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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
スタグノ族・黄の一族
78/360

 ******************



「ようこそおいで下さいました。」



 恭しく上体を傾ける黄色い姿にのけぞりそうになる。何とかこらえたけど。

 ぬめりとした光沢のある表皮がどうにも気持ち悪い。



 キィさんやキーファさんは綺麗だなと思ったのに、何でだろう?

 体色は黒っぽい黄土色で、細身の尻尾が見えるけど、尻尾もぬめりとした光沢を放っている。



 顔は…なんだっけ。キィさんやキーファさんとも違う感じだから、カエルっぽいわけじゃない。

 あれに似てる。え~と、そう、昔見たイモリとかサンショウウオとかだ。



 スタグノ族は水が無いと生きられないと聞いてるから、おそらく両生類系の種族なんだろう。

 目の前の男性は体格がいいからサンショウウオの方がイメージ近いなあ。



 小さな顔に少し突き出た丸い黒い目がニイっと細められる。

 ううっ。気持ち悪い。でも我慢しなきゃ。笑顔。笑顔。



(わたくし)、当代の叔父にあたりますグレゴリーと申します。当代はお体が弱く、今日も臥せっておりますので、(わたくし)がお二方のお相手を務めさせて頂きます。」



 叔父さんかあ。当代は今の長さんのことだ。

 今の長はとても身体が弱いと聞いてる。きっとこの叔父さんが変わりに取り仕切ってるんだよね。



「それは大変な時にお邪魔してしまいました。是非、黄の一族の長にお見舞いを。」



「お気遣いありがとうございます。ですが、先程眠られたばかりでして。トカゲの一族の次代様のお心遣い、当代にしかと伝えておきましょう。」



 空気がピリリと引き締まっていくのを感じる。

 何でだろう。形式的なやりとりのはずなのに、クルビスさんとグレゴリーさんの間に火花が散ってるのが見える。



 でも、それを顔に出すわけにはいかない。

 フェラリーデさんに言われて練習したんだから。



「長の伴侶たるもの、いついかなる時も笑顔で優雅に振る舞うべし。」



 緊張した空気にあてられて硬直した顔の力をそっと抜き、歯をきちんと噛みあわせて、自然な笑顔になるようにする。

 顔が強張るときは歯が浮いてしまっているか、逆に噛みしめてしまっているかのどちらかで、かみ合わせを意識すると自然な表情になるのだそうだ。



「では、こちらへどうぞ。」



 グレゴリーさんが案内のために背を向けると気持ち悪い感じから解放される。

 そこでわかった。気持ち悪かったのは視線だ。



 ひとを品定めするような視線で眺めまわしてた。

 顔も声も魔素だって歓迎を表していたのに、目だけが違ってた。



 そのバランスの悪さがとても気持ち悪かったんだ。

 グレゴリーさんはどうも良いひとじゃなさそうだ。



 話す時は気をつけよう。

 付け込まれたりしたらとても面倒なことになる。

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