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何だかんだと言ってるうちに予定の10000個は何とか出来上がった。
夜までかかった…。もう手の平が痛い。
「こんなもんね。後は明日出すだけだわ。いいわね。楽だわ。」
「あらあら。本当に。甘みにお砂糖を使うとこんなに良いのねぇ。」
「俺も砂糖を使うと魔素が長持ちするなんて知らなかった。これは正式に発表した方がいいかもしれない。」
ビアンカさんの話にウジャータさんとルドさんが賛同する。
こっちでは魔素をより多く補給しないといけないから、その日に作ったものじゃないと意味ないもんねえ。
これもレシピの発展に歯止めをかけてるだろうな。
せめて1日くらいもたないと、煮込んで味を引き出す系統のものは全部アウトだ。
「おお。すごいねえ。」
「こんなに作ったんですか。」
出来上がった葛餅を冷蔵庫にしまおうとしたところで、クルビスさんとアルフレッドさんが戻ってきた。
おふたりとも明日のお披露目の確認と私のレシピ公開の手続きで、今まで外に出てくれていた。お疲れ様です。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
「何とか間に合ったよ。調理師初級の認可が今日付けで下りた。」
作業を中断してお出迎えをすると、アルフレッドさんが驚く結果を報告してくれた。
調理師初級?え。私が?
「あらあらあら。ホントですの?アルっ。」
「ああ。すでに守備隊のメニューにも載ってるのが良かったようだ。
技術的な面はこちらに慣れていないというので考慮されたし、あくまでメニューの公開を目的としていることを伝えたら許可が下りたよ。」
「よかったわねっ。これで、堂々とレシピを公開しても文句が出ないわっ。」
「調理師…私が…。」
こんなに簡単に資格の許可って下りるもんなのかな?
喜びより驚きの方が勝ってしまって反応出来ない。
そんな私にまたルドさんが助け舟を出してくれた。
ありがとうございます。頼りにしてます。
「ハルカ。初級の資格テストは基礎レシピの暗記なんだ。ハルカは故郷のレシピをきちんと覚えていただろう?それが認められたんだ。」
「じゃあ、お菓子を作った時点で資格はあるってことですか?」
「そうよっ。これで、ハルカを教室に呼べるわっ。ねえ。お母様。」
「あらあら。そうね。ハルカさん。もちろん式が終わって落ち着いてからですけど、レシピの公開にわたくしの教室を使って下さいな。その方がきっと広まるのも早いわ。」
私の確認にビアンカさんが頷き、ウジャータさんがお料理教室の使用許可までくれた。
助かった。公開といっても、ネットがあるわけじゃないからどうしようと思ってたんだよね。
ウジャータさんの料理教室なら、沢山の調理師さんたちがいるだろうし、レシピの拡散も早いはずだ。
これで、公開する資格と場所を得たことになる。後は明日だ。上手く受け入れられればいいけど。
「大丈夫だ。トカゲの一族は新しいものに弱い。ハルカのスイーツはウケるよ。」
私の不安がわかったのか、クルビスさんがフォローをくれる。
うん。クルビスさんがいれば、何か言われても大丈夫。とにかく食べてもらおう。
 




