なら分かってます!って言いそうなのに。」

「あ、ああ、そうね。こっちの方が楽だから。」

「ふーん。」

「何よ!」

「気を許して貰えたってことでいいのかな?」

「う、うるさいわね!いいじゃない!私がどんな喋り方だろうとあなたに関係無いでしょ!」


すぐこんなふうに癇癪を起こす。


「あ…ごめん。」

「いいよ。もう慣れたから。」

「あ、あの、その、あの時は嬉しかったよ。」

「あの時?」

「もう!鈍いわね!怒ってくれたときよ!じゃーね!おやすみなさい!」


怒った時?

え。

ああ。

あわわわわわ。

あの僕が抱き締めちゃった時のことか。

覚えてたのか。

恥ずかしいな、もう。

あんな言い方されたら意識しちゃうじゃないか。

もう。


顔を真っ赤に染めるカイトであった。




次の日の早朝。


「カイトー!」


扉の向こうからダンの声がする。

今何時だと思ってるんだ?

まだ外は薄暗い。


「どしたの?ダン。」

「ちょっと付き合ってくれ。秘密の特訓なんだ。」


ん?

ダンの手には弓と矢が握られていた。

そう言うことね。

早朝の狩りの前に弓の練習をするらしい。

秘密の特訓だから内容は割愛する。





それからまた数日経ちました。

そんなある日の狩りのこと。


「なあ、カイト。なんでお前そんなに簡単に登れるんだ?」


今日の狩りでも木の上でダンと木の実を取る。

ダンに言われた通り、自分でも信じられないくらい簡単に木に登れるのだ。


「俺でも2年はかかったぞ?この木登るの難しいんだぜ?」


村の子供達の遊び道具は主に木だ。

だから普通の木なら5才の子でも登れる。

でもこのヤシの木もどきは違う。

手を掛ける所がないツルッとした木肌だから己の握力を以て登るしかないのだ。

だからこの木に登れるようになることが一人前の大人と見られる試練の1つらしい。


「僕もよく分からない。なんだか体が軽いんだ。」

「カイト。お前いったい何者だ?」


そう言ってダンは笑う。


「おーい!お前ら本当に木の上好きだなー。」


いっけね!

早く降りよう。






「よし!ダン。やってみろ!」

「え!いいのか?」

「ああ、秘密の特訓の成果を見せてみろ!」

「おう!」


ないわー。

秘密の特訓、大人達にバレてるじゃんよ。

しかもそれに気づかないダン。

ないわー。

とにかく、大人達の狩りにダンも挑戦させてもらえるみたいだ。

今回の獲物は珍しい鳥だ。

あんなのいたんだな。

一週間くらい村でお世話になってるけど初めて見た。


「あっ!?くそ!」

「惜しいな。」


ダンの放った矢は見事に鳥がいた所を通過した。

それよりも前に鳥が逃げてしまったのだ。

残念。

久しぶりの鳥肉にありつけると思ったのに。

がっでむ。


「あの鳥は難しいんだ。もっと特訓だな、ダン。」

「くそう。」


そうやってダンのことを慰めていた大人が次は僕を見る。


「カイト!やってみるか?」

「ええ!カイトにはまだ早いって!」

「ものは試しだ。」

「ちぇっ。」


何故か僕がやることになってしまった。


そうして見つけたのは何時ものうさぎだった。

まだこちらには気づいていない。

風は無い。

距離およそ10メートル。

よし、こんなもんかな。


シュト


僕の放った矢は吸い込まれる様にうさぎに命中した。


「やった!」

「俺ヘコむ。」

「ダン、元気だして。」

「カイトに言われると余計ヘコむ。」


そんな感じで本日の狩も終了した。





村に戻ってくるといつものように皆で収穫を山分けする。

昨日までと違うのはこのうさぎが僕が自分で手に入れたうさぎであるということだ。


「くそう。明日の特訓には連れてってやんねーからな!」

「ええ!?そんなに根に持つなよー。」

「うるせー。先に行ってるからな!」

「おう!」


最近はダンの家で3人でご飯を食べるようになった。

シュリを呼びに一旦村長さんの家に帰るのも日課になりつつある。


「シュリー!ただいまー!」

「………。」


返事は無い。

まさか屍になってるなんてことはないだろう。


「シュリー!」

「カイト君かい?シュリちゃんならさっき出掛けたようじゃよ。」

「え?そうなんですか?」


何度も叫んでいると、村長さんが部屋から出てきてしまった。

お騒がせしてすみません。

シュリったら。

書き置きくらいしてくれてもいいのに。


ダンの家に行くと、案の定シュリは先に来ていた。


「やっぱり先に来てたのかー。」

「ほらー!カイト探してただろ。」

「なによ!お腹がすいたんだから仕方ないでしょ!」


シュリは元気になった。

よくプンスコ怒っている。

元気になった証拠だと思う。


食後に3人で話し合う。


「今日この後は何するの?」

「シュリが元気になったんなら狩にでも行く?」

「また狩りに行くのか?」

「じゃあ皆で秘密の特訓?」

「カイト!お前は特訓禁止だ!」

「えーまだ根にもってるのかよ。」

「私狩りにいってみたい!」



てなわけで、狩りに来ました。

狩りは早朝にしかしない。

だから大人達に見つからないようにこっそり村から出てきた。

よく考えたら秘密の特訓とあまり変わらないような気がする。


「おい、女。そんな格好だと動きにくいだろう。」

「シュリって名前で呼びなさいよ!」


シュリは何故か聖職者の格好でやって来た。

この方が気合いが入るんだとか。

そのせいで目立つから、村を出るのに苦労したのは言わなくても分かるだろう。


「見つけたぞ!うさぎだ。」

「私に任せて!えい!」


シュリが杖を掲げてなんかした。

するとうさぎがパタリと倒れた。

いったい何をしたんだ。


「よし!成功ー。」


たたたっと重そうな服を揺らしながらシュリがうさぎを拾いに行く。

シュリが持ってきたうさぎは眠りこけていた。

なるほど眠らせたのか。

魔法を使うなんてずるい。


「俺、本格的にヘコんできた。」

「元気出して。ダン。」

「ねえ、カイト。あれは何?」


シュリが指差した方向を見ると祠?みたいなものがあった。

何あれ?


「あれは山神様を祀る祠だ。海の方にも海神様を祀る祠があるんだぜ。」


祠で合ってたっぽい。

祠の隣には何か歴史がありそうな石板が横たわっている。


「これ古代語だわ。」

「シュリわかるの?」

「頑張ったら読めるかも。」

「それは是非、頑張ってほしい。」

「そんなもんに興味あんのか?」


だってなんだかわくわくしない?

だって異世界だよ?

あれ、いつの間にか異世界のこと受け入れてるな。

まああれだけ魔法を見たら受け入れざるをえないか。


「うーんとね、『遥かなる峰の頂きより、見下ろしたるは山神なり。古の勇ましき者、彼の墓標を刻まんとす。彼の勇姿を得し者、此に顕れん。』だって。よくわかんないわね。」


ゴゴゴゴゴ


地面が揺れだした。

何だ何だ。

あ。

石板がずれて地下への階段が現れた。

おおお。

何やらイベントの予感。

これはこれは胸がときめきますな。


それよりも石板を読んだだけで地下への道が開かれるのか?

どういうしくみで?

どうやって音声を認識しているんだ?


まあいいか、ここ異世界だし。

いやあ、それにしてもわくわくしますな。

でゅふふふ。


「ねえ、ダン。なんだかさっきからカイトが気持ち悪いんだけど?」

「ん?いつもじゃねーか?」


なんだ君たちは、失礼だな。


「行ってみようぜ!」

「そうね!なんだか楽しそう!」

「行こう行こう、是非とも行こう。」

「なんだ?カイト。ホントにきもいな。」

「あぁん?」

「お、俺が悪かった。」


分かればよろしい。




後半カイトがふざけすぎました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ