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「熱心な勧誘だったな。」
笑いを含んだ声でルドさんが言う。
今までの会話は聞こえてたみたいだ。いや、聞いてたのかな?
「ああ。ああいうのは幾つかあったが、今のは露骨だったな。まあ、転移局はこの間の寒さで影響があったからだろうが。」
「正式にお披露目もしたしな。出来るだけ早くつながりを持ちたいんだろ。」
ルドさんとクルビスさんの視線が私に集まる。
「ああいうの」って、「つながり」って…ああ、そういうこと。
知り合いがいない私に派閥はない。
だから、仕事を斡旋などをして『次期トカゲの一族の長の奥方に取り入る』、もしくは『自分の派閥に取り込む』といったやつだ。
実際に派閥があるのか知らないけど、街で1、2を争うくらい数が多いならグループに分かれるくらいはしてそうだ。
今日はお祝いのあいさつのついでに勧誘しやすいし、誰でも近づきやすい日だ。
今まで挨拶したひとたちにもそういう魂胆を持ってそうなひとはいた。
ガルンパさんみたいに仕事の勧誘までするひとはいなかったけど。
私の知らないところでクルビスさんにはいろいろ話がいってたみたいだ。
守ってくれてたんだな。言ってくれていいのに。
「ああいうお誘いはいままでもあったんですか?」
「まあ、な。興味があるなら…といった軽い物ばかりだったが。まだ、ハルカの授業が終わってないから話すにしてもそれから、ということで断ってた。」
「ありがとうございます。」
「俺だけじゃない。皆が協力してくれた。長もリードもシードもルドだって。」
クルビスさんがルドさんを視線で示すと、ルドさんはギョッとしたように目を大きく見開いた。
ルドさんも何かして下さってたんだ。知らなかった。
「おい。俺は何もしてないぞ。」
「かき氷の問い合わせの対応はお前がしてくれただろう?」
ああ。そういえばメルバさんが「かき氷のバリエーションを増やしてからお客さんがすごいんだよ~。」って言ってたっけ。
きっと抹茶ソースや餡子のことを聞かれたんだろうなあ。
クルビスさんのセリフで、ルドさんが面倒な問い合わせを引き受けてくれたことがわかって感謝の視線を向けると、ルドさんは首を横にゆるくふっていた。
何か違うのかな?
「それは違う。俺はあそこの料理に関する責任がある。問い合わせがあったら答えるのが義務だ。」
ルドさんの言いたいこともわかるかも。
料理長であるルドさんは、厨房から出す食事すべてに対して責任があるといっても過言じゃない。
だから、結果的に私を助けてくれることになったけど、ルドさん的には仕事をいつも通りこなしただけなんだろう。
今の答えはそういうことだ。
「わかったよ。誇り高い料理長のおかげで、北の食事は安泰だしな。」
クルビスさんが降参だと手を上げて喉を見せる。
ルドさんはそれを見て苦笑していた。
「これからもよろしく。料理長。」
「まかせろ。隊長。」
いいなあ。仕事で認め合ってる関係って。
私も早く職が見つかるといいなあ。面倒なお付き合い抜きのやつ。




