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到着!

やっと到着できました。

こんなかかるはずじゃなかった。

どうしてこうなった。

目玉焼き…あ、間違った。

目玉野郎が現れてから10日が経った。

ラザンの村を出てからだと30日とちょっとだ。

そろそろ隣町が見えてきてもいいんじゃないだろうか。


「なんかムズムズしてきた。」


〈はぁ…暴れたい時期がわいにもあったんや。〉


「あぁあっ!んー…いくぜ!ひゃっほう!!」


なんかダンは分かったらしい。

自分で戦闘モードになったり、それを解除したり出来るようになったみたいだ。

でもきっとすぐに疲れて帰ってくる。

暇だし、シュリに聞きたかったことを聞いてみることにしよう。


「ねぇ、シュリ?」

「何?」

「あいつって海の向こうから来たって言ってたよな?」

「あぁ、亜人族のことね。」

「そう。あいつは何が目的で来たの?」

「うーん、そうね。」


シュリは少し考えてこう答えた。


「ヒトそのものである人族と裏切った人族、そのどちらもを根絶やしにしたいみたい。」

「なんでそんな自分勝手なことが出来るんだろうね。そもそもなんで僕らは恨まれてるの?」

「過去に何かがあったみたいよ。」

「本人に聞くのが早いかな?」

「駄目だったわ。私も試したの。」

「ちょっとぶちのめしたら、話してくれそうじゃない?オオカミって強者に従うイメージだ。」

「そんな単純じゃないと思うけど…、カイトならなんだかできそうね。ふふ。」


シュリは想像してみたらしい。

隣から小さな笑い声が聞こえた。


〈何回言ったら分かるんや!力がだだ漏れやーゆうてんねん!〉


「うるせーなー!気持ちいいからそんなこと考えてられねえよ!」


今回は少し長めだったな。

ダンが言ったように、戦闘モードは爽快らしい。

ある種の中毒だよね。

ムズムズするとか禁断症状だよね。

ないわー。

本人がいいならいいけどさ。


「本当、バカは元気ねー。」

「バカじゃねえよ!あっ!こら!飛ぶな!」

「ふふふ。どんなにすごい攻撃もあたらなければ屁でもないわ!」


最近、シュリが非行…げふんげふん、飛行少女になってしまった。

杖に乗って移動するのだ。

念動力の応用らしい。

制御が難しくて練習には持ってこいなんだとか言ってたけど、とっさにダンのタックルを避けるとは…。

かなり上達してると見た。





「余裕だな。」

「余裕ね。」


はい、討伐ご苦労様です。

魔物の体内で生成される魔石はダンかシュリが解体で取り出してくれる。

こうして手に入れる魔石はどれも綺麗な透明だ。

山の試練で合った恐竜骨格標本の魔物から取れたような黒ずんだやつはまだ今のところ出てきていない。

たぶん喋れる程の魔物だと黒くなるんじゃないかな?

ほら、あの恐竜喋ってたし。


それはそうと魔物化してないうさぎとかトラとか解体の済んでない獣がまだたくさん手袋に残っている。

おちついたらまた解体して貰わないと。





ラザンの村を出発した頃から段々と植物の種類が変わってきていた。

南国だった気候も今じゃ風が吹くと涼しいくらいだ。

それにココの木もいつからか見なくなった。

考え事をしていたらシュリが話し出した。


「最初の頃に比べたらジャングルっぽくなくなってきたわよね。」

「そうだな。最近はカイトが頭をぶつけない。」


下でも会話している。

確かにラザンの村付近の頃と比べて結構見晴らしが良くなった。

お、あんなところに小川が見える。


「小さいけど川が見えた。」

「やっとね!それをこえたら町はもうすぐよ!」

「ちょっと待て、何かいるみたいだぜ。」


何かいるらしい。

僕からは見えないけど、ダンの野生の感はよく当たる。

シュリの感は聖女の力だからか魔物しか分からないらしい。

そして僕は何もわからん。

くそう。

藪からこっそり観察する。


「何かしら?トラじゃなさそうね。」

「俺は初めて見る。」


川の向こう岸に居たのは狼だった。


【フォレストウルフ】

大陸全土に広く分布するウルフの上位種。ウルフ同様、群れを成し連携するので注意。


おおお。

定番のオオカミさんですな。


「なんだかキツネっぽいわ。」

「この辺のオオカミなんじゃない?」

「言われてみればウルフそっくりね。なら連携してくるかも。」


白々しくオオカミだと言っておく。

三匹のオオカミさん達は仲よく水分補給をしているようだ。

次は仲よくあの世に行ってもらうとしよう。

僕が左手を構えたときには空中にオオカミの串刺しが並んでいた。

僕の出番は無いようだ。

ここらへんの獣は弱いんだろうか?

そんなこと無いと思うんですけど。


「三連射出とはやるわね。」

「それほどでもねえよ。女こそ三匹同時に…」

「シュリ様とお呼び!」

「効かん。」

「くっ。」


仲いいね。

僕も仲間に入れてください。

あ、目ん玉野郎と目が合った。

が、無視してオオカミさん達を回収する。


「さっきと同じ気配がうようよいるな。」

「小川を境に害獣の分布が変わるのかしら?」

「ん、ちょっと先に行ってるな。」


小川で小休憩。

ダン曰くここらへんはオオカミだらけらしい。

確認のためか、ダンが出動するみたいだ。


シュリの記憶では川を越えたらもうヒトの領域らしい。

それなら魔物の分布が変化していても可笑しくはないかな?


後片付けをしてシュリと進む。

時にはギャンッという獣の鳴き声が遠くから聴こえた。


十数分後、戦闘モードになったダンがやってきた。

制御がうまくなったな。

皮膚が赤くて角は生えて少し大きくなってるけど、変なテンションになることは無くなった。

そのダンの肩に10匹程のフォレストウルフが担がれている。


「やっぱりコイツらばっかだな。なんか変なのもいたけど。」


別に驚かない。

今までよくあった光景だ。

それを収納するのは僕なわけで、手袋収納は圧迫されてきている。

僕のレベルが上がるよりも、得られる死体が多すぎるのだ。

手袋収納はレベルによって容量がふえるからね。


ダンが持ってきたオオカミ達の中に変なのが一匹混じっていた。

もう死んでるけど。


【クレイジーウルフ】

何かしらの影響で狂ったフォレストウルフ。災いを撒き散らすと言われている。


「魔物ね。」

「うん、そうみたい。」


目がいっちゃってるし、涎が口回りにこべりついている。

なんだか食べると具合が悪くなりそうだ。

魔石だけ貰って土に還って貰おうかな。


「これは食べたくないよね。ダン、魔石だけ頼む。」

「はいよ。」


元に戻ったダンに頼むことにした。

この旅でダンの解体技術は格段に上昇した。

迷いがない。


「ん。」


差し出された魔石を洗い流す。

汚れたダンもついでに洗う。

ちょっと冷たそうだ。

今度からはお湯をだしてやろうかな。

後はこのクレイジーを焼いておく。


「は~寒っ!」


やっぱりダンには寒かったみたいだ。

僕とシュリにとっては過ごしやすい気候なんだけどな。


「あ、そういえばさっき人間に会っちまった。」

「ってことは町が近いのね!やった!」

「そんなことより鬼モードを見られちまった。」


ダンは鬼モードって呼んでるのか…。

それより見た人間の対応が気になるな。

鬼なんて普段いるもんなんだろうか?

ていうか僕が勝手に思ってるだけで鬼は亜人に含まれるとしたら討伐依頼が出されてても可笑しくないよな?

とりあえず村に行こう。

ダンは落ち込んでいる。

過剰な反応でもされたんだろうか?


「見て!町だわ!」

「本当だ!!」


ジャングルの切れ間。

広がる草原の向こうに壁で囲まれた町が見える。

そこにたどり着くまでに黒い点がいくつか見える。

魔物かな?

獣かな?

戦うことになりそうだ。


「今回は僕がやるよ!」

「ん、じゃあ任せた。」


駆け出してすぐに一番近い個体にウィンドカッターを放つ。

最近使うようになった定番の魔法だ。

火だと燃え広がっちゃうからね。


キャウンッ


予想外に効果覿面(こうかてきめん)だった。

ソイツの声を聞いたのか他のオオカミ達が寄ってくる。

集まってくれれば纏めて倒しやすい。

あれ、思ったより多くない?

走っているうちに、後ろには20匹ぐらいの群れが出来ていた。

町の近くにこんなにオオカミがいていいのか?


「おい!何してるんだ!死ぬ気か!」


ん?

どこかから誰かの声がする。

町を囲む壁は丸太を何本も並べて作ったみたいだった。


「上だ!上!そんなにウルフを集めてどうする気だったんだ!命知らずが!」


上を見上げると体格のいい男がこちらを見下ろしている。

壁の中に立つ櫓から声をかけてきたようだ。


「木に登れ!そいつらは木に登れない!」

「その必要は無いよ。」

「おい!立ち止まるな!死にたいのか!」


振り替えるとオオカミ達が近づいてくるのが見えた。

左手を地について唱えた。


「大地の精霊よ!我が手に集い、力となれ!剣山(ストーンジャベリン)!」


ふっ。

決まったっ!

地面から無数の土槍が生えてオオカミ達を屠っていく。

よく見たらオオカミ達はフォレストウルフじゃなかった。


【ウルフ】

大陸全土に広く分布する小型の肉食獣。群れを成し連携してくるので注意。


フォレストウルフはウルフの上位種ってことだからフォレストウルフよりも弱いんだね。

ちょっと過剰戦力だったかも。


「お、お前はいったい…。」


上で見張りの人が呟いている。

遠くからダンの声が近づいてきた。


「カイトー忘れ物ー。」


ウルフの死体を掲げている。

頭が無いけど、どうしたのそれ?


「最初に風で殺ってたやつじゃないのか?落ちてたぞ。」

「ちょっと何!?この惨状。こんな倒しかたしちゃって。これ元に戻すの大変よ?」


〈これ何本出したんや?これこそウルフの串刺しや、かわいそうに。南無南無。〉


あー。

やってしまった。

目玉野郎め、お前が全て悪い。





土槍を地面に引っ込めていく。

その間にシュリは町の入り口に先に行ってしまった。

ダンは刺さったウルフを引き抜いては持ってきてくれる。


「なあカイト。お前あんなに足速かったっけ?」

「え?」

「いや、恥ずかしい話、すぐ見えなくなっちまったんだよ。ウルフ共が集まっていったのについていってやっとカイトを見つけたんだ。こんな魔法も使えるし、カイトって何者なんだ?」


た、確かに思ったより早く町まで来てしまった気がするけど、そんなに速いかな?


「えーと、この魔法はこの手袋のおかげだけど…。そんなに足速い?」

「ああ。それにその手袋のおかげで魔法が使えるにしてもだぜ?マナだっけ?それはどっから来てるんだよ?普通はあんな魔法使ったらすぐスッカラカンになっちまうはずだぜ?俺が世間知らずなだけかもしんねえけど。」

「うーん、僕はダンの仲間だよ。」

「…俺にも言えねえのか?」

「言えないも何も…」

「ちょっと!!何寛いでんのよ!終わったなら早く来なさいよ!」


シュリが走ってきた。

ナイスタイミングだ!

シュリに手を引かれて町の入り口に向かうと見張りのおじさんと同じ装備の人達が集まっていた。

兵士かな?

警備の人かな?

あ、自警団かも!


「何してるんだ!早く入れ!」

「あ?」

「ダン!入り口は今閉めきってるんだって、無理言って開けてもらったの。」


自警団らしきおじさんの一言も、それなら納得だ。

町は大きい割りに人通りが少ないみたいだった。

さっそく町に繰り出そうとしたら止められる。

自警団の詰所みたいなところに通された。


「まあ、座りなさい。見たところ冒険者のようだが、身分証を出してくれ。」


冒険者!?

お馴染みのパターンだ!

おおおお!

是非ともなりたい。

でも身分証とか無いな。

どうしよう。


興奮しているとシュリが手を出してきた。

ここは任せて欲しいらしい。


「ええ。私はザンクトラノリア国出身のシュライエン・モルトレイトと申します。これが身分証です。」


そう言ってシュリは首から提げていたペンダントを机に置いた。


「ザンクトラノリア?また遠いとこから…ああ、間違い無いようだな。」

「こっちの二人は辺境の村出身で身分証を持っていないんです。出来ればこの度発行しようと思っているのですが。」

「そうか、なら身体検査をさせてもらう。いいな?」

「ええ。」


そうして身ぐるみを剥がれる。

なんでこんな目に合わなきゃいけないんだ。

なんでも奴隷の紋章の確認をしているらしい。


「よし、問題無いな。通っていいぞ。」

「冒険者ギルドはそこの道を真っ直ぐ行けば見えてくる。」

「最近は物騒だ。気をつけろよ。」


身ぐるみ剥がれたけど、案外いい人達だったようだ。


そうして一行はウェーヌの港町に到着した。





目〈なんか最近、わいの出番少なない?〉


カ「めんどくさくなったんだよ。」

シ「カイト!本当のことは言っちゃダメよ!」


目〈わい、旅に出るわ。〉


ダ「まじか。」

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