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赤、黄、紺色、紫、緑、灰色、チョコレート色、ネオンブルー…。
あらゆる色のひと達がアルフレッドさんの家に集まってくる。それもかなりの数が。
客間の窓からそれを眺めてため息が出る。
緊張してきたあ。上手くやれるかなあ。ううっ。
今日のために仕立てた黒いドレスワンピースを撫でつけながら落ち着かない気分を味わう。
ワンピースは光沢のあるサラサラとした生地で、光が当ると青っぽく見える。
クルビスさんの黒に似てるからこの生地にしたんだけど、それが似合ってないんじゃないかと思えてくる。
「ハルカ?どうした?」
「…ちょっと緊張してきちゃって。たくさんの方が来られているみたいですし。」
私のため息を聞きつけたクルビスさんが窓際にやってくる。
隠しても仕方ないので話したら、後ろから抱きしめて魔素でなだめてくれた。
やさしいよねえ。カッコよくて仕事も出来るし、頼りがいがあるのにちょっと可愛いし。
魔素の問題さえなければ引く手数多だよね。
…きっと、ポッと出の私を気に入らないひともいるんだろうなあ。
ビアンカさんに昨日こっそり言われたことが胸に刺さる。
『クルビスにあこがれてた子は多いから、明日は彼の傍を離れない方がいいわ。』
これって、もしかしなくてもフラグだよね?
意地悪キャラ登場とかライバル出現とかってタイトル付きそうな感じの。
何処かでこういうことはあると思ってたけど、今日ここでかあ。
まあ、嫌がらせの場としては大きなパーティーは定番だよね。
問題は、嫌味くらいならいいんだけど物理的に嫌がらせされた場合だ。
身体能力で各段に劣る私じゃあ、逃げられないだけじゃなくいざと言う時に周りに迷惑をかけるかもしれない。
むしろそれを狙ってくるかもしれないと思ってる。
クルビスさんの所属するトカゲの一族でのお披露目は重要だ。
これが上手くいけば、正式に私はトカゲの一族の伴侶と認められるから、恥をかかせるなら今日が一番効果的だろう。
転ばされるくらいはありそうだ。足元には気を付けよう。
それくらいで泣くような可愛げのある性格じゃないけど、せっかくのお祝いの席でケチをつけたくないから、今回はビアンカさんのアドバイスに従ってクルビスさんとずっと一緒にいる予定だ。
「落ち着いたか?」
「…はい。ありがとうございます。」
「今日はずっと傍にいるから。何か言ってくるやつがいても気にするな。」
私が落ち着いたのを見計らって、クルビスさんが傍にいる約束をしてくれた。
こっちから頼もうと思ってたのに、先に言われちゃったなあ。
頭の良いひとだから、何が起こるのかとっくに予想してるのかも。
目が心配だって言ってる気がする。
心配されてるのが何だか嬉しくて、思わず笑ってしまう。
笑ってる私を見て安心したのか、クルビスさんはもう一度ギュッと抱きしめてくれた。




