雨季ー6
「…ここまでのようだな。ハルカ、これを持って表に出てくれ。たぶん待ってるだろう。」
はい?何が待ってる?
私が首を傾げていると、冷蔵庫から出した水菓子の乗ったお皿を突き出された。
これ持って外に出ろってことかな?
アニスさんも心配そうに食堂の方を見ているから、たぶんそうだろう。
「今冷やしてるスープはそれを食べてからにしよう。でないと俺の身が危ない。」
何か危険なものがあるのかな。
すごく怖いんですけど。
それ以上言わないルドさんと急かすようにドアを開けるアニスさんに背中を押されるようにして外に出る。
その途端、空気が重くなったのを感じる。これは…。
「ハルカさん。お願いします。そろそろ隊士たちにも負荷が…。」
アニスさんが泣きそうな顔で食堂の方を手で示す。
うん。そうでしょうね。さすがにわかりました。
一体どうしてこうなったんだか。
覚悟を決めて、にっこり笑顔で食堂に向かう。
後ろにはアニスさんもついて来てくれるけど、少し距離があるのは気のせいじゃないだろう。
食堂に向かうと階段近くのテーブルに重々しい空気、いや、魔素をまとったクルビスさんがいた。
周りの隊士たちは遠巻きにしている。
声かけるの勇気いるなあ。あ。でも水菓子があるか。
「クルビスさん、休憩ですか?ちょうど、水菓子が出来たんです。一緒に食べましょう?」
すると、重苦しい空気が軽くなる。そこでやっと雨の音が聞こえてきた。
…やっぱり原因クルビスさんかあ。何かあったのかなあ。
内心首を傾げながらも、笑顔で水菓子をテーブルに置く。
するとあっと言う間に膝に乗せられ、顔を覗き込まれた。
「ずいぶん時間がかかった。」
「スープを2種類作ってたんです。クカの果汁を絞らないといけなくて、それが大変でした。」
ちょっと怖かったけど、何でもないように訳を話す。
どうしてこうなったんだろう。今までこんなこと無かったのに。
「クカの実を?…それは大変だったろう。そうか、それで。」
「ええ。結局まだ出来上がってないんです。その前にクルビスさんとおやつにしようと思って。」
ちょっと落ち着いてきたクルビスさんに、いつの間にか用意されてた小皿に取った水菓子を差し出す。
大サービスでフォークに刺してあ~んってしてあげたら、やっと笑ってくれた。
ちらりと見ると、周りの隊士さんたちはホッとした顔で遠巻きに私たちを見ていた。
それもクルビスさんに顔の向きを直されて、すぐに見えなくなる。クルビスさんしか見ちゃいけないみたい。
ここまでの反応で嫌でもわかる。
これって私と離れてたからだよね?
婚約の時はここまでじゃなかったのになあ。
式の時は離れたがらなかったけど、その時より酷くなってる。何でだろう。