41
ルシン君の話で盛り上がっていると、メラさんが部屋に訪ねてきた。
どうやらメルバさんへの報告は終わったらしい。
メラさんはメルバさんからドレスが狙われたことを聞いて、心配して様子を見に来てくれたそうだ。
私が着てるドレスを見ると、デザインの斬新さに驚きつつもドレスが無事なことをとても喜んでくれた。
「すばらしいドレスだな。我が一族の型と似ているが、まったく違う。まるで魚人族の尾びれのようだ。」
マーメイドドレスを見て大絶賛だった。
良かった。今の所、拒否する意見は出てこない。
魚人族がよく引き合いに出されるけど、そんなに似ているのかな。
魚人族は陸地では手足は鱗が着いてるだけの、一見シーリード族と変わらない姿をしていて、水の中ではひれが現れるとてもファンタジーな種族だ。
その神秘的な姿から、彼らを題材にした物語や歌も多いらしい。
メルバさんに教わった所によると、彼らのひれは魔素で形作ったものだから出し入れが自由なんだそうだけど、魔素で作られてるだけにぼんやり光ってとても美しいものなんだとか。
見てみたいなあ。
魚人族にはまだお披露目してないんだよね。
今の時期は潮の流れが悪いらしく、海の底にある魚人族の街とは行き来が出来ないらしい。
そのため、一族が集まれる雨季の後にして欲しいと言われている。
式の様子は映像で向こうの街にも流すそうだから、ドレスは見てもらえるみたいだ。
真珠をアクセサリ―にしたことはまだ知られていないけど、喜んでもらえるだろうか。
「そしてそれは…。もしや、ベールかな?白とは、また伝統的だ。」
メラさんは人形の頭にかかっている白のベールを見て、嬉しそうに笑った。
メラさんは白のベールに戸惑ったりしないようだ。
「メラ様、白のベールをご存知なんですか?」
アニスさんが驚いたようにメラさんに尋ねる。
リリィさんとアニスさんは驚いてたもんね。
白のベールを「伝統的」と言ったメラさんは昔の花嫁衣装を知っているようだ。
「ああ。我が一族の式の衣装は本来すべて白だと聞いている。私の祖父は式服はすべて白だったらしいぞ?古い話だから、知ってるのは長老たちくらいだがな。」
メラさんのおじいさんって言うと、この場合はイシュリナさんのお父さんのことだな。
最初の頃は残ってた白の生地で衣装を仕立ててたらしいから、お祖父さんは白の式服でカメレオンの一族のお祖母さんと式を挙げたんだろう。
「だが、この刺繍は…。これを施したのは?リリィか?」
「いいえ。長です。ハルカ様が倒れないようにと術式を自ら縫いこまれました。」
「なんとまあ、これほどの術式をこんなに小さく細かく…。長の多才さには驚くばかりだ。」
呆れたような、誇らしげな顔でメラさんは笑いながらベルをしげしげと眺めている。
あの刺繍って、すごいものみたい。
リリィさんたちも驚いてたけど、メラさんもかあ。
そんなすごいものを頭にかぶるのかあ、ちょっと怖くなってきたなあ。




