雨季ー44
「そうか。シードが何も言わなかったから大丈夫だと思うが、対処が間に合わないようならこちらに派遣要請が来るだろう。その時は頼む。」
「ああ。その時はいつでも声をかけてくれ。でも、頼まねえだろうなあ。」
「まあ、他所はうち程連携が取れてませんから。」
クルビスさんがキィさんに頭を下げ、キィさんがそれに頷いてからため息をついた。
フェラリーデさんもそれに同意するように苦笑する。
連携が取れてない…。
それぞれの部隊ごとに独立してるってこと?
北も一応そうだけど、きっともっと悪い方に独立してるんだろうな。
この間来ていたエルフのビルムさんも北の様子に驚いてばかりだったし。
良くないよねえ。
街を守る守備隊が地区ごとだけじゃなくて、中でも分裂してるなんて。
まあ、今まで平和だったってことは有事の際は一致団結するんだろうけど、事が起こってからじゃあ遅いことだってあるのになあ。
今がまさにその状況だよね。地下の雨漏り大丈夫なんだろうか。
「そうだよなあ。北だって、フィルド隊長がいた頃に変わったんだし。他んとこもそういうリーダーがいればなあ。違うんだが。」
「西はアーネスト殿がいた頃にずいぶんマシになったらしいが、隊長だった期間が長くなかったからな。」
「ええ。後、10年は隊長でいらしたら、ずいぶん変わったでしょう。族長になられたのがお早かったです
からね。」
アーネストさんはシードさんのお父さんだ。
豪放磊落って感じのひとで、あのひとが隊長さんだったなら部隊が違うとか地区が違うなんて気にし無さそうに思える。
でも、族長になるのが早くて、改革しきれなかったってことかあ。
西でそれなら、他の地区はもっと酷いってこと?
じゃあ、被害が酷くても報告が遅れる場合もあるってことかあ。
何て無駄な意地の張り合い。協調性の訓練とかないのかな?
「不思議か?故郷にも守備隊みたいな組織はあったんだろう?」
納得のいかない私の様子にクルビスさんが声をかけてくれる。
お仕事中なら大人しくしておくから大丈夫ですよ。別にいいんですか。そうですか。
「ええ。ありました。でも、救援を頼まないだろうっていうのが、どうにもわからなくて。」
助けを呼ぶタイミングが遅いか早いかの差はあるだろうけど、災害時に自分たちの裁量を超えそうになったら救援を求めるのは日本では普通だ。
こんな大雨の時にまで自分たちだけでなんてやってたら、二次災害が出てしまうだろう。
「災害の時は少しの油断が命取りになりますから。…二次災害が出なければいいですね。」
私自身は直接大きな災害にあったことはない。
でも、住んでた所から少し離れた地域で浸水があったり、川が増水して警報が出たりなんてことは普通にあった。
もっと酷い被害だって、ニュースで見知っている。
だから、自然災害の被害が大きいことも、少し油断してるだけで大きな被害になることも予想がつくんだけど、こっちではそうじゃないんだろうか。
「二番目の被害?それはどういうものなんだ?」
え?二次災害って知らないの?
こんなに雨が降るのに?




