雨季ー16
「そーいえば、クルビス隊長、ここにいて大丈夫?」
お汁粉を食べ終えた子が思い出したように聞いてきた。
ああ。そうだ。そろそろクルビスさんはお仕事に戻らないとね。
「ハルカ様とラブラブは?」
ん?
「巣篭りするんじゃなかったの?」
ええ?
こ、子供の発言じゃないような。
っていうか、子供たちまでそんな風に思ってたの?
クルビスさんがドラゴンの習性持ってるのって、もしかして周知の事実ってやつ?
「隊長だからな。そうそう篭ってられないんだ。」
「でも抱っこしてないー。」
「引っ付いてないと死んじゃうんでしょう?」
クルビスさんが苦笑しながら答えてくれたけど、子供たちはさらに不思議そうに聞いてくる。
死んじゃうって、さすがにそれはないかなあ。離れたがらないけど。
「…誰かから聞いたのか?」
「うん。おじいちゃんにフィルド隊長がそうだったって。」
「西に来ないといけない時もメラ様をずっと抱っこしてたんだって。」
「離れたら死んじゃうからって。」
「「…。」」
子供たちは無邪気に知ってることを披露してくれるけれど、私とクルビスさんは何とも言えずに沈黙した。
お養父さま…。他所の地区でもやったんですか。
それで、皆知ってるんだ。
うわあ。メラさん大変だったろうなあ。
「いいの?」
ダメ押しで質問される。
うん。どう答えたものかな。
「俺はトカゲの一族だからな。少しは大丈夫なんだ。でも、なるべくはくっつくようにはしてるよ。」
クルビスさん。子供相手に何言ってんですか。
そして、嬉しそうに手招きしない。
行きませんよ。
そんな嬉しそうに手招きしても。
…子供たちが真似して手招きしてても。
しょ、食器の片付けもあるんですから。
「はやくー。」
「食器は片付けとくからー。」
子供たちに気を遣われちゃったし。
私の手から食器をさっさと回収して、自分たちでテキパキとお盆の上に載せていく。
「ありがとう。」
そう言うと、いつの間にか傍に来ていたクルビスさんが私の肩を抱いて引き寄せる。
いやいやいや。何?みんな、その当然ですよな顔は。
さすがに子供の前でイチャイチャする気はないから。
ちゃんと別の時にくっつくからいいんです。
「もう。ハルカ様遠慮しすぎだよ。せっかくの蜜月なんだから、もっと引っ付いとかないと。」
「そうよ。長く一緒にいるには、ひっつく時にはしっかりひっつくことが大事なんだから。」
「う、うん。…気をつけます。」
大きい女の子たちに窘められて、クルビスさんの方に身体を寄せる。
クルビスさん、肩震わせて笑ってないで助けて下さい。




