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仕度してふたりで下に降りると、アニスさん以下仕度を手伝ってくれる隊士さんが待ち構えていた。
皆にこやかに迎えてくれて、腹持ちのいい果物とパンとで簡単に朝食を取ると、さっそくパックにメイクにと始まった。
何度か練習してたから、着せ付けるのも慣れた仕草でサクサクとこなしてくれる。
パックとメイクの方が時間がかかったかもしれない。
「さあ、後はこの花冠を被るだけです。」
裾の長い黒のマーメイドドレスに白のベール、そしてその上に真っ白な小ぶりの百合の花冠が乗せられる。
胸元には白の真珠のロングネックレスが2連さがり、手首と耳元にも同じ白の真珠が輝く。
足元はドレスと共布の黒の布のパンプスを履いていて、つま先にはアクセサリーと同じ白の真珠がいくつも縫い付けられている。
白銀の波を表した刺繍も入っていて、最初のデザインより豪華になっている。今の私は白と黒だけを身につけている。
本当は色とりどりのビーズが縫い付けられていたのだけれど、真珠にすっかり魅せられたマルシェさんが「これ程の輝きなら、身を飾るものはすべて海の輝石にするべきです。」と主張して、グレゴリーさんに数粒用意してもらった真珠を一昨日の夜に縫い付けてくれたものだ。
だから、泥棒の入ったと聞いたとき、マルシェさんは徹夜で靴を仕上げてくれた後だった。
フラフラの状態で私の花嫁衣装を届けてくれたと聞いた時は、ありがたいやら申し訳ないやらで泣きそうになってしまった。
そんな私にマルシェさんはきっぱりと首を横に振った。
「お気になさらず。これは私の生涯の最高傑作になるものです。私のもてる技術を全て注ぎ込みました。その価値を知らない連中に存分に見せつけてきて下さいな。」
お、男前。
何だろう。こっちのエルフの女性ってかっこいいひとが多いよね。
メラさんやリリィさんは言うまでもなく、見た目は清らかな女神のごとき美貌を持つアニスさんも、守ってあげたい系に見えるのに中身は体育会系の天然さんだ。
仕事を持ってるのが当たり前だからかなあ。自分の足できちんと立ってるって感じがまた男前っぷりを上げてるのかもしれない。
それに、技術目的でなくドレスを狙われたマルシェさんとしては、「今までにない技術と形で作られたドレス」を害そうとした犯人たちにかなり怒りを覚えているようだ。
そりゃ、自分が丹精こめて作ったものが壊されようとしたら、腹が立つよね。
今日の式で認められれば、技術が狙われることはあっても、少なくとも「マルシェさんの作品」は害されることはなくなるだろう。
制作者の後押しももらったことだし、存分に見せつけてやりますとも。
さあて、いざ、出陣だ。
どんな非難の視線も受け止めてやるんだから。
式に向けて1で描写したドレスとの変更点を書きました。
最終的に花嫁衣装は白と黒だけになり、真珠や絹のような生地の素材の豪華さが際立つものとなりました。




