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 花のロープのおかげか、私たちが到着したと知らせがいってから準備が整うのに時間はかからなかった。

 はっきりここから道だってみんなが認識出来てれば、混乱はずいぶん避けられるだろう。



「いらしたぞ!花をまけ!」



「おめでとうございます!」



「おめでとうございます!」



 赤、青、黄色、茶色に紺色、黄緑にピンクと青緑の派手なグラデーションのものまで、あらゆる色が視界を埋め尽くす。

 案内されて外に出た途端、両側から花の雨が降り注いできた。



 中央で、風の道に花びらが乗ったのとは違う。

 こっちのはまさにフラワーシャワーだ。



 まきやすいように小ぶりの花ばかりで、茎や葉は取られている。

 こっちの花には色がたくさんあるのは知ってたけど、緑や茶色の花まであるなんて。



「綺麗…。」



「まさに花尽くしだな。」



 クルビスさんが指した方向には、花籠を持った街のひと達が花のロープに沿って立っていた。

 その向こうに見える半球の建物にも、花のロープがパーティーの時の紙の鎖のように飾り付けてあって、見渡す限り花で埋め尽くされている。



「はあ。さっすが東。建物にまで花飾りかあ。」



「綺麗ですね。」



 前と後ろについてくれてるシードさんとアニスさんも花尽くしの街並みを感心したように眺めていた。

 きっと、他の地区じゃあ、ここまでふんだんに花は使わないんだろう。



 街じゅうに手配したといっても、街の要所要所に飾る花だけだしね。

 それでもかなりの量を頼んだはずなのに、ここはその数倍の花が使われている。



 ただし、小ぶりな花が多いから、手配してもらった花とは種類が違うようだ。

 でも、小さくても大きくても花は花。たくさん集まるととても綺麗だ。



 せっかくの花吹雪だ。

 この中を歩かなくちゃもったいないよね。



「せっかく花をまいて下さってるんですし、早く行きましょう。」



「ああ。そうだな。」



 振ってくる花の量がすごくて前が見づらいけど、しっかり歩かなきゃ。

 裾を払って、足を前に…ととと?あれ?



「ハルカ。」



 え?クルビスさん?

 あ。またかあ。



 自分で急かしておいて、こけちゃったみたいだ。

 今はクルビスさんにお姫様抱っこされている。



「ありがとうございます。」



「いや。これだけの花だ。抱えていくよ。」



 いえ、もう歩け…抱えていたいって魔素で伝わってきた。

 まあ、いいか。周りも私たちを見て盛り上がってるし。



「あの裾、まるで魚人のヒレのようね。」



「ねえ。花も白よ。日除けも白なのに。」



「あら、あれって海の輝石よね。白なんてあったの?」



「黒はわかるけど、どうして他は白だけなのかしら。」



 ん?今の…。

 私たちを見て皆笑ってるけど、私の衣装を見て何か言ってるひと達もいるみたいだ。



 補聴器のおかげで、こっちの魔素の含んだ音声はよく聞こえる。

 クルビスさんの声なんか、耳元でささやかれてるかと思うくらいだ。



 さっき聞こえた会話は、きっと、これが本来の白への反応だろう。

 嫌悪は含んでないようだけど、純粋に何故?という疑問が伝わってくる。



 メラさんが私が白を身につける意味を広めてくれてはいたけど、急なことだったし、伝わりきっていないんだろう。

 数日たてば浸透すると思うけど、その前に、私が幸せそうに笑って今日を乗り切らないとね。

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