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会場に戻ると、何故か一気飲み大会が始まっていた。
…あれ?数十分前まではにぎやかだけど、平和な光景が広がってたのに…。
「あ。クルビスさん。」
「やだ、シードまで。ザド隊長にアルス副隊長も。若手ばっかり飲んでるなんて珍し…あら?族長も参加してらっしゃる?」
「あそこって審査員席、ですよね?」
「ええ。おそらく…。」
リリィさんと困惑顔を見合わせつつ、もう一度宴会場を見る。
皆さんが思い思いに席についていた会場は、真ん中に幾つかのテーブルを残して後は周囲に片付けられていた。
その周囲に積み上げられたテーブルの前や上には、観客と化したヘビの一族の方々がこちらも変わらず飲み食いしていた。
「次、クルビスさまだろ~。」とか、「いいや。シード様も負けてねえっ。」とか言いながら、自分の手持ちのおつまみを賭けてるのが見える。
真ん中ではクルビスさんに、シードさん、ザドさん、アルスさん等など、若いひと達が飲み比べていた。
どうも一気に飲み干さないといけないルールのようだ。身体に悪そうだなあ。
そして、アーネストさんや他の年長の単色や模様持ちの方々は、真ん中の席が万遍なく見える場所に陣取っている。
「次、ココエラの酒っ。」とか言って指示を出しては、何か色のついた小さなものを動かしているのが見えた。
これアーネストさん達、絶対賭けてるよね?
それも、おつまみじゃないやつ。
それにしてもアーネストさん。参加者に負けないくらい飲んでらっしゃる。
昨日もそうだったけど、宴会の間中飲んでる気がする。大丈夫なのかな。大丈夫そうだけど。
「あなた達、こんなとこにいたのね。こちらにいらっしゃい。応援してあげなくちゃ。」
いつの間にか近くに来ていたローズさんが私とリリィさんを空いてる席に連れて行ってくれる。
どうしてこうなったのか聞いておこう。
「あの。何があってこんなことになったのでしょう?」
「ああ。それが、誰かが「クルビス様は酒にお強くていらっしゃるっ。族長にも負けませんぞっ。」って言って、それを聞いたアーネストが「そういえば、今の若手には強いものが揃っておったなっ。」とか悪乗りしちゃってねえ。
しかも、「ただではつまらんっ。おいっ。誰が最後まで残るか賭けんか?何、1か2くらいの些少で良い。それを勝者への褒美とするのだっ。俺からも別に出すぞ!」なんて言っちゃって。」
妙に上手い口真似で説明すると、ローズさんが深々とため息をつく。
成る程。若手で誰が一番お酒に強いか決めるために飲み比べになったんですね。
しかも、盛り上げるためにアーネストさん主催で賭けも加わることになったと…。
大丈夫かなあ。クルビスさん。
今もジョッキを煽ってるけど、今日はすごい量飲んでるよね?
このままだと、甘やかす前に介抱しないといけないかも。




