雨季ー50
「そん時は呼んでくれよ。」
「そうだな。比較してもらう方が…。」
ダダンッ
和やかに話している途中で、ルドさんの姿が消える。
何か大きな音がしたと思ったら、後ろに気配がした。
「シードさん?」
いつの間に私の後ろに。
じゃあ、さっきの音ってシードさん?
「動くなよ。ハルカ。ルドっ。どうだっ?」
え。ルドさん?
ルドさんは料理長さんでしょう?
どうしてルドさんに聞くの?
混乱しすぎてわけがわからない。
「捕まえた。まだ周りにいるかもしれん。警戒しろ。」
ルドさんの怒鳴る声と、ばちゃばちゃという大きな水音が聞こえたけど、シードさんが目隠しになってるのと大きな雨音とで詳しくはわからなかった。
というか、何が起こったんだろう?
私の背後ってことは守備隊の入口だ。
外に何かいたってこと?
「どうしたっ。」
あ。クルビスさん。
振り返ろうとした時にはすでに抱きしめられていた。視界が隊服の色で真っ黒だ。
「たぶん、牢に入れてる連中の仲間だ。1つはルドが抑えた。他の隊士が周りを見て回ってる。」
ルドさんって料理人さんじゃなかったの?
そりゃ、立派な体格してるけど。
「そうか。キィ見てくれるか?」
「ああ。」
キィさんが入口の方に向かう。
ここでようやく私の頭も動き出した。
えっと、牢にいるひと達の関係者が守備隊の中を伺ってた、ってことでいいのかな?
それに気づいたルドさんが取り押さえて、シードさんが私を庇ったと。
自分の背後にテロリストがっ。
事実がわかると、悪寒が一気に背中を駆け巡る。
あ、危なかった。
危機察知本能なんて使わなくてもわかる。
この中で一番弱いのは私だ。
まず狙うなら私からだったろう。
「大丈夫か?ハルカ?」
「は、はい。」
私が震えてるのに気づいたからだろう。
クルビスさんがギュッと抱きしめてくれる。
ほんわかと温かい魔素に包まれて、ようやく震えが止まった。
いっつもこうだなあ。私に何かあるとこうして守ってくれるの。
私も何かしたいんだけど、思い付かなくて。
甘いものを差し入れるくらいしか出来ないけれど、いつも嬉しそうにしてくれる。
後、出来ることといえば、笑ってるくらいかなあ。
大丈夫だって。だから心配しないでって。
うん。もう大丈夫かな。気持ちが前向きになってきた。
落ち着いたと思う。クルビスさん、ありがとうございます。




