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ジジさんに言われたことを気にしながら今までみたいに手を振ってると、建物の窓やドアが全て木製なのに気がつく。
そうだ。守備隊の裏から出て森に行くときもドアや窓が木製の建物が目についたんだった。
あの時は木製のドアもあるんだって思っただけで、それ以上気にしなかった。
でも、今はお披露目や婚姻の式で各所を回った後だから、それがどれだけ少数なのかがわかる。
ルシェモモは熱帯地域だから、雨季にものすごい雨が長期間降る。
まだ経験してないけれど、建物の床がどこも一段以上高い位置に作ってあったり、水が流れやすいように建物の形が半球状になってるのを考えると、かなりの豪雨なんだろう。
水害とか多そう。
なのに、木製のドア?水が入らないのかな?
…入るに決まってるよね。でも、それしかつけられないんだ。
あのバックドア式の入口はお金がかかりそうだし。
これがジジさんが見てくるように言ってたこと?
…そういえば、体色は淡い色のひとが多い。
今までは体色の淡いひとがいても、その上に黒や濃い色の模様が見えていたりした。
でも、今杯を掲げてくれてるひと達の腕にも顔にも模様は見えない。
もちろん見える所に他の色があるとは限らないのだけど、それでも見かけるひとが皆淡い体色ばかりで模様が見えないなんていうのは今までなかった。
白に差別があるなら、淡い体色にだってあるだろうな。
魔素が少ないからって技術には関係ないって聞いてるけど、それだって雇ってもらえてきちんと修行出来たらって話だし、実際はそう上手くいかないんだろう。
だからたぶん、ここは街の中でも低所得層の集まる地域なんだと思う。
今まで見てきた場所とは相対するところだ。
建物も半球の直径が小さいものばかりで、その大きさで2階を設けているから湯呑型の建物が多くみられる。
他の場所だと、半球の直径の大きい建物が目についたのに。
でも、活気は他の場所にも負けないくらいある。
前にクルビスさんと通った市場も、活気があってお店がたくさん並んでいた。
今だって、みんな陽気に騒いで、私たちの姿を見ると口ぐちに「おめでとうございます!」と言って杯を掲げてくれる。
下町って感じの気取らない空気が妙に懐かしい気分にさせてくれる。
実家もどちらかというと下町な感じの庶民的な場所だった。
だからかな。落ち着く空気だ。
私ここ好きだなあ。
住むならこういうとこの方がいいんだけど。
でも、クルビスさんの立場上、さすがにここは無理かなあ。
私とクルビスさんじゃあ魔素が強すぎるから、ご近所に迷惑かけそうだし。




