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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 新婚編
336/360

雨季ー27

 ルシェリードさんが帰った後、キーファさんが術士部隊のひと達を連れて戻ってきた。

 他の地区でも同じようなことが起こってることを聞くと顔をしかめる。



「では、もう東でも起こっているかもしれませんね。」



「ありそうだなあ。これで東だけなんも無しってのもないだろ。」



 それを聞いて、私は憂鬱になる。

 日本で生まれ育った私は、あー兄ちゃんのおかげで多少のもめ事には慣れているものの、基本的に暴力には疎遠だった。



 だから、身近で起こっている、このいわれない暴力に不安がうずまく。

 式で街じゅうから祝福してもらっただけに、顔を会わせたかもしれないひと達が被害にあってることが酷く辛かった。



 ギュっ



 やさしく抱きしめられて、顔を上げる。

 いつの間にか俯いてたみたいで、クルビスさんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。



「…どこの守備隊も隊士たちは優秀だ。今頃は事態の収拾にあたっているさ。」



 私の不安を感じ取ってくれたんだろう。クルビスさんに気遣わせちゃったなあ。

 不確実なことは言わないひとだから、今の状況で「大丈夫だ。」なんて言わない。ううん。隊長さんなら言えないだろう。



 でも、皆が出来る限りのことをしてるって、私に教えて安心させようとしてくれている。

 優しいなあ。心配かけてごめんなさい。



「はい。」



「で、ちょっといいか?」



 あ。シードさんが呆れてる。

 私にというよりクルビスさんに。



「中央に連絡して、すぐさま東にも確認を取った。まだ、被害は無いが警戒レベルを引き上げて、特別巡回を回すってさ。」



「地下からの返事は?」



「それが、まだなんだよ。目に見えてヒビがあるかどうかだけ見てもらえればいいって言ったんだが。」



 地下に連絡したのってちょっと前だよね?

 結構時間経ってるのに、目に見えるヒビの確認に手間取る?



「ハルカ?」



 クルビスさんが心配そうに聞いてくる。

 このひとにこれ以上心配かけちゃいけないんだけど、何だか嫌な予感がする。



 厄介ごとにはあー兄ちゃんで慣れてるせいか、私の嫌な予感はよく当る。

 …何だろう。さっきから地下って聞いて。いやーな感じが止まらない。



「地下の確認にそんなかかるかあ?視認だけの緊急の話だろう?」



「ああ。だが、まだ調べてるのかして、繋がらねえんだよ。」



 繋がらない通信機。連絡の途絶えた地下の職員さん。

 いやだ。安いミステリーじゃあるまいし。そんな、地下で事件なんて…。



「地下が目的じゃあるまいし…。」



「…地下が目的?」



 え?あ。しまった口に出してた。

 クルビスさんには伝わってしまったみたいだ。


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