13
「成る程ね…こんな生き物がいたなんて。」
「ええ。我々の魔素では近づいただけで吹き飛んでしまうでしょう。」
お医者さんモードのメルバさんと厳しいお顔も麗しいフェラリーデさんが話し込んでいる。
さすがプロ。もうわかったことすり合わせている。
綿ボコリのような生き物は今は白っぽいビンの中に入っている。
あれじゃあ、中にいるかどうか余計わからなそうだ。
それはともかく、メルバさん達が検討してる間にクルビスさんに事情を話した。
ずっと心配してくれてたもんね。
「…そんな生き物がいるのか。」
「たぶん、今までは見えるひとがいてもすぐ消えてたんじゃないでしょうか。とても弱い生き物なんです。」
「きっとそうだろうな。それなら、納得のいく話がある。前にルシェリードの祖父さんから聞いた話だ。昔、ホーソン病の患者を見舞ったそうだが、その後患者の病状が回復したらしいんだ。
それまで、強い魔素の持ち主は誰も見舞ってなかったらしいから、強い魔素に影響されたんじゃないかと言っていた。」
「きっと、ルシェリードさんの魔素で消えちゃったんですね。」
「たぶん、そういうことだろう。強い魔素の痕跡はしばらく残るから、新しくそのホコリのような生き物が来ても近づけなかっただろうしな。」
「治ったんですか?」
「いや。祖父さんが病状を知らされたのはかなり後だったらしくて、残念ながら魔素が減り過ぎてすでに身体の機能の大半がダメになっていたそうだ。」
さっきの私の手のような症状が体中に広がっていたんだ。それじゃあ、助からなかっただろう。
身体を動かすエネルギーを食われてるんだから、どんどん身体が動かなくなっていくのは当たり前だ。
でも、本人にも周囲にも原因は見えなかった。
呪いだと言われても仕方ない状況だ。
知らずに弱っていく病気なんて、オルファさんはとても恐ろしい思いをしただろう。
でも、原因がわかったんだし、死ぬのをジッと待つような真似はしなくても良くなるはずだ。
少なくとも、何か対策が取れるはず。
そう、強い魔素を持つ人に頻繁に会うとか。
…またお見舞い行こうかな。
報告とかとは別に。水菓子食べてもらえてないんだよね。
(う~ん。でも、この生き物の話が終わらないと無理な気がする。)
考え込んでいると、クルビスさんがこっちを見ているのに気づく。
何か言いたそうだ。
「そのうち、また見舞いに行かないか?」
「…オルファさんにですか?」
「ああ。強い魔素を持つ者に会えば、新しい例の生き物が来ていても吹き飛ばせるだろう?」
共鳴してないよね?
どうして、私の考えてることわかったんだろう。
でも、クルビスさんの目を見て「違う」と思った。
クルビスさんも同じことを考えてたんだ。
私と一緒で、何か助けになればって思って、お見舞いに行こうって言ってくれた。
…このひとが伴侶で良かったなあって思う。優しいひとで良かったって。
自然と浮かんだ笑みのまま答えた。
「いいですね。是非、行きましょう。」




