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『おっと。』
すさまじい歓声に驚いた私をクルビスさんが支えてくれる。
一応、街中を歩くときは、ドレスを見せるために抱っこは禁止にしてるので、抱き上げられることはない。
そんな支えられる私を見て、周りは乾杯しだすし、とうとう服を脱ぎだすひとも出て来た。
あまりの騒ぎに守備隊の隊士さんが何人か駆けつけるけど、近づくことも出来ないようだ。
『クルビス隊長、もう西に行く時間です。』
『通れなくなっちまったな。』
歓喜した街のひと達が私たちを良く見ようと出てくるから、道がどんどん狭くなって動けなくなってしまう。
付き添ってくれてるアニスさんとシードさんがクルビスさんに指示を仰ぐ。
そうだ。
もうそろそろ西地区に移動しないと。
『そうだな。こうなったら飛び越えてしまうか。』
『だな。言っても聞こえてねえだろうし。ルシン、向こうまで跳べるか?』
『はいっ。大丈夫です。今日は羽を使っていいって言われてますっ。』
飛ぶ?羽?まさか…。
クルビスさんとシードさんの会話に、恐ろしい予感がする。
『それっ。』
『きゃあっ。』
『えいっ。』
ちょっと待ったと言う間もなく、屋根より高く飛び上がる。
クルビスさんはいつの間にか私を抱えていて、シードさん達も一緒に飛んでるのが見える。
どうやら、このカオスな観衆を飛び越える気のようだ。
皆、身体能力高いから、平気でこういうことするんだよね。
下に見える街のひと達も、こちらを見上げながら笑ってるし、特に驚くことではないようだ。
種族の違いというか、身体能力の違いを実感する。
そして、飛び越えた先でも歓迎を受けつつ、何とか決められた詰め所まで移動出来た。
ルシェモモは広いから、ある程度歩いたら近くの詰め所から別の場所に移動することになっている。
全部歩いたら私の身体が持たないのと、今日中に回らなければならないのとで、こういう方法を取ることになった。
それでも、明日は筋肉痛で歩けなくなると思うけれど。
『お疲れさまです。転移陣はご用意できていますよ。』
詰め所の隊士さんがにこやかに転移室まで案内してくれる。
その前にと、メイクをアニスさんに直してもらって、きちんと身支度を整えた。
『さて、行くか。』
『はい。』
さて、中央では熱狂されたけど、西ではどうだろう。
歓迎してくれると嬉しいけど、期待しすぎないようにしよう。




