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「ザド兄様も来れれば良かったのに。こんな美味しいものを食べ損ねるだなんて。」
「そうねえ。あの子もいろいろ忙しいみたいだけど、今日くらいは揃えたら良かったわねえ。」
ビアンカさんとウジャータさんが3つ目の葛餅を食べながら言う。
アルフレッドさんは無言でひと口ひと口味わいながら頷いていた。
話題になったのは1番目のお兄さんのことかな?忙しいひとみたいだけど、どこかで会うことがあるかもしれない。
名前は無理でもお兄さんがいることだけは覚えておこう。
ルドさんのアドバイスで25個作ってきたんだけど、すでに三分の一は減っている。
気に入ってもらえたみたいで良かった。…足りるかな。
「ハルカ。よければ、明日これを出さないか?母と妹を巻き込めばイケるだろう。」
安心したところで、ルドさんがとんでもない提案を出す。
明日ってトカゲの一族へのお披露目で出すんですか?…出来るかなあ。
「何処で作るんですか?それに…間に合うでしょうか。」
「あらあら。作るのはうちの厨房を使っていただいてよくてよ。でも、よろしいの?ハルカさん。」
ウジャータさんの質問の意味が分からず、首を傾げる。
よろしいってどういう意味だろ。困っていると、ルドさんが助け舟を出してくれた。
「お母さん。ハルカは故郷の菓子を無くさないために、レシピの公開を考えてるそうです。俺も幾つか作り方を教わっているので、手伝ってもらうことには問題ありません。」
「あらあら。まあまあ。そうだったの。そうね。故郷の味は大事なものだもの。
それなら、明日は丁度良いわ。ハルカさんの故郷のお菓子のお披露目もしましょうっ。」
「それなら、私も手伝うわっ。素敵な話だし、とても美味しかったもの。是非、覚えたいわっ。」
「いい案だね。ハルカさん。レシピの公開は素晴らしいことだと思うよ。いろいろ面倒なこともあると思うから、その辺は私が協力させてもらうよ。」
ルドさんの説明にウジャータさんとビアンカさんが賛同し、アルフレッドさんはレシピの公開に協力を申し出てくれた。
思った以上の収穫に心が浮き立つ。最初はスイーツがもっと気軽に食べたいってだけだったのに、話が具体的になってきたのを感じる。
「技術は尊重されるべきだが、秘匿も過ぎれば技術の停滞になる。これで、ますますスイーツの発展が望めるだろう。」
アルフレッドさんの言葉に皆が頷いた。




