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 そのままぐるっと一周して港の方に転移しても、クルビスさんは私を抱えたままだった。

 南地区はさらに北と南に分かれ、南側は崖下にある。



 これは大昔に地すべりを起こしたからで、ルシェリードさんの背中に乗った時に見たけど、南地区は途中からいきなり垂直に近い崖になっていた。

 そんな地形でもこっちの世界のひと達には関係ないらしく、崖に長い長いジグザグな階段を作り、下を港にして交易を発展させてきたそうだ。



 転移陣が出来てからはさらに流通が発展し、今や南の港は大陸の他の地域からの特産物を運んでくるだけでなく、海中の魚人や広い海に点在する島々との交易の要となっている。



 道沿いに集まってる種族は北側と南側で大差はなかったけど、南側では道は布で仕切られてはいなかった。

 海がすぐそばにあるから、潮の香りがとても強くなっている。



 ただ、どこでも陽気な音楽が流れていて、私が手を振ると、にこやかに手を振りかえしてくれるのは同じだ。

 あ、踊りだしてるカップルがいる。



 あっちはボールをお手玉みたいに投げているから、大道芸人かな?

 わあ!火をふいた!



 私たちが通りかかると、順番に目を引くパフォーマンスをやってくれた。

 こっちにもパフォーマンスをやるひとっているんだなあ。



 北側の上品な雰囲気と比べると、南側の方が庶民的な気がする。

 こっちの方が活気があるかも。さすが港町。



「面白いだろう?南側では、毎年、一芸大会をやるんだ。きっと、芸で歓迎してくれると思った。」



 クルビスさんが下から声をかけてくれる。

 そっか、私に皆の芸を良く見せるために抱えてくれてたままだったんだ。



 道に布の仕切りがないのも、芸人さんが芸を見せやすいようにするためなのかも。

 さっき火をふいてたひともいたし、布がある方が危険だ。



 南側に来てから歩く速度がゆっくりだったし、クルビスさんには予想がついてたんだろう。

 お刺身のことといい、クルビスさんって南に詳しいなあ。



「はい。とても楽しいです。驚きましたけど。」



「また来よう。普段も道でいろいろな芸が見られるんだ。」



「わあ。いいですね。」



 次も来る約束をして南地区の芸をクルビスさんと堪能した。

 そして、とうとう北地区に戻ることになった。



 北では私はどう受け止められてるんだろう。

 外に出た時も髪は隠してたし、後は守備隊からほとんど出なかったから、街のひとがどうウワサしてたか知らないんだよね。



 お披露目は北地区で行うのが多かったから、私の顔を見知ってるひとも多いだろうけど、北は最大地区だから他の地区の倍はあるし、住んでる数も多い。

 うわあ。緊張でどきどきしてきた。転移の準備、早く終わらないかなあ。



「転移の準備が出来ました。お疲れでしょう。もう少しですからね。」



 緊張してる私を見て、イージスさんがねぎらいの言葉をかけてくれる。

 ちょっと違うんだけど、疲れているのも本当だ。



「ありがとうございます。でも、次は北地区ですから。」



「そうですね。クルビス隊長が運んでくれるでしょうし。お父上に良く似ておられる。」



 ウインクしながら言われ、顔が赤くなるのがわかる。

 ううう。クルビスさん、港からの転移の時も結局降ろしてくれなかったんだよね。



 出迎えてくれたイージス隊長やその他の隊士さんには温かな目で見守られちゃったし。

 というか、フィルドさんもメラさんを抱えたまま降ろさなかったんだ。



 ちらりと見上げると、素知らぬ顔でイージス隊長にお礼を言っていた。

 もしかして、北でも降ろさないつもりかなあ。後で聞いてみよう。



 さあ、北地区だ。

 キィさんはともかく、フェラリーデさんは戻ってるかな?

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