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クルビスさんとルドさんの関係を羨ましく思っていたら、ビアンカさんが「そろそろ終わりにするから、中の方に出てきて。」と呼びに来た。
もう終わりかあ。確かに挨拶も落ち着いたみたいだし、空が暗くなって結構経つもんね。
ルシェモモでは早寝早起きが基本だから、夜遅くまでのパーティーはしない。
熱帯に近い気候なので、涼しい間に身体を休める必要があるからだ。
今日は私のお披露目で招待客が多かったから、長めに時間が取られていた。
6時間くらいあったんじゃないかな。
あんまり長いから、トイレに行くついでに少し休憩させてもらったくらいだ。
ビアンカさんが「適当に抜けないとキツイわよ。」と目立たないトイレの場所を教えてくれたので、遠慮なくそうさせてもらった。
「さて、名残惜しいですが、そろそろ夜も更けてきました。今夜はこの辺でお開きとしましょう。これから次代殿と伴侶殿の式の準備で忙しくなります。各自力を合わせて支えていきましょう。」
アルフレッドさんの締めの言葉に全員が礼の姿勢で答える。
これで、トカゲの一族に認めてもらったから、これから準備が本格化することになる。
ウジャータさんに教わりながら、私が式の準備を采配していかないといけない。
これも家長の伴侶としての務めのひとつ。がんばろう。
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「お疲れ様でした。クルビスさん。」
「お疲れ。やっぱり『黒』が2つそろうと注目度が違うな。」
クルビスさんが苦笑しながら木製のコップを渡してくれる。
葡萄の意匠が彫られた優雅なコップだ。
お披露目パーティーが終わって、今は客間でクルビスさんとくつろいでいる。
さすがのクルビスさんも今日の珍獣扱いには疲れたようだ。
お疲れのところ気が引けるけど、聞かないといけないことがあるんだよね。
頭の中で確認して、質問を絞る。よし。
「ありがとうございます。…それで、今日会った方のことで、幾つか聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「ああ。何でも聞いてくれ。」
クルビスさんが快く頷いてくれたので、ホッとして質問する。
まずは、一番気になった女性、コールさんについて。プライバシーもあるし、誤魔化されたら引き下がるつもりだ。
「ありがとうございます。えっと、いろんな方がいらっしゃいましたけど、コールさんって女性が挨拶にこられましたよね?その、彼女とはお知り合いなんですか?」
「ああ。すごく睨んでただろ?彼女は俺を嫌っているんだ。」
うん。一瞬だったけど、視線にものすごい敵意があった。
いったい何があったんだろう。




