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「ん?この香りは…。」
クルビスさんが何かに気づいたように周りを見回す。
香り?あ、花の香りに混じっていい匂いがする。
「キマイラさんっ。キルビルさんっ。」
香りにつられて見てみると、キルビルさんの奥様のキマイラさんがいた。
長のあつまりも終わったのか、キルビルさんの姿も見える。もう夕方だもんね。
「おめでとうございます。素晴らしい装いだ。」
「まったく。ご用意した花がよくお似合いだ。」
おふたりともニコニコとしているけど、周りがあたふたとしてる。
たぶん、本当ならここにはいないはずだったんだろう。
古い形式を大事にする青の一族なら、長は簡単に人前には出ないはずだ。
お金も権力もあるから狙われることも多いみたいだし。
「ありがとうございます。その、護衛は…。」
クルビスさんも気になったらしく、こっそりキルビルさんに聞く。
どうみても、護衛っぽいひとがいないんだよね。北の隊長さんとしては気になるだろう。
「ああ。…兄上が送って下さいました。今は少し離れた場所にいらっしゃる。もう少ししたら我々も戻るつもりです。」
声を小さくしてキルビルさんがキィさんがいることを説明してくれる。
キィさんとキルビルさんが一緒にいると周りがいろいろ言うから隠れてるみたいだ。
それでなくても、北の隊長さんのひとりがいるっていうだけで騒ぎになるだろうし。
「そうですか。では、我々もこれで。」
「ええ。まだ回られるのでしょう?お気をつけて。」
クルビスさんは納得して、礼を取るとそうそうに離れようとする。
私もならって礼をして、さっさとその場を離れることにした。
あまり注目を浴びるのはキルビルさん達にとって良くないだろう。
護衛をしてるキィさんの負担にもなりそうだし。
私たちが離れると、他の青の一族の方々も礼を取って見送ってくれる。
長の手前、目立ってお祝いを言ったりはしないけど、皆さん喜んでくれてる魔素が伝わってくる。
それが嬉しくて魔素でお礼を伝えると、驚いたような顔をされた。
魔素が強すぎたかな?別に共鳴もしてないんだけど。
「これは良き祝いを頂きました。ありがとうございます。」
キルビルさんが代表してお礼を言う。
お礼を言うのはこちらの方なんですが。あれ?私、何かやらかした?
内心疑問に首を傾げながらも、笑顔で手を振って先に進む。
待っててくれたクルビスさんがおかしそうに笑っていた。
「何です?」
「ん?いい伴侶をもらったなと思ってな。」
いきなりなんです?何だか、ちょっと前にもこんなことがあったような。
疑問が顔に出てたのか「後でな。」と言われて引き下がった。
帰ったらちゃんと説明してもらおう。




