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「ゼイゼイ。全く、年寄りを走らせおって。」
「ハアハア。まったくじゃ。わしらはあんたと違って、若作りしとらんのじゃぞ。」
「ふうふう。まあ、長自ら出迎えに行かれたのは、すばらしいことですな。いつもこうなら良いんじゃが。」
青、黄、赤の髪の長老さん達が、息を整えながらメルバさんに文句を言っている。
こけたのは赤い髪の長老さんだけど、すぐに起き上がってこっちに走ってきたから助け起こす暇もなかった。
元気なおじいさん達だなあ。
お顔に深いシワが沢山刻まれてるからかなりのお年だと思うのに、話してる間に息が落ち着いてきている。
私の知ってるお年寄りとだいぶ違うんだけど。
こっちでは皆こんなに元気なのかな?
「もう~。ジジイなんだから、大人しく待ってればいいのに~。何だか前よりも体力ついてない~?」
「あんたにジジイと呼ばれる覚えはないぞ!」
「まったくじゃ。わしらより年上のくせに。」
「長を捕まえられるように、鍛え直したんじゃ。成果はあったようじゃの。」
メルバさんの愚痴に長老さんたちが口ぐちにいいかえす。
そういえば、メルバさんって異世界のドラゴンとエルフのハーフなんだっけ。
ドラゴンの力が膨大な寿命と魔力にだけ現れた珍しい例で、外見は20代後半の青年だけど、実際は2000歳越えのご老人なんだよね。
「うるさいなあ~。僕はまだ若いからいいの~。ドラゴンの一族ならまだまだ若手だし~。
それより、お客様に挨拶してよ~。ハルカちゃん。クルビスくん。このジジイ達がうちの一族の長老だよ~。」
「初めまして。ハルカです。このたびはご招待いただきありがとうございます。」
「おおっ。あなたがっ。わしはコルトと申します。歓迎しますぞ。」
「お見苦しいところをお見せしてすみませんのう。わしはデルカと申します。よくぞ我らが里へいらっしゃった。」
「ディランと申します。アタル殿とよう似ておられる。ゆっくりしていきなされ。」
青い髪のコルトさん、黄色い髪のデルカさん、赤い髪のディランさんが順番に挨拶してくれる。
…しゃべる順番がさっきから青、黄、赤だ。決まってるのかな?わかりやすくていいけど。
コルトさんは青い髪を肩口ですっぱりと切っていて、デルカさんは黄色い髪を一つにくくりに、ディランさんは赤い髪を長い三つ編みにして肩から前にたらしていた。
長老さん達の服装は、麻の半袖のワンピースという一族の衣装の上に髪の色とおそろいの長袖のローブを羽織っている。
さらに、髪型は違うものの3人とも額を出していて、その上に青い石のはまった金のサークレットも付けていた。
こういうところがすごくエルフっぽいよね。
対照的に、メルバさんは明るい緑色のノースリーブにハーフパンツのルシェモモの男性の典型的な服装だから、見た目がその辺のお兄ちゃんって感じでどちらがエルフの長かわからない。
瞳は3人とも真っ青だった。メルバさんと同じ色だ。
メルバさんが「異世界からわたって来た最初の世代は皆青い瞳なんだ~。」って言ってたから、さっきの挨拶でも言ってた通り、長老さん達はあー兄ちゃんを知ってる世代みたいだ。
「長老方、お久しぶりです。相変わらずお元気そうでなによりです。」
わたしの自己紹介が終わると、今度はクルビスさんが苦笑しながら挨拶をする。
クルビスさんは小さい頃ここに住んでたことがあるそうで、長老方には可愛がってもらったそうだ。
「おおっ。クルビス坊やも来たかっ。」
「うんうん。立派になったのう。」
「活躍は聞いとるぞ。今はもう北を代表する戦士じゃもんなあ。」
長老さん達は口ぐちにクルビスさんを褒めていく。
親戚の集まりに久しぶりに顔を出したって感じだ。しばらく続きそう。