デートー20
本日も1800字程。
メロウさんが持ってきてくれた取り皿で取り分けて、萌黄色のおばさんが持ってきてくれた焼きそばから食べる。
カラフルな野菜が細かく刻まれたものがたくさん入っていて、その中には赤いジャガイモもあった。
青紫の粒粒はたぶん前に食べたことのあるタラコだろう。
これもどっちかというと海の幸を意識した焼きそばだ。
私が海の幸を好きだって聞いて、わざわざこっちを用意してくれたんだろうか。
気遣いが嬉しいやらありがたいやら。
口に含むと、たらこや野菜の味が絡み合った麺が解けて、何とも言えない美味しい味が広がっていく。
これ、塩焼きそばだよね?それにしては味が濃い。お出汁とか使ってるのかな?
「美味しい。」
「この味、久しぶりだ。やっぱりおばさんのピックは上手いな。」
「ええ。この味だけはうちのかみさんでもかなわないって言ってまさあ。」
美味しい焼きそばに三人とも顔をほころばせて平らげる。
普段は食堂をやってるって言ってたっけ。今度クルビスさんに食べに連れてってもらおうかな。
空になったお皿を飲み物のおかわりを持ってきてくれたメロウさんに渡して、次はイカを切り分けていく。
私がやろうと思ったんだけど、クルビスさんが手際よく切り分けたと思ったら、ひと口大のイカがお皿に綺麗に盛られていた。
何て早業。クルビスさん普段料理なんてしないんだよね?
何でそんな盛り付けとか上手いの?
「祖母の手伝いはよくやったからな。」
だから、モノローグに返事しないで下さい。
でも、イシュリナさんのお手伝いしてたんだ。
じゃあ、料理の手伝いとかもしてたんだろうな。
おばあちゃん子だったのかな。
そういえば、子供の頃の話って聞いてないなあ。
私もあまり話してないから、今度話してみようか。
「ほう。こりゃ上手い。酒が欲しくなっちまう。」
私がクルビスさんの事を考えてると、一足先にイカを食べてたビドーさんが歓声を上げる。
え。このイカそんなに美味しいの?じゃあ、早速。
「美味しい。」
「これは、美味しい。酒が欲しくなるな。」
私とクルビスさんも、イカの柔らかさとカレー風味のたれとの相性に歓声を上げる。
このイカをこっちのカリーに入れたら、そのままシーフードカリーになりそうだなあ。
ちゃんと火が通っているのに、中は柔らくてジューシーだ。
カリー風味のたれのおかげで生臭い匂いも消えているし、何より辛くないから小さな子供でも食べられるだろう。
「こりゃあ、今後名物になりやすね。」
ビドーさんがこう言うってことは最近できた屋台なのかな?
美味しいし食べやすいから、これから売れそうだ。
「見ない顔だったが、最近の店なのか?」
「へえ。南の出身ですが、西で修行して移ってきたばかりでして。親父がガルクってやつで、もともとあの界隈で惣菜を売ってたんですが、こないだ亡くなっちまって、それで店を継ぎに移ってきたんで。」
「ああ。ガルクおじさんとこなら、父と良く一緒に行った店だ。…そうか。亡くなったのか。」
クルビスさんは持ってきてくれた青緑のお兄さんとは知り合いだったらしく、ビドーさんと熱心に話し込んでいた。
私はその間にイカを片付ける。ビドーさんもクルビスさんも食べるの早いから、私だけまだ食べてるんだよね。
「ええ。まだ若かったのに、惜しいことです。南で暮らす息子をよく気にしていました。ああ、南といえば、こっちのカカルクのドルネを持ってきたシェリスも南から最近来たんで。詳しくは聞いてませんが、おそらく色のことで何かあったんでしょう。ここは落ち着くと言ってました。」
今度はビドーさんが料理を私たちに取り分けてくれる。
うう。ここは女性としてスマートに給仕したかったなあ。
まあ、また機会はあるよね。
このクレープみたいな皮の中には、エビっぽいのや野菜っぽいのがいろいろ入っていた。
たれも中にかかってるみたいだし、このままかぶりつけばいいのかな?
ん。美味しい。さっぱりした酸味のある柑橘系のたれがかかってて、口の中がさっぱりする。
皮も小麦じゃないなあ。もっとあっさりした穀物だ。
知ってる料理で似てるのは生春巻きかなあ。サラダ感覚で食べられるし。
こんなに美味しいものを作れるのに、ビドーさんの話だとあのラベンダーのお姉さんも苦労してるみたいだなあ。
ここは落ち着くってことは、ここなら色のことを言われないってことだろう。
きっとそうやって、色の淡いひとたちはここに移ってくるんだろうな。
そうやってこのあたりの地域は出来上がっていったんだ。
ドラゴンのケロウさんは真っ白だけれど、大丈夫だろうか。
今日から街の方で暮らすんだよね?
あ、でも、ケロウさんは中央勤務だって言ってたし、フィルドさんやルシェリードさんがいれば大丈夫かな。
ドラゴン相手に喧嘩売るひともいないだろうし。




