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「さあっ。皆、よく集まってくれた。こちらがトカゲの次代殿と伴侶殿だ。どうだ。見事な黒であろう?この良き巡りあわせを世界に感謝し、祝おうぞっ。」
おおおおおっ
会場を異様な熱気が包んでいる。
まだ朝早いのに、ものすごい熱気だ。
なんだろ。この集会。というか飲み会。
みんな木製のジョッキ片手に盛り上がってるけど。
今日ってヘビの一族へのお披露目だよね?
…あれ?何ですでに飲み始めてるんだろう?
「皆さん、トカゲの一族の次代の長となります。クルビスです。今日は私と伴侶のために集まっていただき、ありがとうございます。こちらが私の伴侶です。」
「は、初めまして。里見遥加です。どうぞハルカと呼んで下さい。」
おおおおおおおおおっ
さっきより大きな歓声というか叫び声が響き渡る。コンサート?
あっけにとられて、「ご近所迷惑にならないだろうか。」と思わず別のことに意識がいってしまったくらいだ。
何なんだろう。この盛り上がり方。
ヘビの一族ってノリがすごくいいのかな?
まあ、深緑の森の一族やトカゲの一族の時みたいに、認めてもらって仲間に入るって意味合いの『お披露目』じゃないから、「お祝いの宴会だと思えばいい。」ってクルビスさんには言われてたけど…。
ホントに宴会だし。
すでに飲みまくってるし。
朝からお酒が飲めるっていう「だし」にされてない?ねえ?
暖かい感じの魔素に取り囲まれているから、心から祝われてるのはわかるし嬉しいんだけど、どうにもそう感じてしまって素直に喜べない。
アーネストさんも最初の発言の後、すでに皆さんに混じって飲んでるし。
名乗った時以外、だーれも私たちを見ていないし。
「話に聞いてたがこれはすごいな。」
「盛り上がってますねえ…。」
名乗った後、シードさんに促されて用意してもらった席に座りながら、クルビスさんと呆然としながらつぶやく。
今日は普通の丸いイスとテーブルだ。昨日みたいな寝そべられるような長椅子と長机ではない。
まあ、外だしね。地面からは遠い方が衛生的だ。
席に座ると、ささっと私たち用のジョッキとお皿が渡される。
ジョッキにはクリーム色の飲み物が入っていた。
弱い果実酒で、昨日も食前酒にこれが出た。
お皿の上には何もない。ヘビの一族の宴会では自分で取りにいくんだよね。
でも、今日は視界を埋め尽くすような食べ物の山は見えない。
最初は宴席を囲むように彩りよく果物が盛られていたけど、あっという間に無くなってしまった。
果物が無くなると、屋台がずらりと並んで姿を見せる。
屋台?お披露目の席で?
そう疑問を持ちつつも、目の前の宴会風景と屋台には違和感を感じなかった。
もう、単なるお祭りだよね?
あ、歌い出した。それにつられて誰かが踊り出すし、そしたら演奏がどこからか始まるし…カオスだなあ。




