雨季ー2
お昼を食べて自分の部屋で復習を済ませると、約束した時間に下の厨房に降りていく。
奥の厨房では、ルドさんがすでに準備を済ませていてくれた。
「今日はルドさんだけなんですね。」
「今日の材料からすると、レシピに深緑の森の一族のものが混じるだろう?取得してる免許によっては教えられないからな。」
ああ。ここでもレシピの壁が…。
使うっていっても豆腐くらいだし、別に…って、もしかして、豆腐が問題なの?作らないとだめ?
だから、アニスさんもいるのかな?
警備だからかと思ってたけど、エルフだからっていうのもあったみたいだ。
豆腐屋さんは無いし、スーパーとかもないし、豆腐を材料に揃えるって大変だったんだなあ。
じゃあ、豆乳から作るの?ニガリってあるのかな?
「ニガリだ。長さまにお願いしておいた。」
「ありがとうございます。」
あった。さすがルドさん。ぬかりない。
じゃあ、ルドさんは豆腐の作り方とかも知ってるわけだ。
まあ、抹茶のことも知ってたくらいだし、レシピには詳しいんだろうなあ。
じゃあ、豆腐からサクサクつくりますか。
「豆も絞って置いたから、トフはすぐ作れる。硬さがわからなくてな。それで待ってた。」
あら。お待たせしてたんですね。
えっと、白玉作るのに、豆腐使いたいからちょっと固めがいいかな。
実家では絹ごし使ってたけど、1から豆腐つくるなら、固めくらいで丁度いいだろう。
豆腐使うと白玉が固くならなくて、食べやすいんだよね。
「少し固めでお願いします。水気を切ったトフをつぶして粉を混ぜてお団子にするので。トフは粉1に対して1.5の量で混ぜます。」
「これを団子に?…ああ。淡泊な味だからいけるかもな。」
「ええ。あっさりしてて固くなりにくいので、冷たい菓子にはいいですよ。…それで、あの、お願いしていた果汁はありそうですか?」
さっそく私のお願いした通りの豆腐を作ろうと、テキパキと準備を始めるルドさんにココナッツの果汁のようなものはあるのか聞く。
すると、ニガリを混ぜていた手を止めて「おそらく…。」と言ってテーブルの上の青い果物を指した。
「クカの実だ。絞ったものは風味をつけるのに使う。単体では匂いにクセがあるだけで味はほとんど無いんだが、他のものに合わせると甘みとコクが出るんだ。話の通りならこれだろうと思う。」
あった。
南国だからあるんじゃないかとおもったんだけど。ホントにあった。
さすがルドさん。
特徴を伝えただけで食材を探し当ててくれるなんて。
もしかして、出来る?
ココナッツ汁粉。すごい色になりそうだけど。
なら、バニラアイスも入れたいなあ。
お気に入りのカフェで人気だったんだよね。バニラアイスと白玉と餡子のトッピングされたココナッツ汁粉。
あれが再現できるかもしれない。
豆腐白玉も出来そうだし。
あ。でも普通の汁粉も作りたいなあ。
もしかして、冷やしたら色味がマシになるかもしれないし。
あれはシンプルで一番食べやすいから、作るならあれからかなあ。
じゃあ、餡子を作らないとね。




