雨季ー42
隊士さん達が2階の転移室に向かうと、フェラリーデさんも1階に待機する隊士のローテションを組んでくると言って2階に上がっていった。
そして、私はまたクルビスさんのひざの上に。もういいですけどね。
「そういえば、ヒビの修復って難しいんですね。私、周りの土なんかをかき集めて埋めるんだと思ってて、もっと簡単だと思ってました。」
同じテーブルに座ってるのがふたりになったので、気になったことを聞いてみる。
小さなヒビでも修復が難しいって知らなかったから、皆さんが面倒そうなお顔や困った顔をするのがわからなかったんだよね。
これも常識のうちなら聞いておかないと。
後で困るのは私の方だ。
「ああ。川の傍ならそれでいいんだが、街の床石は特殊だからな。水を7割がた下に通す特殊な石を使っているから、とにかく埋めるというわけにはいかないんだ。」
水ははけがいいとは聞いていたけど、そんな特殊構造な床だったなんて。
でも、それならこの雨で床下浸水とかにならないのも納得だ。
雨季で豪雨の降るこの街はそれに合わせた構造になってるらしい。
家の形が半球なのもそのひとつで、雨の影響が極力建物に出ないようにしてるそうだ。
まさか床石まで雨季に対応してるとは思わなかったけどね。
それじゃあ、地下の様子をクルビスさん達が気にしてたのも、技術だけじゃなくて地下に流れ込んだ大量の雨の処理も行ってるからってこと?
うわあ。危ない所だったんだ。
もし、雨が下に落ちる構造をせき止められでもしたら…。
今頃ここも浸水してただろうなあ。
家だって流されてたかも。
「だから、浸水とかしないんですね。どうしてなんだろうって思ってたんです。」
「聞いてくれればいいのに。」
目を細めて可笑しそうに言うクルビスさん。
だって、普通なら溝があるとか、排水設備が他にあるって思いますよ。
床石自体が排水してるなんて思いもよらなかったんです。
この街は特殊だって聞いたけど、こういう所も特殊なんだろうなあ。
そんな風にしみじみと自分の常識との差を実感していると、クルビスさんの顔が近いことに気がつく。
話すなら、もうちょっと距離があった方がいいですよ?
ちゅっ
「~っっ。だから、皆のいるところではっ。」
「禁止なんだろう?今はだれもいないぞ?」
私がデコチューに抗議しようとすると、クルビスさんが周りを見て笑う。
あれ?さっきまで汁粉を食べてた隊士さん達がいなくなってる。
それなら…。はっ。問題点が違う。
クルビスさんっ。そういうことじゃないんですっ。
抱っこはOKしましたけど、チューはだめですってば。
聞いてます?ちょっとっ。




